投信ブロガーが選ぶ最高のファンド「Fund of the Year 2018」の傾向を分析
FOYが教える、初心者の投資信託の選び方
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2007年にスタートして、今回で12回目を数える「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year」。ブログで投資信託の情報を発信している投信ブロガーたちの投票により、人気のファンドをランキングで表彰するイベントだ。「自分たちの手でよりよい投資環境を作っていこう!」をミッションに掲げ、2018年は241名の事情通ブロガーたちがファンドに投票。先日、その表彰式が行われた。
そこで、このイベントの運営委員のひとりである、フィナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子さんに「FOY 2018」のランキングの傾向と、「iDeCo」の対象者拡大や「つみたてNISA」の登場も相まって人気が増している積立投信の魅力について聞いた。
低コストのインデックスファンドが人気の理由とは?
「FOY2018では上位10投信はすべてパッシブファンドとなり、アクティブファンドはひとつもランクインしませんでした。コストに対する関心が高まっており、運用管理費(信託報酬)が低い商品が評価される傾向が強まっています」と竹川さん。背景には、2018年からスタートしたつみたてNISAの存在があるという。
「つみたてNISAの対象商品には、特定の指数に連動するタイプとそうでないタイプがありますが、どちらも運用管理費用(信託報酬)の上限が設定されています。それに合わせて2017年くらいから運用管理費用が低い投資信託が新規に設定されたり、既存の投資信託も運用管理費用を下げたりと、一層の低コスト化が進みました」(竹川さん、以下同)
優れたアクティブ型投信を見つけることは投資の楽しみでもあるが、それよりも低コストのインデックス型投信の人気が高いのは、長期での資産形成を目指すブロガーならではの特徴だと考えられる。
「長期で資産形成をする場合、世界の株式をまとめて持つというのが基本です。そのため、低コストで、たくさんの株式にまとめて投資できる分散効果の高い、インデックス投信を資産形成のコア(土台)に据えようと考える方が多いのだと思います」
また、上位入賞を果たしたファンドをみると、日本を含めた全世界株式や先進国株式など外国株への関心が高いことがうかがえる。しかし、その中でもコスト以外の部分が評価されているファンドも見受けられる。
「6位の『セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド』(セゾン投信)は、過去12回行われたアワードで、10回トップテンに入っています。投票理由をみると、毎年、全国各地で運用報告会を行うなど、運用会社の情報開示や顧客サポートの姿勢が評価されています。15位の『結い2101』(鎌倉投信)は受益者総会や投資先企業への訪問ツアーを行うなど、投資哲学・運用スタイルが明確といった意見もありました」
長期にわたる積み立て投資を考えている人にとっては、長い付き合いとなる運用会社の姿勢がファンド選択の指標になっているようだ。
余裕資金がない人でも毎月の積み立てで長期の資産形成を
とはいえ、インデックスファンドだけもかなりの商品数がある。初心者がいきなり商品を選ぼうとしても悩んでしまうものだ。竹川さんは、まずはつみたてNISA対象商品の中から、世界の株をまとめて持てる商品を選んでみては、と提案する。
「投資初心者なら、まずはつみたてNISAの対象商品の中から選ぶと、商品がだいぶ絞られます。例えば、MSCI ACWI IndexやFTSE Global All Cap Indexに連動する投信を選ぶと、1本で日本、先進国、新興国の株式にまとめて投資できるのでるので一番手軽だと思います。
FOY2018では20位以内に、『eMAXIS Slim 全世界株式』(三菱UFJ国際投信)や『楽天・全世界株式インデックス・ファンド』(楽天投信)、『SBI・全世界株式インデックス・ファンド』(SBIアセットマネジメント)などが入っています。
すでに日本株は保有している場合には、先進国株や、先進国+新興国株にまとめて投資できる投信を持つという選択肢もあります」
ちなみに、世界初の個人向けインデックスファンドを作り、世界屈指の資産規模を誇るバンガード社のETFや、ETF・ファンドを組み入れた投信はブロガーの人気も高いが、その理由は徹底的に無駄を省き、省いた分をすべてコスト削減に反映して受益者に還元するかたちをとる姿勢にあるという。
「投資信託は購入して終わりではなく、長い期間お付き合いすることになります。また、長期投資をしていると、相場が低迷することもあります。商品を保有し続ける上では、どの運用会社が運用する、どういう投資信託なのか、をきちんと理解しておくことが大切でしょう」
投資信託を購入する場合、一括で購入する方法もあるが、一定額を定期的に購入していく方法もある。まとまったお金がない人が、日常の暮らしの中に組み込みやすいのが積み立て投資であり、仕組み化して続けやすいことから、早めに始めることをおすすめすると竹川さん。
「積み立て投資は投資信託の価格が低迷しているときも続けやすいですし、基準価額が下がった時にはたくさんの口数を買っていくができます。そして、始める時期も選びません。もっとも、積み立て投資はリターンを高める方法というわけではありません。日常生活に取り入れやすいので、現役世代の会社員の方などには向いています。稼いだお給料の一部を自動的に投資に回す仕組みをつくることで、無理なく投資を継続できるからです」
非課税枠のつみたてNISAであれば年間40万円、iDeCoは年間27万6,000円まで(※)と、それなりにまとまった金額を投資に回すことができる。自動引き落としやクレジットカード決済にすることで、日々の作業負担はほぼ皆無に等しい。しかし、何の商品を選ぶかで投資の結果は大きく変わってくる。後悔しない選択をするためにも、ブロガーたちの意見を参考に、納得できるファンドを選んでもらいたい。
(※)企業年金がない会社員の場合
(末吉陽子/やじろべえ)