使いすぎちゃう、ちょっと怖い、“粋”に感じない…
現金主義派の人に聞く!「キャッシュレス決済をしない」理由
電子マネーやクレジットカードで支払いを行う「キャッシュレス決済」。2018年4月に経済産業省が公表した統計では、日本のキャッシュレス決済比率は約21.3%(2017年)となっている。さらなるキャッシュレス化を進めるべく国も旗を振っているが、なかにはポリシーを持って“現金主義”を貫く人たちも。
そこで、今回はあえてキャッシュレス決済を使わず現金払いにこだわる人たちに、その理由を聞いてみた。
1人目・齋藤さんの理由「現金のほうが“粋”だから」
「クレジットカードは一応持っていますが、ほぼ現金決済ですね。キャッシュレスって、味気ないじゃないですか。以前、アパレルのお店で働いていた時、お客さんが300万円の時計を現金一括で買われていったんですよ。その気前のよさ、かっこよさって、現金ならではなのかなって」
「それに現金があると、お金に困っている友人にすぐ貸してあげられる。貸すときは現ナマで渡さず、封筒に入れるようにしています。そのほうが、お金の価値を理解してもらえるので。冠婚葬祭でも、きちんと現金を包んで渡すじゃないですか。いくらキャッシュレス化が進んだとしても、おそらくそこは変わらないですよね。電子マネーのご祝儀なんて、味気ないじゃないですか。
お金って冷たいものというイメージもあるけど、一方で“粋”を感じられたり、“情”をつなぐものだったりでもあると思うんです。だから、僕は現金を使っていきたいですね」
2人目・Kさんの理由「キャッシュレス決済だと、つい浪費してしまうから」
「私は衝動買いや浪費癖があるので、今はなるべくクレジットカードを使わないようにしています。以前は勢いで電化製品や美容器具を買ってしまったりして、請求書を見てゾっとすることもありました」
「あと、飲み会の会計3万円を私のクレジットカードで払ったことがあったんですけど、参加者からは割り勘のお金を現金でもらったんですよ。このお金って、来月の引き落としまでとっておくべきなのに、つい“臨時収入”が入ったみたいな気になってしまって……。気づけば散財していました。キャッシュレス決済だと“お金を使った”感覚が持てないので、私には危険みたいです」
3人目・中丸さんの理由「お店の人に申し訳ないから」
「僕は飲食店を経営しているのですが、まだまだ現金決済のお客さんがほとんどです。そのため、営業中は両替を求められることも多く、財布の中には常に千円札や小銭を入れておくようにしています。日常の買い物でも、なるべく細かいお金にくずれるような払い方のクセがついてしまっていますね」
「また、自分が他の店に飲みに行くときは、お店の手間を考えてクレジットカードはなるべく使わないようにしています。じつは、クレジットカードの手数料って店側の負担になってしまいますし、キャッシュフローもズレてしまうので面倒なんですよね。自分も飲食店をやっているので、余計に申し訳なく感じてしまって(笑)。
それに、行きつけの飲み屋ではおつりをチップ代わりに受け取らないこともあるんですけど、キャッシュレスだとそれもできませんからね」
4人目・Fさんの理由「悪用の不安があるから」
「一応クレジットカードも持っていますが、どうせ財布を開くのであれば、わざわざそれを使う必要もないかなと。それに、家計簿アプリを使っているんですが、記録するにあたり、手元の現金がどれだけ減ったのか把握しておきたいんですよね」
「本当は、家計簿をアプリで管理するならクレジットカードと連動させたほうが便利なんですよね。でも、銀行の個人情報をネット上でやりとりすることに、どうしても抵抗があって……。
それに、クレジットカードは簡単に精算できる怖さや、スキミングなどの不安が拭いきれない。キャッシュカードだったら紛失しても、暗証番号が分からなければ引き出されませんけど、クレカやスマホ決済のID系は『悪用されやすい』というイメージがあるんですよね。心配性なので、キャッシュレス決済はいざという時しか使いません」
5人目・谷山さんの理由「子どもが生まれ、節約したいから」
「最新のテクノロジーやガジェットが好きで、もともとはキャッシュレス派でした。でも、手軽で便利な分、やっぱり使い過ぎてしまうんですよね。当時は減っている感覚もないまま散財を続け、数十万円の請求がきたこともありましたよ(笑)。一人暮らしの時はそれでもよかったけど、半年前に子どもが生まれたのを機に現金派に戻りました。よほどしっかり管理できる人でないと、キャッシュレス決済で節約するのは難しいのかなと」
「当たり前ですけど、財布に5000円しか入っていなかったら6000円の買い物はできないじゃないですか。でも、キャッシュレス決済なら買えちゃいますからね……。それに、たとえばキャッシュレス決済の限度額が5万円だったとしたら、つい上限まで使ってしまう。でも、これが財布に現金で5万円入っていたとしたら、そこまで使わなかったと思うんですよ。現金だと、残り1万円を切ったら危機感を覚えるじゃないですか。やっぱり、出費を抑制するなら現金かなって」
と、現金主義派の主張は様々だが、現金決済にメリットを感じているというよりも、クレジットカードをはじめとするキャッシュレス決済への不安やデメリットを口にする人が多かった印象だ。キャッシュレス決済が効率的であることは確かだが、「便利さ」というメリットだけでは拭えない心理的な抵抗感をいかに和らげていくかが、普及のカギと言えそうだ。
取材・文:小野洋平(やじろべえ)