「EU産ワイン」「ぶどう」は値下げの期待大!?
「TPP」「日欧EPA」で安くなる食品は?
2018年12月30日に「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)」、2019年2月1日に「日欧EPA(経済連携協定)」が発効した。
これによって、所属している国家間の関税の撤廃や引き下げ、知的財産権の保護などが進められるというが、僕らにはどんなメリットがあるのだろうか? ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんに、「TPP」「日欧EPA」が市民に与える影響を教えてもらった。
経済成長を目指すための「TPP」「EPA」
そもそも「TPP」や「日欧EPA」とは、どのような取り決めなのだろうか。
「『TPP』も『日欧EPA』も自由貿易に関する取り決めです。『EPA』は、二国間で関税の撤廃や知的財産の保護、投資ルールの整備など、経済上の連携強化を目的に結ばれるもので、『日欧EPA』は、日本とEUの間で結ばれた協定です。そして、『TPP』は、二国間ではなく、太平洋を囲む11カ国の間で結ばれた『EPA』のことです」(三原さん・以下同)
「TPP」に参加している国は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの11カ国。
「TPP」及び「EPA」を結ぶメリットは、どのようなことが考えられるのだろうか。
「日本は少子高齢化によって経済が縮小していくおそれがありますが、世界の中で生きていくには経済を成長させなければいけません。『TPP』『EPA』を結び、仲間と一緒に経済成長を目指せば、チャンスが見出せるのです。TPP加盟国は世界の総GDPの約13%、EUは世界のGDP(国内総生産)の約30%を占める巨大な経済圏なので、仲間に入れてもらうメリットは大きいのです」
関税撤廃品目は「ワイン」「チーズ」「果物」
国家レベルでは想像がつきにくいかもしれないが、家庭レベルでも「TPP」「日欧EPA」はメリットがあるという。
「外国産の農産物が入ってくることで、国内の農家が打撃を受けるという報道はよく耳にすると思いますが、家庭にとってデメリットはほとんどないと思います。関税が撤廃されれば、輸入品の価格が多少なりとも下がることは予想できます」
関税は数十%かかっているだけに、値下げの幅も大きそうだが、一気に下がるわけでもないようだ。
「日本政府は、米・麦・乳製品といった“聖域”といわれる農産物を守り、国内の農家が衰退することを避けるため、段階的に少しずつ関税を引き下げていく方針で進めています」
つまり、価格は短期的には下がらないかもしれない。とはいえ、関税が引き下げられることは間違いないわけだ。では、具体的にどの品目の関税が撤廃・引き下げられるのか見てみよう。
●ワイン
TPP:現行15%または125円/Lの低い方、段階的に引き下げ8年目以降に撤廃
日欧EPA:現行15%または125円/Lの低い方、即時撤廃
●チーズ
クリームチーズ(乳脂肪45%以上)
TPP:現行29.8%、即時現行から10%引き下げ
日欧EPA:現行29.8%、1年目27.9%、段階的に引き下げ16年目に撤廃
モッツァレラ等
TPP:現行29.8%、現状維持
日欧EPA:現行29.8%、1年目27.9%、段階的に引き下げ16年目に撤廃
ブルーチーズ
TPP:現行29.8%、段階的に引き下げ11年目までに現行の半分
日欧EPA:現行29.8%、1年目27.9%、段階的に引き下げ16年目に撤廃
熟成チーズのうちソフトチーズ(カマンベール等)
TPP:現行29.8%、現状維持
日欧EPA:現行29.8%、1年目27.9%、段階的に引き下げ16年目に撤廃
シュレッドチーズ
TPP:現行22.4%、段階的に引き下げ16年目に撤廃
日欧EPA:現行22.4%、1年目21%、段階的に引き下げ16年目に撤廃
プロセスチーズ
TPP:現行40%、現状維持
日欧EPA:現行40%、1年目37.5%、段階的に引き下げ16年目に撤廃
ハードチーズ(チェダー・ゴーダ・クリームなど)
TPP・日欧EPA:現行29.8%、段階的に引き下げ16年目に撤廃
●牛肉
牛肉
TPP・日欧EPA:現行38.5%、1年目27.5%、段階的に引き下げ16年目に9%
牛タン
TPP・日欧EPA:現行12.8%、1年目6.4%、段階的に引き下げ11年目に撤廃
ハラミなど
TPP・日欧EPA:現行12.8%、1年目6.4%、段階的に引き下げ13年目に撤廃
●スパゲティ
TPP:現行30円/kgから段階的に引き下げ9年目に12円/kg
日欧EPA:現行30円/kg、9年目12円/kg、段階的に引き下げ11年目に撤廃
●果物
オレンジ
TPP:現行6月~11月16%・12月~5月32%、段階的に引き下げ6年目に撤廃(12月~3月のみ1年目25.6%を3年間据え置き、以降段階的に引き下げ8年目撤廃)
日欧EPA:現行6月~11月16%・12月~5月32%、段階的に引き下げ6年目または8年目に撤廃
りんご
TPP・日欧EPA:現行17%、段階的に引き下げ11年目に撤廃
ぶどう
TPP・日欧EPA:現行3月~10月17%・11月~2月7.8%、即時撤廃
●天然はちみつ
TPP・日欧EPA:現行25.5%、段階的に引き下げ8年目に撤廃
「関税が即時撤廃されるEUのワインやぶどうは、値下げが期待できます。特に価格が低いものほど、値下げのインパクトが大きいでしょう。牛肉も安くなると言われていますが、オーストラリアとは『TPP』より前に『日豪EPA』を締結していて、既に関税が引き下げられた状態なんです。ですから、オーストラリア産の牛肉はほとんど変わらないかもしれません」
多くの輸入品の関税は段階的に引き下げられ、値下げは想像より緩やかに進んでいきそうだ。とはいえ、好みの食品が対象になっていれば、いずれ今までより安く買える日が来るのではと期待が膨らむ。
(有竹亮介/verb)
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三原由紀
ファイナンシャルプランナー、合同会社エミタメ代表。バブル期にOLを経験。子育て中で外に出られない時に同じアパートに住むママ友3人で株のネットトレードを始め、夫に内緒のままコッソリ1000万円以上の利益を達成。FP資格を取得して「無知はリスク」を実感し、自らの家計を再生。40代50代に向け、プレ定年夫婦専門FPとして「お金で揉めない夫婦関係の構築」「50代からでも間に合う家計の立て直し」を提案・実行支援する。保険や金融商品を売らない独立系FPとして活動中。