世界の株式市場をセクターの動きからひもとく

提供元:日興アセットマネジメント

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<ここがポイント!>

■ 世界の株価は「景気後退懸念」を乗り越えて回復
■ 米国、中国、日本、欧州、それぞれの回復理由
■ 2019年は安定を期待

 

世界の株価は「景気後退懸念」を乗り越えて回復

2018年末から世界の主要株価指数は回復基調にある。大ざっぱにいえば、2018年秋以降に台頭した「景気後退懸念」が薄れていることが理由だ。

景気後退とは「マイナス成長」のことだ。これが、いつのまにか市場での話題として「景気減速懸念」に置き換わっている。昨年12月にも主張したように(「経済の減速が不幸せとはいえない」2018年12月4日付)、私たちの予想では、成長率は減速(プラス成長)するが景気後退(マイナス成長)にはならないというものだった。

しかし、市場はいったん後退を織り込んだあと、減速シナリオに戻ってきたわけだ。

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主要株価指数の推移をみると、多くの市場で2018年の安値を年末ごろにつけ、その後に回復している。これは、市場参加者の世界経済見通しが、昨年末にかけてもっとも暗かった(後退を懸念した)ことを反映している。

2018年の株価指数は、日米欧がリードして、中国は相対的に弱かった。これは中国の政策である「デレバレッジ(債務圧縮)」の影響が強かったからだ。

デレバレッジは、2018年に中国が政策として強化した一種の不良債権処理といえるが、「成長より質」をスローガンに、稼げない資産への投資削減や圧縮を行ったのだ。デレバレッジ政策自体は体質改善のために正しかったが、思いのほか経済が冷えこんだ上、一時は政府が国営企業を優遇し、民間を排除する(国進民退)方向にあるように市場で受け取られたため、上海市場は低迷していた。

このような中国独自の事情は、中国が預金準備率の引き下げに加え、減税を含む財政拡大などの政策を導入し始めたことで解決に向かいそうだ。

また、米中貿易摩擦は深圳市場にも打撃を与えた。しかし、2018年に、米国の中間選挙を念頭に中国への”攻撃”を強めたトランプ政権は、2019年に入ってからは交渉を重視している。このような環境下、当面は政治的にやさしくなるサイクルに入ったとみている。

米国、中国、日本、欧州、それぞれの回復理由

主要株価指数の時価総額上位5業種(セクター)の騰落率をみると、地域別に回復した理由が明確になる。

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まず中国を見てみよう。上海総合指数の特徴は、金融の占める割合が大きいことだ。資本財や素材、エネルギーといった従来型産業も多い。つまり、中国のデレバレッジ政策の影響をまともに受ける銘柄構成だといえる。2018年の低迷から2019年の回復は、政府のデレバレッジ政策とその見直しを含む財政拡大への方針転換でかなり説明ができそうだ。

日米欧の先進国市場と比べて2月の回復が大きかった理由は、中国の政策変更が明確になったことにあったといえそうだ。中国の大幅な回復は、2018年の低迷の反動だと言い換えても良い。

一方、深圳総合指数に含まれる企業は、情報技術が多く、資本財や消費財でも新しいテクノロジー商品などを含む企業が多い。こちらは、あまりデレバレッジ政策の影響を受けたとは考えにくく、米中貿易摩擦の影響を受けたとみるべきだ。

深圳の企業が米国から罰金を科せられるなど、利益に直接影響する政策となったため、警戒感が広がった。2018年3月ごろから強まっていた貿易摩擦の株価への影響が、深圳総合指数に直接出たとみている。そうであれば、2019年に入り、トランプ政権の中国に対する攻撃が交渉に転換したことは、深圳総合指数に良い影響をもたらすことになる。

米国のS&P500指数は、指数をけん引するインターネット関連企業などの情報技術と中国深圳総合市場の情報技術とでは、ずいぶん異なる。米国では、2018年前半までインターネット関連(いわゆるGAFA)が市場のけん引役だったが、米国の2018年10月以降の株価下落は、景気後退懸念に加え、インターネット関連企業における社会的責任コストの増大懸念(プライバシー規制対策やデータ流出対応など)が関連している。

また、製造業の比率が高い日本市場は、景気後退懸念の影響を受けやすいが、欧州市場は金融システムへの懸念などが関わっており、地域によってそれぞれの動きをしていることが分かる。

2019年は安定を期待

2018年後半に世界の株式市場は波乱を見せたが、前項でそれぞれに事情があったことを確認してきた。2019年は、景気の減速予想に変化が生じ、中国では政策期待が高まり、米国のインターネット企業はバリュエーション調整の一巡に伴い回復するとみている。今年は、総じてリスク資産の安定が期待できそうだ。

 

(日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 神山直樹)

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