丸投げで本当にいいの?
初心者が知っておくべきロボアド有効活用法
AIなどが投資にまつわる助言をしてくれるロボアドバイザー、通称“ロボアド”。年齢や性別といった基本情報をはじめ、投資リスクの考え方などについての質問に回答することで、その人に合った資産配分や投資信託商品などを提案してくれるサービスだ。
「知識がない」「時間がない」「手間を掛けたくない」といった理由で、投資に及び腰の人も多そうだが、ロボアドはそうしたハードルを取っ払ってくれるツールとも言える。サービスによっては、低コストで商品の購入から運用まで、まるっと任せられるため手軽さが注目されている。
テクノロジーの革新によって誕生したロボアドのメリットを、投資初心者が享受するにはどうすれば……? そこで、本家アメリカのロボアド事情に詳しく、サービス開発にも携わる野村総合研究所の東山真隆さんに、ロボアドを有効活用するために知っておくべきポイントを学ぶ。
ロボアドは「投資リスク許容度」を知るためのツールとしても有効
まず、ロボアドの魅力のひとつに「リスク許容度診断」がある。実際のところ、投資が成功する保証はない。損することへの不安感から投資に躊躇してしまう人も多いだろう。そこで大事なのは、自分がどれくらいリスクを取れるかを知ること。
ここでいうリスクとは「値動きの幅」のことで、金融商品ごとにリスクの高低がある。このリスクをどこまで許容できるのかによって投資を決断するべきだが、その決断を後押ししてくれるのがロボアドなのだ。
「初めて投資をする人にとって、自分がどれだけリスクを取れるか、目標に向けてどのくらいのリスクを取る必要があるかを判断するのは難しいものです。しかし、ロボアドはいくつかの質問からリスク許容度の診断を行い、それを通じて自分にはローリスク・ローリターンの運用が向いているのか、それともハイリスク・ハイリターンでも大丈夫なのかを知ることができます。また、その診断を踏まえて、株式や債券の購入割合など最適な資産の組み合わせを提案してくれるので、投資をする際の1つの目安になるのではないでしょうか」(東山さん、以下同)
ほとんどのロボアドが5~15問程度の質問からリスク許容度を導き出してくれる。シンプルだが投資の方向性を無料で示唆してくれるツールとして、ロボアドは有効だと東山さん。
運用方針を決めると次のステップとして、銘柄選びがある。ここからはロボアドの種類が2タイプに分かれるという。
「リスク許容度の判定後に最適な資産の組み合わせを提案され、その後は自身で銘柄を購入するタイプのロボアドは『アドバイス型』と言われています。かたや、最適な資産の組み合わせをもとに自動で運用してくれる『投資一任型』もあります。サービス内容が異なるため、手数料体系も異なります。アドバイス型の場合は購入する銘柄毎に手数料がかかりますが、投資一任型は全自動でお任せするため、運用する資産に対して年間1%ほどの手数料のものが多いです。また、今のところ投資一任型ではNISAやiDeCoなど非課税制度を利用できないので注意が必要です」
アドバイス型のサービスとしては「野村のゴールベース」「投資工房」「マネックスアドバイザー」など、証券会社や銀行の各社で提供が進められており、投資一任型では「Wealth Navi」「THEO」などが有名だ。また、最近は投資の提案だけではなく、ライフプランニング込みで資産形成の方針を示してくれるサービスも出てきたそう。
ロボアドを有効活用するために押さえておきたいこと
どのサービスを選ぶにしても、ロボアドに投資を丸投げするのではなく、納得できるものかどうかを見極めることが欠かせないという。
「大切なのはロボアドの提案している内容が、ちゃんと腑に落ちたかどうか。おすすめされたポートフォリオに納得感があるか、将来の資産推移シミュレーションが分かりやすいかが肝心です。また、リスク許容度診断の結果はとてもシンプルに表示されますが、もし疑問に感じたら電話などで相談できるかも選ぶうえでのポイントにされてみてはいかがでしょうか」
とくに長期投資を考えている人にとっては、ロボアドとの付き合いも長くなるもの。少しでも不安になったり、気になることがあったりしたら、十分なサポートが受けられるかどうかの観点も有効活用するうえで大切になりそうだ。
ちなみに、ロボアドの開発で先を行く米国においては、小口投資家や人口の多いミレニアル世代を顧客ターゲットとして、操作性の良さや手数料の低さといった付加価値で差別化しているという。
「米国では、ハイブリッド型のロボアドとして、テレビ電話を通じてコールセンターにいる営業担当がファイナンシャル・プランニングなどのアドバイスを行う新しいサービスの提供も始まっています。というのも、ロボアドの提案内容が十分に理解できないケースや、運用を始めた後に少し相談したいケースもあるためです。ハイブリッド型のロボアドは、そうしたケースを想定してテレビ電話で相談できるというものです。特に、ロボアドは運用後のサポートが弱点でしたので、そこを補うことにつながるサービスだと思います」
今後は国内でも利便性の高まりが期待できそうなロボアド。長期投資による資産形成を考えているものの、「知識がない」「時間がない」「手間を掛けたくない」といった理由でまだ始めていない人や、はたまた投資を始めてみたけれど自身のリスク許容度を踏まえて運用方法を見直してみたいという人は、活用を検討してみてはいかがだろう。
(末吉陽子/やじろべえ)