米国訪問:健全な経済状態を確認

提供元:日興アセットマネジメント

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<ここがポイント!>

■ 国際機関のエコノミストも、減速でもプラス成長との見方
■ 中国、日本、インドについても、総じて安定か
■ 年前半はセンチメントの改善が続くだろう

 

国際機関のエコノミストも、減速でもプラス成長との見方

3月25日~29日に、米国ニューヨークとワシントンを視察する機会を得た。これまでの筆者の考えとそれほど大きな違いを感じることはなく、国際機関のエコノミストの認識も、市場のセンチメント(投資家心理)の悪さは不可解で、米国や中国を中心に実体経済は強いだろうとのことだった。

以下の内容は、国際機関の経済予測担当のエコノミストや民間の地政学分析者などとの会話を基にしているが、筆者の総合的な感想としてお伝えする。

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ニューヨークの街中で感じた景気の体感温度は高かった。なぜなら、米国内の観光客が多いからだ。雇用の回復や賃金上昇の勢いの強さなどが萎縮していた消費を拡大させてきたが、その勢いは(少なくともタイムズスクエアでは)今も続いているように感じた。

市場では、2018年の米国経済について、政府機関の一時閉鎖で経済指標の発表が遅れたこともあり、実態が不透明と認識されたことに加え、2019年第1四半期(1~3月)の企業活動にも弱さがみられていた。しかし、財政拡大政策や金融政策の緩和的スタンス、雇用増大、消費拡大などから、経済はそれほど大幅な景気減速(スローダウン、成長率はプラスだが速度は鈍化)や景気後退(リセッション、成長率がマイナス)に陥ることはない、とみて良いだろう。

2019年については、法人減税効果が剥げ落ちるなどして、成長率が押し下げられることは致し方ないとしても、経済指標のどれをとっても景気後退を心配するほどの内容になるとは考えにくい。減速の程度がどのくらいになるのか、ということが問題になるだけだろう。

FRB(米連邦準備制度理事会)の金利の引き上げ過ぎが、リセッションをもたらす可能性も低い。インフレ率が低めに抑えられ、銀行の融資態度の緩みや財政政策が打ち出されたからといっても、金融市場にバブルが起きているようには見えないからだ。米国株式市場では、若干、インターネット関連のバリュエーションの高さがみられるが、経済全体からみてFRBが利上げを急ぐ理由になるとは考えにくい。

総じて、米国中心に世界経済の成長トレンドは強いと考えて良さそうだ。景気のスローダウンは一時的になるだろう。

中国、日本、インドについても、総じて安定か

中国については、製造業PMI(購買担当者景気指数)の一時的な落ち込みは理解しがたかったが、その後は回復の兆しがみられる。今後は、中国政府による財政拡大などの政策で緩やかな回復に向かうとみている。

2018年の中国の国内需要の低下は、民間企業などを含む企業へのデレバレッジ(債務圧縮)と、地方政府の資金調達の難しさからくるインフラ投資の減退だった。10~12月に資金不足が目立ったが、今後は人民銀行による預金準備率の引き下げや政府の中小企業対策などの効果も表れ、PMIも回復に向かうだろう。税制改革(減税)などの効果発現には時間がかかるため、2019年後半に回復が確かなものとなるだろう。

日本については、自然災害などの影響から脱する過程での短期的な成長率の減速は小さいと期待している。需給ギャップは貿易拡大で改善し、消費増税の影響も各種政策でかなりカバーされると期待できる。もちろん、教育費無償化のお金が実際の消費に回るかは不透明だが、長期的にはGDP比で海外資産をもっとも多く持つ国として、安定に期待したい。

インドについては、短期的にはモディ政権が今年の選挙を乗り越えて継続するとみている。また、会社更生などのルールを決めた破産法で銀行の不良債権処理が進み、改めて設備投資やインフラ投資に資金を振り向けやすくなっており、この政策効果が今後表れるとみている。長期的には、成長率の変化が大きいことに注目すべきだろう。破産法や消費税に似たGST(Goods and Services Tax、物品税)の導入で、政策運営が改善され始めていることも注目だ。ただし、いまだにGDP(国内総生産)に占める農業の比率が高いため、中所得国になるまでには時間がかかるとみている。

年前半はセンチメントの改善が続くだろう

2018年10~12月に世界株式市場は大きく下落したが、2019年2月以降、多くの主要市場で回復がみられた。これは、当時一部で強く主張された「景気後退リスク」の影響による弱気なセンチメントが反転し始め、今年2月ごろから報道などでも「景気減速の織り込み」という表現に変わってきたことで説明できそうだ。

つまり、2016年前半のように、経済のマイナス成長などをいったん恐れた市場参加者が心配しすぎたことを反省し、リスク資産を持つことへの迷いを減らしているからだ。このような時期には、出遅れた資産を探して投資する方法が良いだろう。

年前半は、主要市場で2018年の高値水準(9月ごろ)に戻るなどの改善が続くことで、センチメントは予想外に早く回復しそうだ。すでに中国を含む多くが株式市場で昨年の高値水準に戻っている。それでも、景気減速の程度がどのくらいなのか市場に迷いが残っているようなので、センチメントの改善が続き、出遅れた資産を物色する傾向も続くとみている。

年後半は、さらに成長率の程度に注目が移っていくだろう。インドの成長率加速や中国の政策効果の実現など、新興国の成長に注目している。

先進国においては、年後半に2020年の景気後退リスクが再燃する懸念はあるが、現実には設備投資の過熱感などがみられない限り、あるいは中央銀行が懸念するような資産市場のバブルが観察されない限り、景気後退を予想する必要はないとみている。

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(日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 神山直樹)

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