やがては金融のインフラに
給料の自由化を進める「ペイミー」
初給料までの“魔の期間”を解決するために
キャッシュレス決済やロボアド投資など、自分のお金を“どう使うか”という部分で、フィンテックサービスが盛り上がっている。一方、“どう使うか”よりも手前、自分のところへお金が“どう入ってくるか”の部分にアプローチするサービスもある。
そのひとつが「Payme」だ。Paymeは、従業員が働いた分の給料を“欲しい時”に受け取れる、給与即日払いサービス。企業が契約すると、その企業の従業員はPaymeのWebサイトやアプリから給料の前払い申請が可能に。最短で、その日のうちに給料が払われる。
Paymeは契約企業の勤怠データと連携しており、従業員がその日までに稼いだ金額の最大70%が支払われる。契約企業は、前払いした給料の数パーセントを手数料としてペイミーに支払うビジネスモデルだ。
このサービスの趣旨として、「働く人に訪れる“魔の20日間”“魔の2ヶ月間”を解決したかった」とペイミーの代表取締役を務める後藤道輝氏は語る。“魔の20日間、2ヶ月間”とは、最初の給料をもらうまでのブランクのこと。新入社員やアルバイトの人が味わう初めての給料までの苦しい時期に、セーフティネットとして機能することを考えたという。
ローンチは2017年の11月だが、実際の使い方もその意図に沿っているようだ。
「導入企業の利用状況を見ると、利用者の5割ほどは働き始めた月に使われています。企業の属性としては、人手不足の成長産業が導入するケースが多いですね。Paymeによって即日払いが可能になることで、導入企業の社員やアルバイトの応募率・定着率も上がる傾向が見てとれます」
飲食店などのアルバイトは、最初の月に辞める人も多い。だがそこで、初出勤の日に数千円もらえるなど、「小さな成功体験」が生まれると定着率につながるという。
「ただし、資産のある方や貯金の潤沢な方もPaymeをご利用いただいています。長期休みの前や結婚式のご祝儀など、突発的な出金ニーズの際に、貯金からではなくPaymeで給料から引き出す方も多いですね」
決してお金に困っている人を狙ったビジネスではなく、「お金の動きが滑らかに、スピーディになる中で、給料のあり方ももっと自由であるべきだと思いました」と後藤氏。だからこそ、従来の給料システムだけではない、即日払いという“選択肢”を作っている。
「Paymeを、銀行のような金融インフラにしたい」
さて、ここまでの内容は足元におけるPaymeの話だが、長期的なビジョンはさらに大きい。後藤氏は「Paymeは、短期的には魔の20日間や2ヶ月間を支えるセーフティネットですが、長期的には金融のインフラに、銀行のような存在にしたい」と言う。「今の大手銀行のカラーは、赤と青と緑。ペイミーのカラーである“黄色”はまだ残っていますから」と笑顔を見せるが、決してそれは冗談ではない。
「ロボアドやキャッシュレスの決済など、“お金の使い方”における多様なサービスが出てきました。ただ、どんなサービスもどこかからお金をチャージしなければいけないわけですよね。Paymeは『給料』の部分を担っているわけですから、Paymeからロボアドへ、Paymeから決済へという流れを作れるはず。チャージの窓口、インフラとしての金融機関になり得ると考えています」
たとえばロボアドを始めるとき、通常なら本人確認などの手続きが必要になるが、Paymeはその人が勤める企業と紐づく。「手続きの簡略化を行えるかもしれませんし、信用も担保されています」と、後藤氏は将来を見据える。
「僕が描く理想は、お金による機会損失を防ぐこと。そして、楽しくお金を使える世界の創造です。お金は本来『ありがとう』の対価であり、人間の喜怒哀楽にもとづいた健全な消費活動であってほしいんですね。そうすればもっと楽しくお金を使えるでしょうし。そのためにより多くの人に使ってもらえるサービスにしていきたいですね」
給料のセーフティネットから、やがては金融インフラへ。ペイミーは、広大な未来を描いている。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)
※記事の内容は2019年3月現在の情報です