雇用保険加入者は注目!
今注目のリカレント教育にも使える「教育訓練給付」がお得なワケ
人生100年時代を迎え、「大人の学び」への関心が高まっている。義務教育や基礎教育にとどまらず、社会人になってからの学び直しへのニーズが広がり、近年は政府も「リカレント教育」を促進している。
たとえば、「教育訓練給付」という制度もその一つ。社会人の学習意欲を後押しするもので、現在までに延べ約350万人が学び直しやキャリア開拓に活用している。その具体的な内容について、制度を設計した厚生労働省の担当官に聞いた。
教育訓練給付で、学びの自己負担が2割から7割もお得に
「教育訓練給付」を簡潔に説明すると、「厚生労働大臣が指定した講座を受講すると、費用の一部が給付される」というもの。加入期間にもよるが、雇用保険の被保険者であれば、失業者に限らず在職者でも活用できる。
「雇用保険は被保険者の求職活動をサポートする制度です。雇用保険は、『失業』を主たる保険事故、つまり保険金支払いの義務が生じる状態としたうえで、失業手当を給付します。その一方、労働者の主体的な能力開発を支援し、雇用の安定を図るために設けられたのが、教育訓練給付になります」(厚生労働省・担当官、以下同)
教育訓練給付は、大きく「一般教育訓練給付」と「専門実践教育訓練給付」の2通りに分かれる。それぞれ、何が違うのだろう?
「まず、対象講座が異なります。専門実践教育訓練給付は労働者の中長期的キャリア形成に資する講座であり、社会福祉士や看護師などの資格取得を目指す養成課程、MBAなどの専門職大学院等などが対象になります。一方、一般教育訓練給付はそれ以外の資格取得を目指す講座や、英語や中国語などの語学系試験を目標とする講座、修士・博士課程などが対象になります」
ちなみに、「専門実践教育訓練給付」は2,407講座と対象は絞られており、受講費用の5割が支給され(年間上限40万円)、さらに受講後1年以内に資格取得等によって就職した場合、追加で2割が支給されるので、最大で7割が支給される(年間上限56万円)。一方、「一般教育訓練給付」は受講費用の2割が支給され(上限10万円)、対象は11,701講座にのぼる(講座数はいずれも2019年4月時点)
先述のとおり、支給を受けるには一定期間、雇用保険に加入している必要がある。ちなみに、専門実践教育訓練給付で初回は2年以上、一般教育訓練給付で初回は1年以上となるので、新卒で正社員になった人であれば最短2年目から活用することができる。いずれにしても、諸々条件はあるものの、最大で224万円支給されるというから、学び直しを検討している人は使わない手はなさそうだ。
2019年の秋には新たに「特定一般教育訓練給付」という枠組みができる予定
では実際のところ、どのような人が給付を受けているのだろう。
「一般教育訓練給付の属性は、男女でほぼ半々、年齢は30代と40代が拮抗して多くなっています。かたや専門実践教育訓練給付は、女性がやや多く、年齢は30代が最も多くなっています。背景には、女性に人気が高い公的資格の看護師や保育士が含まれている影響もあると思います」
なお、「一般教育訓練給付」「専門実践教育訓練給付」ともに趣味や教養、基礎的な水準の訓練は対象外になる。雇用保険が適用されている制度とあって、あくまでも就職やキャリアアップにつながる講座が選ばれているようだ。
ちなみに、興味深いのは、今の時代ならではの講座の数々。専門実践教育訓練給付に指定される講座のなかには、データサイエンスやAIなどについて学ぶ「第四次産業革命スキル習得講座」といったものもある。
ともあれ、いずれの講座も審査を経て、厚生労働省の指定を受けているものに限られる。もし、主催者が異なる類似の講座があり、どちらを受講するか悩んでいたとしたら、教育訓練給付制度の対象講座かどうかを判断基準のひとつにするのもありかもしれない。いずれにしても、受講前に対象講座であるかどうかをチェックしておいて損はなさそうだ。
なお、10月からこの給付制度が拡充される予定。「労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する講座」については、支給額を4割(上限20万円)とする「特定一般教育訓練」が新設される。たとえば、IT資格取得目標講座(ITSSL2以上)や、文部科学大臣が認定する大学等の短時間プログラム(60時間以上120時間未満)などが対象となるようだ。
そもそも、学びは社会の荒波を乗り越える武器となる。身につけた知識は、キャリアも人生も豊かにしてくれるはずだ。当面転職や退職を考えていない人も、先々の備えとして、活用を検討してみてはいかがだろう。
(末吉陽子/やじろべえ)