「おまけ」だからこそ、新しい世界にチャレンジ
楽天グループが「ポイント×投資」で仕掛けるポイントエンターテイメント
クレジットカードやECサイトなど、各種サービスに紐づく“ポイント”。そのポイントで投資の疑似体験をするなど、ポイントと投資を結びつけるのが最近のトレンドとなっている。そして、日本最大級のポイントサービスを展開する楽天グループでも、この取り組みが始まっている。
それが、「楽天スーパーポイント」を使った「ポイント運用by楽天PointClub(以下、『ポイント運用』)」と「投資信託ポイント投資サービス(以下、『ポイント投資』)」だ。
確かに類似サービスはあるものの、楽天グループは一味違うと言えそう。ポイント運用はあくまで疑似体験だが、ポイント投資は“本物”の投資信託をポイントで購入できるのだ。
2つのサービスはどのようなものなのか。楽天 執行役員の松村有晃氏と、楽天証券 執行役員の清野英介氏に聞いた。
貯まったポイントで、本物の投資信託を買える!
最初に、両サービスの概要に触れていこう。まずポイント運用は、ユーザーの持つポイントを“運用ポイント”に追加すると、投資信託に連動してポイント数が変動するもの。積極的な運用を行える「アクティブコース」と、安定的な「バランスコース」の2種類から選べ、100ポイント単位で運用可能。運用ポイントは1ポイントから引き出せる。文字通り、ポイントによって投資の疑似体験ができるものだ。
「投資の経験がない方にとって、大きなハードルは2つ。『損をするのでは』という心理的ハードルと、証券口座を作るという手続きのハードルです。その点、『ポイント運用」は、ポイントが減ることはあっても実際のお金は損しませんし、何より口座手続きがいりません。1分かからずスタートできることがメリットです」(松村氏)
ここまでは、あくまで投資の“疑似体験”。楽天グループのサービスはそこにとどまらないのが特徴だ。というのも、もうひとつのポイント投資では、貯まったポイントを使って、“本物”の投資信託を買える。1ポイント1円として、100円から投資信託が購入可能。
もちろん売却時は、本当のお金が返ってくる。正真正銘の投資であり、その分、こちらは楽天証券の証券口座が必要になる。
「2019年1月の時点で、楽天証券で投資信託デビューをしたお客さまのうち、ポイント利用者は約8割に達しています(※通常注文)。口座手続きのハードルこそありますが、もらったポイントだからこそ『損をするかも』という心理的ハードルは弱まるでしょう。それがリアルな投資へのデビューを促しています」(清野氏)
2つのサービスはあくまで別個のもので、ローンチもポイント投資が2017年8月、ポイント運用は2018年10月と異なる。とはいえ、楽天スーパーポイントを軸に疑似体験から本物の投資までワンストップで行えることに変わりはない。そして、そのようなサービスを持つのは、ポイント×投資が盛り上がる中でも稀有といえる。
根底にある理念。「ポイントでより楽しい生活を」
楽天グループは、楽天市場(インターネット・ショッピング)や楽天トラベル(旅行サイト)、楽天カード(クレジットカード)、楽天モバイル(携帯電話)など、多方面で事業を行っており、「楽天エコシステム(経済圏)」を形成している。その多くで「楽天スーパーポイント」が活用できるため、きわめてユーザーにとっては貯まりやすく使いやすいポイントとなっている。
それに関連して、ポイント投資は2018年9月から、決められたペースで一定額を積み立てる投資信託の積立サービスにもポイントを利用できるようになった。楽天スーパーポイントが生活と密着しており、毎月どのくらい貯まるか、ある程度予測がつくからこそ積立に活用できるのかもしれない。
なお、この2サービスは、楽天グループが考える「ポイントの価値」にも関係していると松村氏は言う。
「私たちの理想は、ポイントによってより楽しい日々を、よりたくさんの体験をしていただくこと。“おまけ”的にもらったポイントだからこそ、できることがありますよね。普段できない贅沢をするとか、初めてのことにチャレンジするとか。ポイントは、いわば背中を押すトライアルクーポンであり、ポイント運用やポイント投資も、投資という新たなチャレンジへの後押しとも言えます」
加えて、松村氏が見据えるのは「日本発のポイントエンターテイメント」を作ること。物質的な欲求は満たされる中で、生活の重要な楽しさになるのは“おまけ”。ポイントはまさにおまけであり、ポイント普及率が高い日本だからこそ、「日本が世界に発信できる新たなビジネスツールになるのでは」という。
そんなポイントエンターテイメントの視点で上述の投資サービスを見ると、投資にチャレンジできるだけでなく、単純にポイントを増やす・貯めるという“楽しみ”も出てくる。ポイントをより魅力的にする意味でも、2つのサービスが役立っているのだ。
最後に、今後のサービス展開について、松村氏は「ポイント運用については、よりエンタメ性を高めて“運用の楽しさ”を体感してもらいたい」と言う。そして清野氏は、ポイント投資についてこんな展望を話す。
「アメリカなどの投資の歴史を見ても、ある時期から爆発的に投資信託が普及するタイミングがありました。日本もいずれ訪れると思います。大切なのは、その瞬間までにどれだけ多くのお客さまの証券口座ができているか。つまり、口座開設というハードルを越えた状態を作れるか。そのきっかけとしてポイント投資を活用していきます」
疑似体験からリアルの投資まで、楽天グループがワンストップで提供するポイントサービス。それは投資への第一歩を生むだけでなく、楽天が目指すポイントエンターテイメントにおいても大切な要素となっている。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)
※記事の内容は2019年3月現在の情報です