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ソフトバンクとヤフーの総力で誕生

100億円キャンペーンの先に「PayPay」が目指すもの

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昨年12月に行われた、『PayPay』による「100億円あげちゃうキャンペーン」。モバイル決済アプリPayPayでの支払いについて、月5万円を上限に支払い額の20%相当額を利用者に還元するというもの。12月4日にスタートし、「総額100億円を還元するまで行う」と発表した。

キャンペーンは大きな話題となり、開始からわずか10日で100億円に到達。熱狂ぶりの中で何度かサーバーがダウンし、セキュリティ面での問題点が見つかるという騒動も起きた。いずれにせよ、PayPayの存在は、多くの人が瞬く間に知るものとなっただろう。

このアプリは、ソフトバンクとヤフーの共同出資会社が開発した。100億円という大規模キャンペーンの狙いはどこにあったのか。また、LINE Payや楽天ペイなど、大手によるモバイル決済競争が激化する中、どんな展望を描いているのか。PayPay社の伊東史博氏と岩永公就氏に聞いた。

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当事者にとっても、キャンペーンは「想定以上の反応」

「100億円キャンペーンの反応は、想像以上のものがありました。多くの方にPayPayを知っていただけた反面、クレジットカードの不正利用によるPayPayの利用や、一時的にサービスがつながりにくくなることもありました。クレジットカードにつきましては、セキュリティ対策を施させていただきました。ご迷惑をおかけし、本当に申し訳なく思っています」(伊東氏)

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伊東氏は、「今後このようなことのないよう改善を行っています」と話す。クレジットカードのセキュリティ面では、1月21日より本人認証サービス(3Dセキュア)を導入。強度を高めているようだ。

また今年に入り、キャッシュバックなどの付与を取り消されるアカウントが続出する問題も出ていた。これについては、「PayPayでの支払いをキャンセルして返金を受けた場合」など、「当初からキャンペーンや特典の注意事項として記載していたもの」の可能性が高いとのこと。あるいは、家族名義のクレジットカードを支払い手段で利用するなど、クレジットカード自体の利用規約に抵触する疑いのあるものだという。

取消に関して不明点がある場合や、正当な利用にもかかわらず取り消されているというユーザーについては、サイトの質問フォームから連絡すると「詳細に調査いたします」(伊東氏)とのことだ。

上述の騒動はあったものの、キャンペーンにより確かな認知と利用者の獲得を実現したのは事実だろう。岩永氏は、その狙いについて「完全なる先行投資です」と話す。

「とにかく、PayPayをご利用いただく方を増やさなければいけません。それにより加盟店も増え、結果、さらに利用者が増えるというサイクルが生まれます。お支払い1回につき、1000円相当まで最大20%が戻ってくる『第2弾100億円キャンペーン』も行っていますし、新規登録者への500円相当プレゼントや、PayPayでのお支払いによる0.5%還元を“標準サービス”として実施しています。こうした施策でお客さまを増やし、日常的に使っていただける努力をしていきたいのです」(岩永氏)

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キャッシュレス先進国インドの最新技術を活用

そもそもPayPayは、ユーザーも店舗も「手軽に使えること」が最大の特徴。決済方法は大きく2つあり、お店に掲示されたQRコードをスマホで読み取って会計金額を入力するか、アプリに表示されるバーコードを店側が読み取る。すると、ユーザーのPayPay残高かYahoo!マネー、あるいはアプリに登録したクレジットカードからお金が支払われる。

そして店舗については、導入時の負担が限りなく少ない。

「お客さまがお店のQRコードを読み取る場合、お店はQRコードを掲示するだけなので、新たな端末やシステムは必要ありません。初期導入費と入会手数料はゼロであり、決済手数料も2021年9月末までは無料としています」(伊東氏)

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このハードルの低さは、「大型店から小さな店舗、老舗店まで、日本全国の店舗に使っていただきたいからこそ」と岩永氏。すでに、全国で20のPayPay営業拠点があり、「日本の隅々まで、PayPay加盟店を広げたい」と意気込む。

さらに、PayPayは中国の決済アプリ「Alipay」も併用でき、こちらも店舗の決済手数料は2019年9月末まで無料。外国人観光客の多い浅草の仲見世では、導入がかなり進んでいるようだ。

なお、PayPayの基盤には、インドのPaytm社の技術が使われている。インドはキャッシュレス決済の先進国であり、同社は3億人のアプリ登録者を抱えている。

「インドは屋台も多いため、PaytmのQRコード決済が非常に進化・普及しています。読取技術ひとつをとっても、風の強い中や遠くからでも捉えられるなど、技術力に長けていますね。それらの英知を活用できたからこそ、スピーディなサービスローンチができました」(伊東氏)

Paytmは、ソフトバンクグループの投資会社「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の出資先でもある。もともとヤフー自体が持つYahoo!ウォレットの技術と、Paytmの技術が合わさってPayPayは生まれたと言える。

「加えて、ソフトバンクが持つ営業力も生きていると思います。100億円キャンペーンも、全国に一気に拠点を開設したことも、ソフトバンクの営業文化の賜物。ソフトバンクとヤフーの総合力がうまく機能して、PayPayができていると感じます」(岩永氏)

伊東氏は、今後の展望として「私たちが勝たなければいけないのは、競合サービスではなく“現金”」だと話す。日本でのキャッシュレス決済比率は、わずか2割弱(※)。「確かに決済アプリは乱立していますが、ある意味で同志のように高め合って、まずはキャッシュレス化を喚起していきたい」という。
※経済産業省H30「キャッシュレスの現状と今後の取組」より

だからこそ、お店も消費者も、誰もが気軽に使える決済アプリが必要。ソフトバンクとヤフーの総力で生まれたPayPayは、その意味で高いポテンシャルを持っている。

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(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2019年2月現在の情報です

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