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運転データを分析し、さまざまなサービスを。

車の定額制、高齢ドライバーの見守り。移動を進化させる「SmartDrive」

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近年、これまでのお金の価値観を変えるサービスが相次いで生まれている。そのひとつが「サブスクリプションモデル」。定額制サービスのことで、たとえば音楽は、CDや音源データをひとつひとつ購入するのが一般的だったが、最近は月額料金を払い、オンラインで配信される無数の音楽を聴く形式が増えている。

そんなサブスクリプションモデルは、車の世界にも取り入れられ始めている。スマートドライブ社の提供する「SmartDrive Cars」は、毎月の定額料金を払えば、新車に乗れる。料金には、車検やメンテナンス費、自賠責保険や自動車税も含まれているという。

サービスの特徴は、車に専用デバイスを装着し、走行データを分析。スマホ上のアプリで運転診断や走行履歴をチェックできること。同社 代表取締役の北川烈氏は「創業以来、デバイスで車の走行データを収集・分析する技術を構築し、それを生かしたサービスをつくってきました。あくまでデータ収集・分析が企業のコア技術であり、そこから誕生したサービスのひとつがSmartDrive Carsです」という。

車の定額制につながった“コア技術”とは、どのようなものなのか。詳しい話を聞いた。

1回の運転に対し、最大で数十万通りのデータポイントを生成して分析

スマートドライブ社は、車に装着し、オンラインで走行データを取れるデバイスを開発している。シガーソケットに差し込むタイプがメインの標準品で、センサーが内蔵されており、6軸(前後左右上下)の動きと、GPSや加速度などから走行データを取得する。そのほか、ドライブレコーダーやタイヤの空気圧データを取れるセンサーを組み合わせると、より細かなデータの取得が可能だという。

「私たちは、大量の走行データを取得し、分析する技術を磨いてきました。世の中のあらゆるものがネットにつながる中で、車がネットとつながり、走行データを分析できれば、安全運転の増加や事故・渋滞の減少など、移動の進化を後押しできるはずです」

たとえば同社は、1回の運転データに対し、最大で数十万通りのデータポイントを生成して運転傾向を分析するという。例として「急ブレーキは“危ない運転”だと思いがちですが、それが事故を未然に防いでいる面もあります」と北川氏。1つの兆候では判断できないため、センサーのさまざまな情報を組み合わせていく。

「弊社の強みは、自動車メーカーや車種、つくられた年代などにかかわらず、多くの車にデバイスを装着できる点です。データはサンプルの量が多いほど、分析の精度が良くなります。だからこそ、なるべく多くの車・移動体が装着できるデバイスにこだわってきました」

用途を狭めず、あらゆる車からデータが集まる仕組みをつくる。それこそが、北川氏が創業から意識し続けてきたことだという。

安全運転や運転量の少ない人は、より“お得”になる仕組み

「走行データをもとにドライバーの事故リスクを予測できるため、自動車保険やリースと組み合わせていろいろなサービスにつなげられます。たとえば、安全運転のドライバーやあまり運転しないドライバーは保険料や利用料を下げてお得にするなど。データ分析の生かし方を考える中でサービスが生まれました」

実際、SmartDrive Carsでは、ドライバーの運転を点数化し安全指導を行う。また、その点数に応じて各種ポイントや割引クーポンがもらえる。リアルタイムで運転データを取得・分析できるため、このようなサービスが可能になる。

ほかにも、データ取得・分析のコア技術を活用して、さまざまなサービスを展開している。特徴的なものとして挙げられるのが、高齢者などの運転を家族が見守れる「SmartDrive Families」。PCやスマホで車の現在位置を確認でき、急操作などもデータで振り返れる。社会問題となっている「高齢者の運転」に向き合ったサービスだ。

「移動手段の少ない地方などでは、高齢者が簡単に免許返納できない現実もあります。また、高齢者に運転試験を行う流れも強まっていますが、一時的な試験の結果がどこまで信頼できるか、判断が難しいでしょう。むしろ、日常的な運転データを分析すれば、より早く正確に、高齢者の運転状況を把握できるのではないでしょうか」

そのほか、運送会社や営業車両を使う企業などの車両管理サービスや、取得した大量のデータを分析し、渋滞改善や故障、タイヤの摩耗予測など、さまざまな分野に活用できるプラットフォームの構築など、コア技術を活用したサービスは多岐にわたっている。

「私たちが予想していなかった使い方も見られます。たとえば旅館では、仲居さんがお客さまを玄関で出迎えますよね。その際、弊社のデバイスを旅館の送迎車に取り付けて、車が近づいたら仲居さんのスマホに通知が行き、それを見てからお出迎えをされているケースもあります。いろいろな用途が出ていますね」

今後は、バイクや物流コンテナにもデバイスを装着できるようにし、「取れるデータをさらに増やしたい」と北川氏。それを活用して、サービスを磨くようだ。加えて、「新興国における移動の進化も後押ししたい」とのことで、今年中にはタイで事業を開始する。

移動が進化すれば、車や道路のあり方も変わる。「少ない車で効率よく移動できれば、道路も歩道が広くなったり、家を建てるにも駐車スペースが必要なくなったり。街や家の価値観も変化するかもしれません」と北川氏。移動の進化を目指すスタートアップは、人々の生活や街の進化まで見据えている。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2019年7月現在の情報です

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