日本の年金制度、節税制度の次のカタチ。使い方

提供元:楽天証券(トウシル)

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※この記事は2018年12月25日にトウシルサイトで公開されたものです。

平成31年税制改正大綱が示されたが、NISA等の規制緩和には至らず

例年、12月15日前後に与党の税制改正大綱が示されますが、2018年は14日(15日が土曜日だった)に示され、自民党のホームページに情報開示されています。(※参考1)

残念ながらNISA(少額投資非課税制度)の恒久化や、iDeCo(個人型確定拠出年金)の限度額拡充は明記されませんでした。投資関連では、成年年齢が18歳になるため、1月1日時点で18歳ならNISA口座が開設できる(今までは20歳)という改正が大きなポイントのひとつでしょう。

しかし、「老後の生活などに備える資産形成を支援する公平な制度のあり方」として基本的な考え方を示しているページがあり、今後の年金改革の動向を踏まえつつ公的年金等控除の見直しも検討されるページもあります。

今回は「2019年あるいは2020年代」をにらんで、年金や投資の制度がどう変わるか、ちょっとした未来予測をしてみたいと思います。

2019年以降「公的年金」はどう動くか?受給開始年齢の一律引き上げは行わない方向か

2019年は、年金制度改正の議論が進む可能性があります。なぜかと言うと2019年の春から夏にかけて、「財政検証結果」が公表されるからです。2014年に公開されてから5年に一度の情報開示ですが、これを踏まえていくつかの制度改正の可能性が動き出します。

現在、可能性が高まっていると思われるのは、70歳以降に受け取り開始年齢を遅らせるという選択肢の導入です。現状では60歳~70歳までが受け取り開始年齢となっており、65歳時点を100とすると、70(つまりマイナス30%)から142(つまりプラス42%)までの年金額が増減します。

受け取りを開始すると、その年金水準を死ぬまでもらい続けることになり、平均余命を勘案すると遅く受け取ったほうが有利になりますが、心理的にはなかなか難しく感じます。

また、今まで60代前半に一度少額の年金を受け始めている人が、65歳からいきなりゼロ円としにくいことから(こちらも心理的ハードルといえます)、利用率が低かったという背景があります。こちらについては、年金定期便の案内に情報を盛り込むことが予定されています。

年金改正の議論では、一律の受給開始年齢引き上げ(先ほどの数字でいえば65歳の水準100を68歳にずらす)のアプローチではなく、70歳以降の繰り下げ受給を認める(60~75歳までの間で受け取るようにする)方向感です。首相官邸に置かれている未来投資会議の中間整理においても、受給開始年齢引き上げは行わないことが論点整理されています。(※参考2)

今まではどんなに働ける人であっても、70歳以上に繰り下げができなかったわけですが、これを可能にすれば、遅く受け始めるほど142以上の増額になるでしょう。

もちろん、70歳以降まで年金を一切受け取らなかった場合、そこまで働ける必要がありますが、こちらも高齢社会対策の関係で、雇用確保措置の整備が見込まれています。すでに定年を65歳に繰り上げる企業も増えており(現状で16%ほどあり毎年増加傾向)、65歳まで正社員待遇、70歳まで再雇用に切り替わっていく流れにあるといえます。

日本では、生産年齢人口の減少が深刻なので、私たちが想像するより早く、長く働ける環境が整うのではないでしょうか。できれば、公的年金の受け取り開始年齢を働くことで遅らせ、年金の増額を勝ち取りたいところです。(※参考3)

2019年以降「自助努力制度」はどう変わるか?NISA、iDeCoの次の方向は

NISA恒久化は見送り非課税枠など大枠は変わらずということはすでに税制改正大綱のところで触れましたが、iDeCoについては別のアプローチで改正が期待されています。

それはiDeCoについて65歳まで拠出可能になるというものです。これは規制改革推進の観点から、加入者資格年齢の引き上げについて議論が行われているもので、政府の検討課題として掲げられています(内閣府の規制改革実施計画などに盛り込まれている)。計画書では2022年1月までには結論を得るとしています。(参考4)

企業型確定拠出年金についても、60歳以降の掛金拠出をより容易にする議論が含まれています。現状では同じ会社に60歳以降も勤務継続しないと加入継続できないなど、微妙なしばりがあり定年延長企業以外には使いにくいものとなっていますが、70歳まで拠出可能になる検討が行われることになるでしょう。

一方で、税制改正大綱から、各制度が別々の限度額や加入資格を有していることが、制度のわかりにくさにつながっているという指摘があり、「資産形成の非課税枠、大統一」という可能性もあります。

確かにNISAとiDeCoや財形年金などが、それぞれ別の制度として所轄をもち、拠出枠や税制の条件を設定しているのには、わかりにくさがあります。

「個人にとって老後資産形成は年200万円までが所得控除で、好きな口座を使えばいい」というようにしてくれれば、もっと話は楽になるはずです。しかし、NISAとiDeCoをひとつにくくるだけでも大仕事ですから、来年再来年に決着するのは難しいかもしれません。

長期的な老後資産形成制度が存続することは、ほぼ確実。まずは今ある制度の活用を

公的年金改革の方向性と、私的な資産形成制度(特に老後に向けた)について、2019年あるいは2020年以降の改正の方向感をまとめてみました。

個人にとっては、「今ある制度を活用する」という視点がまずは大切ですが、今後の政策的ビジョンを時々考えてみることも有意義です。

国がさまざまな制度を動かすとき、そこには必ず政策的な意図やねらいがあります。そして、課題はひとつひとつ改善の方向性に向かいます。

政策的にいえば、老後資産形成を支援するアプローチは強化されることはあれ、廃止や縮小は考えにくい取り組みといえます。これは日本に限らず、世界的に生じている少子高齢化と公的年金の負担増への解決策として、自助努力をサポートすることが欠かせないからです。

つみたてNISAのような長期にわたる資産形成制度、iDeCoのように老後受け取りを前提とした資産形成度の形は、どのような状況になっても存続するでしょうし、発展が見込まれます。

「もう少し様子をみよう」と考えているうちに、自分の老後は刻一刻と近づいていきます。それよりも、今利用できる制度をなるべく活用して、早めに資産形成をスタートさせておくことをおすすめします。

2019年がどのようなマーケットになるとしても、あなたが1歳年を取り、定年は1年近づき、リタイア生活もまた1年近づいていくことだけは確実なのですから。

 

◎今回の参考サイト

1.自民党サイト 自由民主党・公明党「平成31年税制改正大綱」より

2.首相官邸サイト「未来投資会議」より

3.厚生労働省「平成30年 高年齢者の雇用状況集計結果」より

4.平成 30 年6月15日 閣議決定「規制改革実施計画」より

 

(フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー 山崎 俊輔)

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