リタイア後のマネー事情

「収入」「業績」「新しい仕事」現在と未来を比較すべし!

「早期退職制度」応募に踏み切る判断ポイントは?

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企業が経営不振や事業整理のため、社員に呼びかける「早期退職制度(早期退職優遇制度)」。早期退職者は、退職金割り増しなどの優遇を受けることができる制度で、募集人数はここ数年で増えているそう。

もし、勤めている企業が「早期退職制度」を導入したら、応募するべきだろうか? それとも企業の業績を信じ、定年まで勤め上げるべきか? 判断基準となるポイントを、All Aboutで「定年・退職のお金」ガイドを務めるファイナンシャルプランナー・大沼恵美子さんに教えてもらった。

退職パターンと在職パターンの「収入」を比較

「『早期退職制度』には退職金の割り増しや再就職の支援などの優遇があり、その内容は企業によって異なります。応募条件は、これまで『50歳以降の社員』が一般的でしたが、最近は『45歳以降』『40歳以降』と年齢が下がり、制度を利用できる範囲が広がってきています」(大沼さん・以下同)

定年まで10年以上あるタイミングで、退職を決断することもできるわけだ。年齢が低ければ、その分再就職もしやすくなるだろう。

「ただ、『早期退職制度』を導入する企業のほとんどは大手で、中小企業と比べると安定感があるため、退職する決心がつかない人がほとんどでしょう。40代、50代で子どもがいる方であれば、特に教育費がかかるタイミングであることも多いので、なおさら悩みどころ。そこで、まず考えるべきは金銭面です」

例えば、45歳で早期退職した場合の失業保険や再就職後の収入と、このまま65歳まで勤めた場合の収入を比較する。早期退職後に収入がダウンしないようであれば、「早期退職制度」に応募してもいいだろう。

「再就職後の収入がダウンしたとしても、退職金の割り増し分でカバーできるようであれば、早期退職もありです。ただし、退職金そのものは、老後の生活費として備えておきたいので、ないものとして考えた方が賢明です」

勤めている企業の「業績」を冷静に分析

「もう1つのポイントは、勤める企業の業績です。『早期退職制度』を導入する企業の多くは、経営不振に陥っています。留まったとしても、現在の給与がそのまま維持される保証はないので、企業が再建できるかどうか、冷静に判断する必要があります」

業績そのものも大切だが、現在担っている業務が今後も残っていくか、という視点も重要だという。事業縮小で所属している部署がなくなる、AI導入によって担当業務が取って代わられるといった懸念点があれば、退職を考えてもいいだろう。

「過去には、早期退職者の募集を4~5回繰り返した挙句、倒産してしまった企業もあります。『早期退職制度』は、回を重ねるごとに優遇内容が悪くなることがほとんどなので、応募するなら早めの決断が重要になります」

「スキル取得」「人脈作り」で再就職をスムーズに

早めの決断をするために重要になってくるポイントは、「自分自身の“売り”を作ること」と、大沼さんは話す。

「技術を持っていれば再就職しやすいので、在職中に教育訓練を受けて、スキルを身につけておけるとベストです。もちろん、退職後に失業保険を受け取りながら教育を受けても、遅くはないでしょう」

スキルを磨くことと同様に、“人脈作り”も将来のための重要なステップだ。再就職先を紹介してくれる人や、「一緒に働かないか」と声をかけてくれる人がいれば、退職後の収入に関する不安も軽減する。在職中にネットワークを広げておけば、いざ「早期退職制度」が導入された場合に、いち早く反応できるだろう。

早期退職は「新しい仕事」に挑むチャンス

「将来の目標や夢、やってみたい仕事などが明確になっていれば、早期退職がチャレンジのきっかけになるでしょう。今は働き方が多様化していて、スキルさえあれば自営業でも収入を得られるでしょうし、数人で起業するという選択肢もあります。再就職をして働きながら、副業するのもいいですよね」

「早期退職制度」の条件が40代まで引き下げられている今、気力も体力もあるうちに、新しい仕事に着手しやすくなっているといえる。それに、定年退職年齢が引き上げられてきているので、40代はまだまだ折り返し地点。現在の仕事に物足りなさを感じるようであれば、自分の適性を見直し、生かせるスキルや職種を探してみるといいかもしれない。

そして、もし「早期退職制度」が導入されたら、将来の収入や会社の業績、現在の仕事、自分のスキルを見直そう。退職が有利だと判断したら、応募はお早めに。
(有竹亮介/verb)

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