住宅ローンの繰り上げ返済と運用。どっちを優先すべき?

提供元:Mocha(モカ)

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住宅ローンの返済中にまとまった収入が得られた場合、それを住宅ローンの繰り上げ返済に使うのが良いのか、それとも資産運用に充てるべきなのかで迷う人が増えています。

それぞれのメリット・デメリットはどんなところにあるのでしょうか。また、どのように判断するべきかその判断基準を述べていきたいと思います。

住宅ローンの繰り上げ返済の基本と住宅ローン減税制度

住宅ローンの繰り上げ返済には、返済期間を減らす「期間短縮型」と毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」の2種類の方法があります。

「期間短縮型」は利子分の支払いが少なくなりますので、総返済額を削減したいという方に向いています。一方、「返済額軽減型」は、現在の返済額が負担に感じられている人や、ライフプランが変わることによりこのままでは返済できなくなる可能性がある人に向いています。どちらを使うかは、目的に応じて変えるとよいでしょう。

ただし、ここで忘れてはいけないことが「住宅ローン減税制度」の活用です。

住宅ローン減税制度は、住宅ローンを借り入れて住宅を取得した場合に、毎年末の住宅ローン残高または住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額の1%が10年間にわたり所得税の額から控除されるというものです。また、所得税からは控除しきれない場合には、住民税からも一部控除されます。

所得税は「還付」、住民税は「減額」という扱いになりますが、最大で400万円(特定の住宅の場合は500万円)が戻ってきますので、どちらも適用を受けられる期間内は最大限活用することをお勧めします。

繰り上げ返済を優先すべき基準は?

住宅ローン減税適用期間であれば、それを最大限活用することをお勧めしますが、適用期間を過ぎている場合は、必ずしも繰り上げ返済すればいいとは限りません。

というのも、住宅ローンの金利は現状、とても低くなっているからです。もちろん、繰り上げ返済をすれば金利の負担を減らすことはできるのですが、それよりも、運用して増やすことができれば、繰り上げ返済よりも有利だと考えられるからです。

具体的に考えてみましょう。
3000万円の住宅ローン(35年・変動金利0.6%)を借りて、10年後に300万円を繰り上げ返済(期間短縮型)したとします。このとき、総返済額は、

・繰り上げ返済前 33,267,360円

・繰り上げ返済後 32,824,067円

となるので、総返済額を約44.3万円減らすことができます。残りの返済期間も約3年半短縮できる計算です。

でも、仮にこの300万円を一気に使って25年間複利運用して、利益を得られたとします。このとき、総額は、

・ 年利1%の場合 384万7286円
・ 年利2%の場合 492万1802円
・ 年利3%の場合 628万1316円
(※利益には別途約20%の税金がかかります)

となります。年利1%でも+84万円、税金を引いても約67.5万円ですから、すでに繰り上げ返済よりも有利です。もちろん、2%、3%と利益が増えれば、その差はさらに広がることになります。

ただし、25年の複利運用で年利1%以上を稼ぐのは、銀行の預金では絶対に無理。投資信託や株式投資などで、運用をする必要があるでしょう。運用は利益が出て増える可能性もありますが、損失を被って減る可能性もあります。

年利2%が確保できるとしたら、運用を優先

上では300万円を一気に投資しましたが、投資の損失を抑えるには、毎月少しずつ投資する積立投資が有効とされています。積立投資でコツコツと同じ商品を買い続けると、その商品が安いときにはたくさん買い、高いときには少ししか買わなくなるので、平均購入価格を下げる期待ができるのです。

仮に先ほどの300万円を、毎月1万円ずつ、25年間積立投資したとします。このとき、総額は

・ 年利1% 340万6701円
・ 年利2% 388万8211円
・ 年利3% 446万0078円
(※利益には別途約20%の税金がかかります)

となる計算です。年利1%では繰り上げ返済のほうが有利ですが、年利2%なら+88万円、税金を引いても約71万円となるため、運用のほうが有利になります。

従って、年利2%が得られると考えるならば、繰り上げ返済よりも運用を優先した方が十分にメリットがあると思います。

もちろん積立投資も投資ですから、元本は保証されていません。しかし、金融庁のつみたてNISAの資料によると、20年の長期運用を行うことで2%~8%の利回りが得られる傾向にあるといいます。

また、老後の年金を自分で作るiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)を利用すれば、毎年の所得税や住民税を減らすこともできるので、見かけの利率よりもお得になります。

つみたてNISAやiDeCoはいずれも利益にかかる税金を非課税にできる制度です。使える方はぜひ活用しながら、運用をすることをおすすめします。

まとめ

繰り上げ返済を行うことで得られるメリットは「安心」です。完済することによって「身軽になる安心」、そして「老後の安心」を得られることは最大の魅力ではないでしょうか。

しかし、その安心とは別に、自分の資産形成もしっかり考えていかなければいけない時代になってきています。繰り上げ返済も運用のうちですが、できるなら資産運用も早めに開始した方がいいのも事実です。お金を繰り上げ返済に回す部分と運用に回す部分とに分けて、お金を増やしていくことも考えていきましょう。

 

[執筆:ファイナンシャルプランナー 新井智美]

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