運用益が非課税になるだけでなく、控除も受けられる!?
20代で「つみたてNISA」「iDeCo」を始めるメリットとは?
老後の生活を見越し、早くから備え始めようと考える人は多いだろう。そこで役立つのが、少額をコツコツ積み立てながら投資できる上に、運用益が非課税になる「つみたてNISA」や「iDeCo(個人型確定拠出型年金)」といった制度。
ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんに、20代で始めるからこそのメリットを教えてもらった。
運用期間が異なる2つの制度
「つみたてNISA」と「iDeCo」は、ともに運用益が非課税になる制度。日本では、投資で得られた利益に対して、通常20.315%の税金がかかるため、それがかからないのは大きなメリットということがわかるだろう。では、それぞれの違いはどこにあるのだろうか?
「つみたてNISA」は、投資開始した年から最長20年間、非課税で運用でき、年間投資上限額は40万円。積み立てている資産は、いつでも引き出せるところが特徴だ。
一方の「iDeCo」は、現在から60歳までの間、非課税で運用するもので、年間投資上限額は職業によって異なり、公務員は月額1万2000円まで、会社員は月額2万3000円まで(条件により異なる)、自営業者は6万8000円まで。現状では、一度運用を始めると、60歳まで引き出すことはできない。
「iDeCo」の特徴はもう一つあり、年間の掛金全額が所得控除される。年末調整や確定申告を行うと、所得税や住民税の一部が安くなったり、戻ってきたりするのだ。
「『つみたてNISA』は最長20年間という長期投資を前提とした制度ですし、『iDeCo』も25歳から始めれば35年間運用できます。堅実にコツコツと資産を増やしていきたい人にはぜひ利用して欲しい制度です」(横山さん・以下同)
「iDeCo」の節税メリットは絶大
「つみたてNISA」と「iDeCo」、どちらを優先的に始めた方がいいだろうか。
「理想は、2つとも並走させることです。会社員の場合、2つの制度合わせて、最大5万6000円程度積み立てていけます。ただし、20代の場合、毎月5万円以上捻出することは難しいかもしれません。そもそも投資が自分の性格に合っているかわからない方であれば、まずは『つみたてNISA』から始めてみましょう」
投資の知識が不十分なうちから高額を積み立てることに、抵抗を感じる人もいるだろう。その点、「つみたてNISA」は数百円、数千円から始めることができる。また、いつでも投資を打ち切り、資産を引き出せるため、気持ちに余裕を持って取り組める。
「『iDeCo』は60歳まで引き出せないことをデメリットに感じて、始めない方が多いです。しかし、節税効果が大きく、長く続けるほどに手元に残るお金が増えていくので、簡単に引き出せないことをメリットと捉えて、活用を前向きに検討してほしいですね」
例えば、現在20歳で年収400万円の会社員が、「iDeCo」で月々2万3000円積み立てたとすると、所得税・住民税合わせて年間4万1400円が控除されることになる。同じ条件のまま、60歳まで積み立て続けたとすると、40年間で165万6000円控除される。
年に一度、万単位の節税メリットがあると考えると、60歳まで引き出せないことは、そこまで大きなデメリットではないと感じられるのではないだろうか。
「『iDeCo』=先取り貯金として、もともと家計に含まれないものと考えれば、続けやすいと思います。最小5000円で積み立てができるので、もし資金を捻出することが難しくなっても、大打撃にはならないでしょう」
「収入を増やす」という視点も忘れずに
便利な制度を活用して投資を行い、資産を増やすことも大切だが、その前に考えるべき対策もあるようだ。
「20代、30代のうちは、キャリアアップして収入を増やすという視点も忘れてはいけません。そのために自己投資することも大事。入りを増やすことができたら、投資に回せる金額も増え、その分資産を大きく増やすことができますね」
「(1)収入を増やす」「(2)支出を減らす」「(3)運用で増やす」の順番で計画を立て、実行していくことが大切とのこと。投資を考え始める前に、まずは仕事に一生懸命向き合うことが大事というわけだ。
「まずは収入という土台を作って、支出をコントロールし、余剰資金を生み出していくことが大事。長寿化は今後さらに進むことが予想できるので、準備ができたら1日でも早く老後資金のための運用を始めましょう」
若いからこそ余裕を持って取り組み始められる投資。将来のことを考えて、収入と支出を見直し、少額からでも投資を始めてみよう。
(有竹亮介/verb)
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横山光昭
家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー、マイエフピー代表。個別の相談・指導では独自の貯金プログラムを生かし、リバウンドのない再生と飛躍を実現。子どもへの金銭教育や家族にやさしい家計管理を大切にしている。著書に『年収200万円からの貯金生活宣言』など多数。