「会社都合退職」「自己都合退職」2種類の制度を比較!
定年前に引退する「早期退職」って得なの?
定年退職の年齢は、徐々に引き上げられているが、その一方で「早期退職」を推進する企業もある。希望する社員は、退職金の割り増しや再就職の支援など、優遇を受けられることが多い。
ところで、なぜ早期退職に関する制度があるのだろうか? All Aboutで「貯蓄」ガイドを務めるファイナンシャルプランナー・大沼恵美子さんに、早期退職に関する制度の内容やメリット、導入される理由を教えてもらった。
「早期退職制度」募集人数は昨年の約2倍に
「東京商工リサーチの調査によると、2019年上半期だけで、早期退職者を募集した上場企業は17社、募集人数は8178人に達しています。2018年1年間の募集上場企業数が12社、募集人数は4126人でしたので、上半期だけで大きく上回っています。」(大沼さん・以下同)
なぜ、たった半年で、昨年の2倍も募集人数が増えているのだろうか。一般的に、企業が早期退職者を募集する理由は、業績不振であることがほとんど。事業を縮小するため、早期退職者を募り、人員を減らしていく。しかし、現在は別の理由も出てきているらしい。
「業績が安定している企業でも、一部の業務をアウトソーシング化するなど、事業を効率的に進めるための発展的な理由から、早期退職者を募集するようです。将来を見越して、事業を整理するための『早期退職制度』導入は、増えるだろうといわれています」
企業側が募集をかける「早期退職制度(早期退職優遇制度)」は、「早期希望退職制度」「希望退職制度」とも呼ばれるもの。大沼さんの話も、この「早期退職制度」を指している。そしてもう1つ、人事制度として設けられている「選択定年制」という制度もある。この2つの違いは、どこにあるのだろう。
“会社都合退職”扱いの「早期退職制度」
「『早期退職制度』は、企業側の理由で募集する制度で、募集期間や人数が設定されます。早期退職者には定年まで働いた場合とほぼ同等の退職金が支払われたり、再就職の支援をしてもらえたりと、社員側のメリットが大きいんです」
これまで応募条件は「50歳以降」であることが多かったが、近年は「45歳以降」「40歳以降」と、年齢を下げて募集をかける企業も増えているという。
「優遇内容や応募条件は、企業によって異なります。募集人数に達しなければ、二度、三度と募集をかけることもありますが、回を重ねるごとに優遇内容が悪くなることがほとんど。早期退職を決断するなら、早めの方がいいでしょうね」
「早期退職制度」のメリットは、優遇に限ったことではない。この制度を利用した場合は、「会社都合退職」として扱われ、雇用保険において「特定受給資格者」に分類される。
「『特定受給資格者』になると、失業保険受け取りまでの待機期間がないため、すぐに受給できます。また、受給期間も長くなるので、ゆとりをもって再就職先を探したり、教育訓練を受けたりできるでしょう」
“自己都合退職”扱いの「選択定年制」
「『選択定年制』は、人事制度として常設されている制度です。こちらも『早期退職制度』と同様に、退職金割り増しなどの優遇があり、その内容は企業によって異なります。また、対象者の条件として、勤続年数や『45歳以降』『50歳以降』『55歳以降』など区切りのいい年齢が設定されています」
「選択定年制」を導入している企業では、就業規則に優遇内容や利用条件が明記されている。早期退職を検討している人は、チェックしてみよう。
「選択定年制」の場合は、「自己都合退職」になるため、失業保険を受け取るまでに一定の待機期間がある上に、受給期間も短くなる。ただし、企業によっては、社員の今後を考え、「会社都合退職」扱いにしてくれることもあるようだ。
「人を入れ替えて、社内の新陳代謝を図るため、『選択定年制』を活用してほしいと考えている企業もあります。現在とは別の仕事がやりたい人や、違う環境で新たなスキルを身につけたいと考えている人は、制度利用も1つの道だと思いますよ」
社員にとっては、メリットが多い早期退職。大沼さんの話す通り、第2の人生のビジョンが固まっている人は、優遇内容や条件を確認してみてはいかがだろうか。
(有竹亮介/verb)
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大沼恵美子
ファイナンシャルプランナー。All About「貯蓄」ガイド。農薬の危険性を追いかけていた主婦が、ある日「外貨預金」に惹かれ、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、2000年CFP(R)(FP上級資格)試験に合格。2002年から個人相談業務を開始し、企業や地方自治体、カルチャーセンターなどの各種セミナー、FP資格取得講座などの講師も務める。