「株主優待」の裏側に迫る!

背景に古典を学ぶ「ほぼ日の学校」

今年の株主優待「ほぼ日の百人一首」に込められた想い

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今や個人投資家から大人気の「株主優待」。株主優待を目的に株式投資をしている人も多いのではないでしょうか。各企業の優待内容は、企業のホームページで確認できると思いますが、優待誕生の背景や開発秘話はなかなか知ることができません。

そこで、人気企業の株主優待担当者にインタビューを敢行!株主優待導入の背景や現在の優待に決まった経緯、背景を語っていただきました。

今回は、「ほぼ日刊イトイ新聞」の運営、「ほぼ日手帳」が有名、コピーライターとして知る方も多い糸井重里さんが代表取締役社長を務める『ほぼ日』です。

なお、本株主優待の権利付最終日は2019年8月28日です。

聞き手・執筆:優待好きFP 高山 一恵

――では、本日はよろしくお願いします。早速ですが、なぜ、株主優待を導入しようと思ったのですか?

当社は、2年前の3月に上場しましたが、株主優待を通じて当社を知っていただきたいと考えており、優待制度は上場初年度から導入しています。

そもそも代表の糸井としては、優待をやるか、やらないかというよりは、優待は「あって当然」という考えだったようです。株主優待は、投資家にとって投資するうえでのメリットの一つでもありますが、優待を提供する企業側としても、株主の方とコミュニケーションを取るうえで大切なツールと考えています。

そんな訳で、代表の糸井はもちろん現場の社員含めて、最初から株主優待についてはきちんと考えようというスタンスでした。

――そうなんですね。これまで2回優待を実施されていますが、優待内容を教えてください。

最初の優待は、5年間の記録が1冊でできる「ほぼ日5年手帳」を贈呈させていただきました。当社の商品の中で「ほぼ日手帳」は代表的な商品ですので、手帳の会社として当社を知っていただいている方も多いと思います。

そこで、ちょうどタイミングよく新発売する手帳があったので、優待に取り入れることになりました。ただ、優待のプレミアム感を出したかったので、手帳の表紙は特別な表紙をつけてお送りしました。

――確かに、御社といえば、「ほぼ日手帳」というイメージはありますね。

そうですね。ですから、2回目の優待は、手帳以外の商品もあるということをお伝えしたかったので、当社の定番商品2つを選び、そこに書籍を加えたセットにしました。

定番商品のうちの一つは、ほぼ日刊イトイ新聞でTシャツに続き2番目に発売した商品の「ほぼ日のふくろもの」です。こちらは、昨年「ほぼ日刊イトイ新聞」の創刊20周年だったので、20周年を記念して、株主優待特別デザインにしました。もう一つが「やさしいタオル」で、こちらもふくろものに並ぶ昔からの定番商品です。

優待商品は、届いた時に株主の方に喜んでいただけるよう、特別のしつらえにして送らせていただいています。

――新商品も嬉しいですが、定番商品のセットもいいですね!商品選定はどのように決めているのですか?

優待を通じて当社の事業を知ってもらいたいというのが大きな目的なので、そこはぶらさずに、そのときのトピック、会社として注力していることなどを考えて商品選定をしています。

まずは、IRチームでいろいろ案を出して、その後、糸井にも意見を聞いています。お互いに描いているコンセプトが一致しているとスムーズにいくのですが、合わなかったときは、苦労します(笑)。最終的には、私たちの提案に糸井が色々味付けをしてくれて、決める感じですね。そこから商品担当のチームと細かい仕様などをつめていき、優待品ができあがります。

これまでの2回の優待については、1回目は新商品だったので、2回目は定番商品にしたかったというのはあります。

――では、順番からいうと、3年目の今回は新商品ですか?

するどいですね(笑)。今年は、新商品の「ほぼ日の百人一首」です。百人一首といっても昔自分が遊んでいたものとは少しちがう、ほぼ日ならではのアイデアをのせたものです。

小説、エッセイ、評論など多彩な執筆活動をされていた橋本治さんの『百人一首がよくわかる』(講談社)という本がありまして、百人一首の名歌が五七五七七そのままに、面白くてわかりやすい現代語訳になっています。百人一首を楽しみながら理解できる大変面白い本です。この本を参考文献として、漫画家の和田ラヂヲさんに絵を描き起こしていただいて、これまでにない新しい百人一首が出来上がりました。

もともとは私たちのウェブストアでほぼ日手帳を買ってくださった方へのおまけとしてこのアイデアがあり、「ほぼ日の百人一首(サイズ小さめ)」というものをつくることにしました。

それが、企画が進んでいく中で、おまけだけではなく、普通のかるたとして遊びやすいサイズで、本とセットになったものを株主優待にできたらおもしろいんじゃないか、という話になりました。

なぜ百人一首?と首をかしげる人がほとんどだと思いますが、実は、百人一首に決まった背景には、当社が運営している「ほぼ日の学校」が関係しています。その辺りの経緯を「ほぼ日の学校」の学校長である河野から説明させていただきます。

――「ほぼ日の学校」があるんですか!では、河野さん、よろしくお願いします。

はい。「ほぼ日の学校」の学校長を務めています河野通和です。ほぼ日の学校は、「古典」をテーマにした学校で、昨年1月からスタートしました。

「なぜ、古典なのか」というところからお話しします。当社は、さまざまなコンテンツを作る会社なので、クリエイティブな視点がすごく求められますが、クリエイティブな視点というと、今の時代ならインターネット上の最新情報を目を皿のようにしながら、最新トレンドを追いかけ、先のことを予測しながら今の世の中に刺さることを考えるというようなイメージがあるかと思います。

でも、糸井の考えはそうではなくて、ややもすると遠く感じられる古典にこそ、人々の心をとらえるアイデアのタネやヒントがたくさんあるはずだと。

実際に、今世の中で起こっていることや人々が考えていることも、昔の人が既に経験しているものが多い。

そこで、糸井は、古典をいま一度しっかり学ぶことが大切なのではないかと思ったようです。そんなことから、古典をたのしく学べる学校をやりたいと考え、前々からご縁のあった私が校長に就任しました。

――なるほど。それで古典なんですね。でも、古典というと、すごく難しいイメージがありますよね。

はい。古典というと、学校の授業がつまらなかった、難しくて、取っ付きにくそう、というイメージですよね。

当社は、「やさしく、つよく、おもしろく。」をスローガンに掲げていますから、古典の学校といっても、敷居が低く、楽しんで学べる場になっています。たんに知識を詰め込むだけでなく、心や身体といった深い部分で受けとめてもらう授業になっていると思います。

これまで、学校の授業では、シェイクスピアや歌舞伎、万葉集などをテーマに取り上げてきましたが、「万葉集」の講座をやっている最中に、新しい元号「令和」が決まりました。出典が「万葉集」だったことから「万葉集」が一躍注目を集めました。

ほぼ日の学校にもメディアの取材が入ったり、世の中「万葉集」がブームになって、生徒さんたちもトレンドの渦中にいるような感じになりました。授業もすごく盛り上がりましたね(笑)。糸井も「万葉集」を取り上げたことがきっかけで和歌の面白さ、底力を知り、授業をすごく熱心に聞いていました。

ほぼ日の学校で、古典もやって、「万葉集」もやって、和歌も詠んでという中で糸井のボルテージが上がってきたところに百人一首の発想が生まれ、橋本治さんの現代語訳、和田ラヂヲさんの漫画という他にないアイデアが盛り込まれて、すごくユニークな商品ができたのかなと思います。

こんなに活きが良くて、面白いものだったら、ぜひ優待にしようということでオリジナルの百人一首が今回の株主優待に決まったわけです。

――なぜ、百人一首が株主優待なのかがよくわかりました!この背景を知ると、株主の方も優待が届いた時に感慨深いでしょうね。

これがきっかけになって、あらためて万葉集、ひいては「古典」という世界にふれる方がいたらうれしいですね。そこで「ほぼ日の学校」に興味を持ってくださったり、ほぼ日っていう会社に興味を持ってくださる方がいれば、それはもう「しめた!」という感じです。

――御社ならではの優待、今後も楽しみにしています。では、最後に株主の皆様にメッセージをお願いします。

百人一首、まだご覧いただける現物がないのですが、届いたらきっと「お!」と思ってもらえるものがお届けできると思います。古典とのつながりについて意識して使っていただければ、という堅苦しいものではなく、商品として素敵でふれているうちに、いつの間にか古典への興味が出てきていた、というものになればいいなと思っています。

今回お話しさせていただいたように、当社では、優待の内容が面白いかどうか、嬉しいと思っていただけるかどうかというのがはじめにあって、そこに価値を置いて考えています。商品の金額や利回りといった側面はあとからみていくことになりますが、結果として両方の軸で魅力があると思っていただけるような優待をお届けしていけるよう、今後も取組んでいきたいと思います。

また、優待と同様に、株主総会も株主の方との大切なコミュニケーションの場だという考えから、総会の前後にさまざまな催しを開き、1日がかりのイベントにしています。直近の株主総会後の株主ミーティングでは、ほぼ日の学校で取り上げているシェイクスピアを題材に、株主の方たちと朗読会をやったところ、大変好評でした。

今後も総会や優待などを通じて、株主の皆さんとコミュニケーションを取っていけるよう取り組んでいきます。今後とも応援よろしくお願いします。

――本日は貴重なお話しをいただきましてありがとうございました。

 

【株主優待のプロフィール(データは2019年8月15日時点)】
●優待商品名:100株以上の株主の方にほぼ日新商品を贈呈
新商品「ほぼ日の百人一首」(11月発売予定)と関連書籍『百人一首がよくわかる(橋本治)』
●最低投資金額:573,000円(100株単位)
●優待に必要な投資金額:573,000円(100株より)
※データは2019年8月15日時点

<合わせて読みたい!>
【絵でわかる】株主優待のもらい方

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