「金の果実シリーズ」マメ知識
~貴金属マーケットに異変?!~【パラジウム編】
提供元:三菱UFJ信託銀行
貴金属マーケットの一つの異変!
皆さん、パラジウムってご存知ですか?
日常生活ではほぼ耳にすることがない言葉ですよね。でも…皆さんが日常使っている”あるもの”には絶対に必要なものなんですよ。それは後の”お楽しみ”。
今、貴金属マーケットでは、このパラジウムが注目されています。パラジウムに一体何が起こっているのか???
実はパラジウムの値段(価格)がもの凄く上がっているのです。どれ位?いや…、数年前には考えられない位、信じられない位に上がっています。
『だったら…、買っておけば良かったなぁ…』しかも!貴金属の値段は、以前は高い順にプラチナ→金→パラジウムというのが定説だったのですが、この順序が全く逆転して高い順にパラジウム→金→プラチナ(2019年3月)となっているのです!
これはもう貴金属マーケットでは大事件です。
パ、パ、パラジウム…?って何?
ところで、ところでパラジウムが”あるもの”に使われているってことですが、”あるもの”って何ですか?
“あるもの”…それは自動車なんです。今の自動車業界は電気自動車やら自動運転が話題になっていますよね。まぁ…近い将来、そういう時代が来るでしょうね。世間では電気自動車・EVといった言葉が話題にならない日がないくらいです。
ただそうは言っても、やはり現在の自動車の主流は”ガソリン車”なんです。私も…まだハイブリッド車に手が届かずガソリン車保有者でありますが…(笑)。
そして今に始まった話ではありませんが、これだけ「環境!環境!」と叫ばれる中、自動車もその例に漏れないわけです。排ガス規制(自動車排出ガス規制)というのがあります。
そうなんです!実は…、パラジウムという金属は自動車の排気ガスを浄化するために使われているんですね。排気ガスに含まれる有害な汚染物質を大気中に放出せず、まとめて除去する触媒の機能があります。
この機能を持っているものは、何もパラジウムに限りません。プラチナ、ロジウム(貴金属の中で値段が一番高価)も同様な機能を持っています。ただし当時(何年も前から…)は、ロジウムなんて超高値の花。プラチナは金よりも高い。この中では、パラジウムが最も安い貴金属だったんです。
ですから自動車の特にガソリン車の排気ガス浄化のために主にパラジウムが使われ現在に至っているのです。
自動車とパラジウムの関係
先ほど話しましたように、これからは電気自動車の時代がきっと来ます。排気ガスが出ない時代です。だったら、パラジウムなんて要らないんじゃないの?と思うかもしれませんが、”今日の明日に!”全ての車が電気自動車に置き換わるというのもこれまた考えられませんよね。
しかもここ数年は米国の好景気を先頭ランナーとして、世界の景気は非常に良かったのです。それも米国はじめとする先進国だけでなくブラジル・ロシアといった新興国までもが良かったわけです。
景気がいいと売れるものは何ですか?人々の生活を裕福にするもの、便利にするもの…。代表的なものは、「自動車」と「住宅」ですね。この二つは景気を見るうえで非常に大事!
確かに昨年2018年は米国の利上げ継続(新興国にとってはドル債務の金利負担が増える)や夏場に「トルコショック」など新興国にとってややもすると危機的な1年ではありましたが、直前の2016年・2017年は原油価格の高騰により新興国の景気も絶好調。車が売れたわけです。
しかもパラジウムは無限にあるわけではありません。むしろその存在は希少性に富んでいます。また金のように金を掘ろうとして金鉱脈から金が採れるようにはいきません。パラジウムは、そもそも採れる量が少ないプラチナなどの”副産物”なのです。だから「増産」ということができないのです。
それで…今後は?
では今後、パラジウムを取り巻く環境はどうなっていくのでしょうか?考えてみましょう!Let’s Think!
よっぽど世界の景気が悪くなって自動車が売れなくなるケース(この場合はパラジウムの需要が減少しますからパラジウムの値段は下がると考えられます)は別として、数少ないものを皆で取り合えば…モノの値段は一般的には上がります。そう、「需要と供給」の関係です。しかもこれがないと自動車を作れない…。
繰り返しになりますが、EV、EVと言っても全ての自動車ユーザーが、ある日をもってEVを手にするわけでもない…。なんて考えますと、今後のパラジウムの動きからは目が離せませんね。
貴金属の中でも主流のゴールド、プラチナとはまた違ったニッチな世界でなかなか面白そうですね。皆さんもこの貴重な物質…パラジウムについて、更には貴金属マーケットについて考えてみられてはいかがでしょうか?
(提供元:三菱UFJ信託銀行)