インフラ中心の景気刺激策を推進か?
世界不安の中でインドネシアのジョコ第2期政権が始動
提供元:アイザワ証券
2019年は年初から世界的に中国の景気回復期待や米中貿易問題の落ち着きなどが、景気、株式の支援材料だったが、5月以降は状況が一転した。
一時は落ち着きを見せ始めていた米国と中国の関税問題が再燃し、世界経済の先行きに対して不透明感が強まっており、実際、世界経済の景気減速、株式市場の不安定化要因となっている。世界的には不透明感の強まっている状況だが、そのなかで、アジア各国やオーストラリアで、今年に入って多くの大統領選挙や総選挙が実施されている。
現在の世界の状況を考えれば、国内の選挙だけがクローズアップされる可能性は小さいものの、今後の各国の政策方針に大きな影響を与える選挙として注目だ。このなかで、直近の大統領選挙を受けて今後の改革期待が出始めているインドネシアの現状および今後の先行きなどについて考えてみたい。
このたびインドネシアで実施されたのは4月17日の大統領選挙だが、結果は現職のジョコ氏が勝利した。前回2014年に実施された大統領選挙の時と同様に、ジョコ氏と争った野党のプラボウォ氏が、「不正選挙で、結果は受け容れられない」と主張しており、5月には、プラボウォ陣営が暴徒化するなど混乱状況が続いているが、時間がたてば落ち着いてくる、と思われる。
なお、インドネシアでは3選が禁止されており、2期目となるジョコ大統領は2024年までで最終任期切れとなる。今後、再選を意識する必要のない第2期ジョコ政権は、第1期の反省を踏まえて、今後の5年間には思い切った政策を打ち出してくる可能性が高いと思われる。
第2期のジョコ政権に期待するとはいえ、現在のインドネシアの経済状況は決して良好とは言えない状況だ。実際、5月6日に発表されたインドネシアの2019年1-3月GDP成長率は、前年同期比+5.07%と、前四半期の同+5.18%から減速した。
大統領在任期間でみると、ジョコ氏の前任者であったユドヨノ大統領の在任期間のGDP成長率が平均6%以上であったことに比べると、ジョコ政権になってからのGDP成長率は5%前後と約1%低い水準にとどまっている。GDPをみるかぎり、ジョコ政権になってからのインドネシアは、明らかに景気低迷している状況と言える。2期ジョコ政権では、これまで以上に結果を求められることになりそうだ。
なお、このGDPの低迷には、輸出相手国の景気低迷によって輸出が伸び悩んだこと、選挙前で様子見機運が強まったことなどが考えられる。インドネシアのGDPを項目別にみると、最大の構成要素は消費だが、直近は国内消費の低迷もGDPの減速に大きな影響を与えていると思われる。
直近発表されているインドネシアの自動車販売台数をみると、1-4月累計で前年同期比17.8%減であった。インドネシアでは、大統領選挙がある年は一般的に消費者の買い控えが増加し、販売が伸び悩むという傾向があるものの、各メーカーが想定していたより落ち込みが大きかったといえる。
ただ、そのような逆風の環境のなか、4月19日から29日まで11日間の日程で、「インドネシア国際モーターショー」が開催された。結果は、期間中の総取引額が約4兆800億ルピアと、前年に比べて約26%増加で、予想外に盛況であった。
第2期ジョコ政権では、自動車に対する奢侈品販売税の改正や、環境適応車向けの優遇措置拡大など、自動車販売支援策が予定されており、今後の自動車市場本格回復、景気の底上げなどが期待できそうだ。
また、もうひとつの注目したいポイントが、4月29日にインドネシア政府が閣議決定した「首都機能移転計画」だ。この計画は、これまでもインドネシアで何度も議論されながら立ち消えとなっていた案件だが、この度の閣議決定によって、いよいよ本格的に動き始めたと思われる。今後まだ数年時間を要する長期プロジェクトであるが、ジャカルタ周辺都市の発展、移転地域周辺地域の活性化など、見込まれる波及効果は大きく、第2期ジョコ政権において目玉政策のひとつになりそうだ。
(提供元:アイザワ証券)