右上がりだと、銀行から融資を受けやすいらしい
経済誌でよく目にする「イールドカーブ」ってなに?
投資を学んでいくなかで、「イールドカーブ(利回り曲線)」というワードに出くわしたことがある人はいるだろう。どうやら、市場や経済全般を見通す際に重要なものらしいが、詳しい概念まで知らないのでは。
そこで、ファイナンシャルプランナーの中桐啓貴さんに、「イールドカーブ」ついて教えてもらった。
「順イールドカーブ」だと変動金利が低くなる
「そもそも『イールド』とは利回り(金利)のことで、投資で得られる年間のリターンのこと。そして、『イールドカーブ』は、投資期間ごとの利回りを線で結んだものです」(中桐さん・以下同)
縦軸を「利回り」、横軸を「残存期間(満期日までの期間)」として、利回りと投資期間の関係を表した曲線が「イールドカーブ」なのだ。
「正常な経済であれば、期間が長ければ長いほど、利回りは高くなります。例えば、銀行からお金を借りたとして、同じ額を半年で返す場合と10年かけて返す場合で比べたら、10年かけて返す方が金利は高くつきますよね。このたとえと同じように、期間が長くなれば利回りも高くなる右上がりの曲線を『順イールドカーブ』と呼びます」
曲線の左側が短期金利、右側が長期金利のため、「順イールドカーブ」は、短期金利が低く、長期金利が高い状態。好景気の時に見られるものだ。
「『順イールドカーブ』の時には、銀行が融資を活発化し、企業も新規事業を打ち出しやすくなります。また、短期金利の影響を受けて、住宅ローンの変動金利も低くなるため、住宅を購入しやすくなるという側面があります」
景気後退が予想される「逆イールドカーブ」
「イールドカーブ」は、必ずしも右上がりで推移するわけではないそう。
「景気拡大は大切なことですが、景気が過熱するとバブルになり、土地や株の価格が本来の価値以上に上昇(インフレ)してしまう可能性があります。その状況を防止するため、中央銀行が金融政策で短期金利を引き上げ、長短金利が同等になった状態が『フラットなイールドカーブ』です」
景気拡大から後退に向かう時期だけでなく、その逆の時期にも「イールドカーブ」はフラットになる。
「注意すべきは、『逆イールドカーブ』です。金融政策によって短期金利が上がり、長期金利が下がるという通常とは真逆のことが起きると、景気後退が懸念されます」
「順イールドカーブ」とは逆に、銀行が融資に消極的になり、住宅ローンの変動金利は上がりやすくなる。一方、長期金利の影響を受ける住宅ローンの固定金利は下がりやすくなる。
「逆イールドカーブ」が何十年も続くことはない…?
「順イールドカーブ」と「逆イールドカーブ」は、どのぐらいのスパンで入れ替わっていくものなのだろうか。
「景気は、大体6~7年上昇し、1年~1年半ぐらいスローダウンするというサイクルがあります。景気後退する『逆イールドカーブ』の状態が何十年も続いた時期は、いまだかつてないんです」
つまり、好景気の「順イールドカーブ」の時期が6、7年続き、景気の後退が懸念される「逆イールドカーブ」の時期は1年程度と考えられるわけだ。
「『逆イールドカーブ』は、景気後退の可能性が高いという指標に過ぎません。また、利回りが急激に下がるケースは稀です。個人投資家の場合、景気に左右されてすぐに現金化してしまうのではなく、長くコツコツ続けることが大切。つまり、経済動向を意識しすぎない方がいいと思います」
銀行の融資を受ける、住宅ローンを組むといった場合には、時期の見極めに役立ちそうな「イールドカーブ」。意識しすぎると疲れてしまうが、曲線の形の意味くらいは知っておいて損はないだろう。
(有竹亮介/verb)
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中桐啓貴
IFA法人GAIA代表、ファイナンシャルプランナー。大学卒業後、山一證券、メリルリンチ日本証券で資産運用コンサルティング業務を行う。留学してMBAを取得後、GAIAを設立。金融機関に属さない独立系ファイナンシャルアドバイザーの先駆けとして活躍。最新著書『日本一カンタンな「投資」と「お金」の本』好評発売中。