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ファーウェイ問題や香港デモ、長引く米中対立

提供元:東洋証券

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貿易問題が”摩擦”から”戦争”へと激化している米中対立。一時、協議妥結への楽観論もあったが、米国の対中強硬姿勢はますます強まり、「ハイテク戦争」「新型冷戦」などの段階へとヒートアップする様相だ。この双方の対立、中国ではどう捉えられているのか。経済や株式市場の動き、そして市民の反応を中心にまとめてみよう。

まずは記憶に新しい5月の大型連休中の”トランプ砲”。「中国からの輸入品2000億米ドル相当に対する追加関税を10日に10%から25%へ引き上げる」――。お得意のツイッター攻勢が休暇ムードを吹き飛ばした。

これを受けて、5月6日の上海総合指数は一時6%超下落。終値は、中国の連休前の4月30日比で5.58%安だった。深セン成分指数も7.56%安と大きく売られた。

このトランプ大統領の発言、中国では全く報じられていなかった。株価は朝方から下がっているのに、その原因が全く報じられないという異常事態。株式専門チャンネルの市況番組は「中国人民銀行が今朝、中小銀行向けの預金準備率を引き下げました」と繰り返していた。株安の話題になるとコメンテーターが沈黙してしまい、気まずい空気が流れる。知っているのに言えない空気。何とも歯がゆい時間で、見ているのが痛々しいほどだった。

中国では重大な情報や敏感な話題が表に出ないことがよくある。工場爆発や交通事故などが起きると、その被害が大きければ大きいほど、報道は後手に回ってしまう。政府の公式発表の前に先行して報じられないという暗黙の了解があるようだ。メディアが「トランプ発言で中国株大幅安」とすら一報を打てない共産党の厳しい規制。これを「潜規則(見えない掟)」と呼ぶ向きもある。

大幅安になった中国株だが、相場の異変はすでに4月からあった。上海総合指数は今年に入り、2,440pt(1/4安値)⇒3,288pt(4/8高値)までわずか3カ月間で34.8%も上昇していたため、どこかで調整が入ると思われていたのだ。

相場が疑心暗鬼になる中、(1)非正規の信用取引「場外配資」の取り締まり強化を経て「2015年のような一方的な上昇にはならない」という市場のムードが醸成され、(2)4月19日の共産党会議で供給側構造改革(デレバレッジなど)の推進が強調され、インフラ投資や減税などの「積極財政」が踊り場を迎えたとの意識が高まり、(3)想定外のトランプ大統領発言が下落基調に拍車をかけた、という流れとなった。同指数は5月から6月にかけて、3,000ptを下回る水準でもみ合う展開となっている。

さて、もう一つの大きな動きは、米国による「ファーウェイ外し」だ。トランプ大統領が5月15日、安全保障上の脅威がある外国企業から米企業が通信機器を調達するのを禁じる大統領令に署名。また、米商務省は同16日、ファーウェイと関連会社68社を「エンティティ―リスト」に追加し、同社が米企業から部品を購入することを禁止した。ファーウェイの米国市場からの実質的な締め出しだ。

これらの措置に対し、中国共産党機関紙の人民日報は「戦いたくない、しかし戦うことを恐れない、必要なときは戦わざるを得ない」との表現を再度持ち出し、米国への強烈な不満を表明。米中が全面衝突状態になった。

「悪の権化」の如く扱われる場面もあるファーウェイだが、中国現地では「ファーウェイ支持」がにわかに高まっている。SNS上では「ファーウェイのスマホを買って応援しよう!」のような書き込みが目立つ。普段は温厚な中国人の知人も、珍しく「恥をすすぐ」のような言葉を交えた感情的な文章を投稿していた。

中国スマホ市場で、ファーウェイのシェアは34%で首位(19年1~3月期)。若年層からホワイトカラー、中高年世代まで広く普及している。地方自治体や警察、一般企業で職員・社員に支給されるスマホもほとんどファーウェイ製という。

ところで、渦中のファーウェイの任正非CEOは5月21日の記者会見でこうつぶやいた。「家人はアップルのスマホを使っているよ。『ファーウェイを愛しているからファーウェイ製スマホを使う』という狭い度量ではいけない」。包囲網で焦っているはずなのにこのコメント。さすが、ただ者ではない。

最後に香港デモについて。6月9日は100万人、同16日は200万人規模の香港市民が街に繰り出して、政府批判を行った。これは、香港で身柄を拘束した容疑者を中国本土へ移送できるようにする「逃亡犯条例」改正への反対を訴えたもの。「一国二制度」の下で香港に認められてきた法的な独立性が損なわれかねない、非常に危険で深刻な条例改正である。

市民と警官隊の衝突など情勢が激化する中、香港政府は15日に条例改正の延期を決定。民意が政府を動かした格好となった。

この過程で浮上したのが、果たして香港が国際金融センターとしての地位を保てるかどうかという疑念。もし将来、条例改正が行われ、香港市民、あるいは香港で経済活動を行う外国人が、中国当局によるでっち上げの罪状で逮捕・拘束されるような事態が起きてしまったら……。このような懸念が香港株式相場の軟調要因にもなった。

米中対立に香港問題という難題がまた一つ加わった。トランプ大統領はこの問題を、G20の場で中国の習近平・国家主席に提起するという報道もある。香港の経済活動の自由が侵害されるという、世界の誰もが賛同するであろう大義名分を見つけてしまった米国。両国の対立は想像以上に長引き、複雑化するかもしれない。

 

(提供元:東洋証券)

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