5万部超えヒットのおカネ小説作者に突撃!

『おカネの教室』の著者「お金の失敗を防ぐため、最低限つける知識は○○」

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私たちの生活の“土台”と言える「お金」や「経済」。毎日接していながらも、いざ深く考えると分からないことも多い。たとえばこんな問題があったら、どんな回答をするだろうか。

Q.お金を手に入れる方法6つ。最後の???を埋めよ。

・かせぐ
・ぬすむ
・もらう
・かりる
・ふやす
・???

実は、上の問題をテーマにヒットしている“経済青春小説”がある。『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』(インプレス)だ。この分野では異例と言える5万部超の売れ行きとなっている。著者の高井浩章氏の本業は経済記者。そこで高井氏に、お金に関する質問をいろいろぶつけてみた!

もともとは、3人の娘に書いた「家庭内小説」

『おカネの教室~』は、中学2年生の男女2人がお金について勉強する「そろばん勘定クラブ」に入るところから始まる。そこで出会う謎の人物“江守先生”が、先ほどの問題を出し、2人を悩ませる。

以降は、この問題を軸にクラブ活動を展開。ただし、お金の本質を学ぶだけでなく、思春期の2人が抱える悩みや恋模様、さらにはちょっとしたミステリー要素も加わったストーリーに。楽しく読みながら、お金の知識も入る“経済青春小説”に仕上がっている。

実はこの小説、高井氏が書き始めたきっかけは意外なものだった。

「もともと本にする予定はなく、私が娘に読ませる“家庭内連載小説”として書き始めました。今から9年前、長女が10歳の頃にスタートして。ちょうどお年玉やお小遣いを自分で管理する年頃なので、お金について知ってほしいと思ったんです」

その後、次女、三女も読者に加わり、長期にわたり少しずつ書いたとのこと。にしても、なぜこのような小説を子どもに読んでもらおうと思ったのだろうか。

「お金は、社会に出て一番つまずきやすいものですよね。しかも、その時には大ケガをする。人生を大きく揺るがしてしまいます。なのに、学校ではお金について教えてくれません。本当に少しの金融リテラシーがあれば分かることでも、知らないから騙されてしまうこともあります。お金は怖いもので、絶対にナメてはいけない。それを伝えたかったんですね」

加えて「日本では、お金について考えないことが“美徳”と信じられている文化がある」と高井氏。退職金を得た人が騙されてしまうケースもよく聞かれるが、「その美徳を信じていた人が、一生懸命働いた後に騙されてお金を失ってしまったら悲しいですよね」と言う。

「もうひとつ、この本は職業観の本でもあるんです。社会に出る前に、どうこの市場経済に参加するのか。社会の中で価値を生める人間とはどんなものなのか。お金を“ぬすむ”人もいる中で、必要な知識を蓄えてほしかったんですね。お金は、職業とも密接に関わっていますから」

経済成長や投資の基準として見るべき「数字」

先ほど「少しの金融リテラシーがあれば分かる」というコメントがあった。そこで、高井氏に「これだけは学んでおくべきお金の知識は?」と尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。

「30代以上のビジネスパーソンなら、まずは“金利”を学んでほしいですね。金利は市場経済の一番のベースで、金利が分からないと景気や経済成長、投資もイメージが湧きません」

たとえば、銀行の預金金利。バブルの頃は8%もあった金利が、なぜ今は0%台なのか。金利は、私たちが銀行に預けたお金に付加されるものだが、裏返せば、それは銀行がどこかにお金を貸し出し、返済時に貸した相手からもらうものでもある。ということは、今の時代、お金を貸す立場の銀行も、同じく多くの金利を取れないと言える。

「なぜそうなるかといえば、物価も上がらず経済成長も少ないためですよね。銀行も市場ですから、無理な金利を設定すれば借りる人がいなくなります。時代や状況に合わせて、適正な金利に落ち着くんですね。それが今の日本は0%台ということ。金利の変化を知るだけで、世の中の経済状況が分かってきます」

さらに、金利を知ることは「リスク回避」にもなるようだ。

「銀行金利は、ほぼリスクなしに得られる利回り。こういったものを『リスクフリーレート』といいます。それが0%台ということは、日本で1%以上の利回りが出るものはそれだけリスクがあるということです。リスクなしに銀行より高い利回りが出ることはないですし、仮に20%の利回りと言われたら相当怪しい(笑)。金利の構造、感覚があれば、投資の話も冷静に見極められるわけです」

ちなみに、銀行や金利、投資の話は、「お金を手に入れる方法」の6つ目を考える小説終盤で大きく関係してくる。答えは著書を見てもらいたいが、高井氏は最後にこんな考えを話す。

「銀行や金利は経済成長と関わっていますし、投資は経済成長を追い求める際に“お金を回す”意味で大事な役割になります。『株を買う』というと、日本ではギャンブル扱いされることもありますが、そうではありません。長い目では、みんなでお金を出し合って、新しいビジネスが生まれる。それで世の中が豊かになる。このサイクルに参加することなんですよね。その上で、分配も受けられるのです」

高井氏は「日本では、そういったことを学ぶ機会がなかなかない」という。“たかがお金”の意識は強いが、“されどお金”を知るべきとのことだ。

ちなみに『おカネの教室~』は、8月に韓国、9月には台湾、その後は中国で発売の予定。さらに来年には、マンガ化も決定したとのこと。より多くの人が、このストーリーから“お金”を学んでいくことになる。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2019年9月現在の情報です

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