開催期間中は「不足するもの」の価格が高騰!!
〇〇が値上げ!東京オリンピックにまつわる「お金」の話
約1年後に迫った東京オリンピック。長らく続いているお祭りムードがさらに高まっているように感じるが、世界中から人が集まるということは、経済的な影響も大きいことは想像できる。
僕ら一般市民にとって、お金の面でどのような影響を受けるのか、経済ジャーナリストの荻原博子さんに、予想してもらった。
需要が高まる「ホテル」「高速道路」は値上げの可能性大
「東京オリンピック目当ての観光客が増えることで不足すると予測されるものは、価格が高騰します。特に影響を受けるのは、宿泊施設でしょうね」(荻原さん・以下同)
一般的に、ホテルは需要が高まるハイシーズンになると料金が高く設定されるが、同じようにオリンピック期間も価格設定が高くなるようだ。観戦のため、各地から東京を訪れる予定がある人は、覚悟しておいた方がいいだろう。
「宿泊料金が高騰するのは、首都圏だけではなさそうです。インバウンドの方々は観戦のついでに観光をしていくケースが多いと想像でき、外国人人気が高く関東から行きやすい京都は、観光客が今以上に増えると考えられます」
つまり、京都でもオリンピック期間の宿泊施設の需要は高まり、価格の高騰が予想されるというのだ。オリンピック期間中は、観光地への旅行を避けた方が賢明かもしれない。
「観光客が急増すれば、人の移動も増えるため、交通渋滞はひどくなるでしょうし、タクシーもつかまりにくくなると思います。高速道路の渋滞緩和のため、国や東京都はオリンピック期間中の首都高速道路の料金上乗せを検討しています」
物流関係のトラックなどは値上げの対象外となるようだが、日常的に首都高を利用する人にとっては、痛い出費になりそうだ。
「一般生活者に関係するところは、宿泊施設や首都高速道路の料金ぐらいだと考えられます。オリンピックは17日間、パラリンピックは13日間しかないので、その間だけ景気が動いたとしても、物価などにまで影響が及ぶことはないでしょう」
首都圏の地価はオリンピック開催後こそ要注意
オリンピック開催によって、首都圏の地価や不動産価格が上がっているというニュースを見かけるが、住宅の購入を検討している場合は、早めに決断した方がいいのだろうか?
「首都圏の地価は、もう既に上がりきっている印象なので、焦って決断しなくていいと思います。むしろ、注目するべきはオリンピックが終わった後。地価下落に加え、不動産の供給過多による空室率の増加や賃料の値下げが予想されます」
住宅の購入はオリンピック後まで待ってもいいかもしれないが、もし不動産を所有している場合、オリンピック後に価格が急落する恐れがあるというわけだ。
「選手村は、開催後にマンションとして売り出される計画があります。しかし、現時点で都内のマンションは空室がありますし、選手村はアクセスがよくないので、マンションにしても売れずにガラガラになる可能性が高いと思います。新築の住宅の売れ行きも下がっていくでしょうね」
オリンピック開催後は不況の恐れあり…?
どうやら地価だけでなく、経済全体もオリンピック後に低迷する危険性があるとのこと。
「ほとんどの国が、開催後に不況に陥っているんです。例えば、ギリシャが経済危機に陥ったのは、2004年のアテネオリンピックが原因といわれています。インフラ整備に精を出し、関連支出が当初の倍額に増加したためです。ブラジルも、2016年リオデジャネイロオリンピックの後、財政が悪化しています」
近年で唯一、開催後の不況を免れたのがアメリカ。1996年に開催されたアトランタオリンピックの前年に「Microsoft Windows 95」がリリースされ、IT革命が起こったタイミングだったため、経済は成長し続けた。
「日本も、大阪万博やカジノ誘致が控えているため、景気は落ち込まないといわれていますが、あまり楽観視はできないでしょう。世界的に不安要素の多い今、万博もカジノも成長産業にはなり得ないと思います」
また、荻原さんは「世界的に不況といわれる今、企業も賃上げは渋ると思うので、今後ますますダブルインカムやダブルワークの必要性は高まっていくでしょう」と言う。世界的なイベントで景気が良くなることを期待するより、堅実に収入を上げる方法を考えた方がよさそうだ。
オリンピック目前で日本全体がお祭りムードに包まれている今こそ、一時の盛り上がりに左右されず、今後をしっかり見据えて、ライフプランを組み立てたい。
(有竹亮介/verb)
関連リンク
荻原博子
経済評論家。経済事務所勤務後、1982年からフリーのジャーナリストとして新聞、経済誌などで連載を持ち、難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説。著書に『どんと来い、老後』『お金は死ぬまえに使え。』など多数。