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Life on LINEの実現に向けて……

「LINE証券」が目指す、投資の“スマホ最適化”

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コミュニケーションアプリ「LINE」の中に、株式取引の新サービスが登場している。「LINE」のウォレット画面に加わった「LINE証券」である。

東証に上場している日本の有名企業200社と、東証上場ETF15種類、計215銘柄について、「LINE」上で取引できる。最大の特徴は、企業の株およびETFを1株/1口単位で、最低数百円から購入できること。さらに、「LINE」のウォレット画面から購入まで合計6タップで済む簡単さに加え、証券業界では初めて、口座開設時に郵送受取による本人確認手続きがいらない形式をとるなど、スマホに最適化されたオンライン証券を確立している。


運営するのは、LINE Financialと野村ホールディングスの合弁会社・LINE証券。異業種の雄同士がタッグを組んで生まれたサービスには、どんな工夫が込められているのだろうか。同社 代表取締役Co-CEOの落合紀貴氏と米永吉和氏に聞いた。

価格表示に込めた、小さくも意味のある工夫

通常、東証に上場している株式を取引する際は、売買する単位が決められている。上場会社は100株(ETFなど一部例外除く)を1単元として売買されているが、LINE証券ではすべて1株から購入可能。そのため、200銘柄のうち「およそ半分以上は3,000円以下で買える」(米永氏)という。

では、どうやって1株から買えるようにしているのだろうか。米永氏が仕組みを説明する。


「200銘柄の株をいったん1単元以上LINE証券が保有し、お客さまに1株単位で販売しています。1株から購入できる証券サービスは他にもありますが、取引が決まる『約定』のタイミングが1日数回と限られているケースも多い。LINE証券では自社で在庫を保有し、ユーザーへ提供するため、平日21時まではリアルタイムで注文・約定が行えます」

さらに、取引価格の表示にもひそかな工夫が込められている。通常、株式を取引する場合、『板』と呼ばれる値段ごとの売買の注文状況を示した情報を見ながら、注文を出す。

「中上級者だと『板』を見ながら取引したくなりますが、未経験者・初心者には『板』がまず分かりづらい。板の厚み、成行注文・指値注文など知らなければいけない情報が多すぎて二の足を踏んでしまいます。なので、LINE証券では、あえて『板』を表示せず、注文・約定の段階で価格を約5秒間固定し、シンプルな価格表示にしています。ただし、実際には価格が動いているので、その分の価格変動リスクを取引コスト(スプレッド)として頂いています」(米永氏)

実は、この際の価格表示に工夫がある。大抵、こういったコストや手数料は、銘柄の価格とは別に表示される。しかしこのサービスでは、最初からコストを含めた金額を価格として提示。表示価格がそのまま“トータル”の購入額となるので、分かりやすい設計になっている。


「LINEグループは、さまざまな分野のサービスをいかにスマホで簡単に使いやすくするか、その『スマホ最適化』に力を入れてきました。証券は新たな分野ですが、LINEに携わってきたUI /UXのデザイナーを中心に開発。金融リテラシーが高くない人が『最初に使うならこのくらいの情報量がいいのでは』と、あえて知らない人の感性を大切にしてきました。ただし、絶対に必要な情報や外せない項目はあるので、そこは野村ホールディングスの知見を活用するなど、両社の力を合わせています」(落合氏)


LINEは、朝起きてから寝るまで1日の生活すべてをLINEがサポートする「Life on LINE」を掲げている。LINE証券もその中で生まれ、スマホ最適化にこだわったサービスの1つと言える。

証券業界で初めて導入したeKYC方式

開発者がこだわった細かな工夫はまだまだある。前述した板の他にも、通常の株取引で見られる「ロウソク足チャート」や「歩み値」といった細かな情報はカットし、シンプルな構成にした。LINE証券のユーザーの多くは、株取引の経験がないと想定。「専門的な情報が多すぎると、またいではいけない敷居と思って敬遠してしまうかもしれない」と落合氏は言う。


銘柄検索の画面でも、「3,000円以下で買える」というカテゴリを設けた。野村ホールディングス出身の米永氏は「金融業界の人間としては、今まで株価でカテゴリを区切るイメージはなかった」という。しかし、ローンチ前の調査で「3,000円以下で株を買える」ことへの反応が良く、このような形にしたという。


ETFについても、商品の名前だけではどんな内容か分かりにくいが、「東証一部にまるごと投資(TOPIX上場ETF)」「米国IT・ハイテク銘柄に投資(ナスダック100ETF)」など、理解につながる一文を入れている。

ちなみに、8月のローンチ時は109銘柄の取り扱いだったが、10月のアップデートで215銘柄に増加。利用者の反応を見て、数百円単位の銘柄をより多くしたという。

さらに特筆したいのが、このアップデートで取り入れた“証券業界初(※)”の取り組みだ。

「従来、証券口座を開設する際は、郵便受取による本人確認を行う必要がありました。それを今回、オンライン上ですべて完結する形に。スマートフォンで本人確認書類と顔画像を撮影すれば手続きが終わります。これまで最短でも4営業日ほどかかっていたプロセスが、最短翌営業日に短縮されました」(米永氏)


昨年11月末の法改正を機に、口座開設などにおける本人確認を電子的に行うeKYC(electronic Know Your Customer)という方式が普及し始めている。LINE証券もこれを導入。今回、証券業界で初めて取り入れた。

※2018年11月30日付けにて施行された犯収法施行規則の改正案に基づく、オンラインで本人確認を完結するeKYC「顔・写真付き本人確認書類の画像情報の送信を受ける方法」(改正規則6条1項1号ホ)に対応し、証券口座開設の本人確認が完了する証券会社としては、証券業界初となる。(LINE証券調べ:2019年10月2日時点)

まさに「スマホ最適化」を着々と進めるLINE証券。投資の分野にどれだけの変革を起こすのか、引き続き注目していきたい。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2019年10月現在の情報です

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