シニア世代のマネー事情

退職金&年金だけでカバーできる…?

“おひとりさま老後”に必要な資金を算出してみた

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金融庁の報告書に記載されていた「老後資金2000万円不足問題」をはじめ、世の中の老後に関するデータは、夫婦ふたり暮らしを前提として語られることが多い。しかし、生涯未婚率が上がっている今、老後に配偶者がいるとは限らない。

では、“おひとりさま”で老後を迎えた場合、生活資金はどのくらい用意しておけば安心だろうか。ファイナンシャルプランナーの大沼恵美子さんに教えてもらった。

おひとりさま老後に必要な資金は4000万~6000万円

「老後資金を計算する上で重要なものは、『平均余命』です。余命とは、ある年齢の人があと何年生きることができるかを算出したもの。例えば、65歳の平均余命は、現在65歳の人が以後生きる年数の平均です。0歳の平均余命だと、定年を迎える前に亡くなった方も含めて計算した数値となり、短く算出されてしまうため、老後の予測に使うにはあまり相応しくありません」(大沼さん・以下同)

■0歳の平均余命(厚生労働省「平成30年簡易生命表」より)
男性 81.25年(推定される寿命は81歳)
女性 87.32年(推定される寿命は87歳)

■65歳の平均余命(厚生労働省「平成30年簡易生命表」より)
男性 19.70年(推定される寿命は85歳)
女性 24.50年(推定される寿命は90歳)

「ただ、平均余命はあくまで半数の人が亡くなるタイミングを指すので、残りの半数はその年数以上に生きるわけです。仮に4分の3が亡くなるタイミングを計算すると、男女ともにさらに5年先になるといわれています。男性は90歳、女性は95歳まで生きる可能性も、決して低くはないのです」

今回は、65歳の余命をもとに、老後にかかる生活費を導き出してみよう。

「総務省の『家計調査報告(家計収支編)平成30年(2018年)平均結果の概況』によると、65歳以上の高齢者単身無職世帯のひと月の消費支出は14万9685円、直接税や社会保険税などの非消費支出は1万2342円なので、合計16万2000円程度です。これを余命と掛け合わせてみましょう」

■65歳の平均余命まで生きた場合にかかる生活資金
男性(85歳まで) 約3888万円
女性(90歳まで) 約4860万円

■現在65歳の4分の3が亡くなるタイミングまで生きた場合にかかる生活資金
男性(90歳まで) 約4860万円
女性(95歳まで) 約5832万円

「この金額は、一般的な水準の生活を維持するレベルです。旅行に行きたい、高齢者施設に入りたいと考えると、さらに2000万円くらいは上乗せして考えた方がいいでしょう」

女性は老後資金が2000万円不足!?

ただし、何千万円もの老後資金のすべてを、準備しておかなければいけないわけではない。

「まずは、退職金や年金でまかなえる額を知りましょう。日本経済団体連合会の『2018年9月度 退職金・年金に関する実態調査』によると、60歳で退職した人の退職金の平均額は約2256万円。ただし、これは男女含めた平均額で、女性の方が少ないという現実があります。女性は、平均より500万円程度少ないと考えた方がいいでしょう」

厚生労働省の「平成29年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、65歳以上男性の年金の平均月額は17万4535円、年額で約209万円。65歳以上女性の平均月額は10万8776円、年額で約131万円。

支出と所得を掛け合わせると、以下のようになる。

■65歳の平均余命まで生きた場合にかかる資金(※生活資金に2000万円を上乗せ)
男性の場合
5888万円-退職金2256万円-年金209万円×20年=-548万円
女性の場合
6860万円-退職金1756万円-年金131万円×25年=1829万円

■現在65歳の4分の3が亡くなるタイミングまで生きた場合にかかる資金(※生活資金に2000万円を上乗せ)
男性の場合
6860万円-退職金2256万円-年金209万円×25年=-621万円
女性の場合
7832万円-退職金1756万円-年金131万円×30年=2146万円

「新卒から会社員を続けてきた男性であれば、老後資金を備えなくても、退職金と年金でまかなえる可能性が高いといえます。一方、女性は新卒から会社員を続けていたとしても、2000万円前後足りない恐れがあります。しかし、一般的な水準の生活レベルを保てる程度で問題なければ、退職金と年金でもカバーできるでしょう」

大沼さんは「退職金や年金以外にも、生活費の足しになる制度はある」と、教えてくれた。

「『企業年金』は侮れないので、勤めている会社が制度を導入しているか、確認してみましょう。中には、退職金と同等程度の額が支給される会社もあるので、老後の大きな支えになるでしょう」

45歳からでも「積み立て」でカバーできる可能性大

例えば45歳から、老後に向けて2000万円備えることを考えると、45歳から60歳の15年間は毎月8万円、60歳から65歳の5年間は毎月4万円積み立てていくと、1680万円貯まる。

「子どものいないおひとりさまであれば、子どもの教育費はかかりませんし、大きな住宅ローンを組むこともないでしょうから、捻出できない額ではないと思います。iDeCoやつみたてNISAなどを併用すれば、2000万円も不可能ではないでしょう」

男性も、退職金と年金でまかなえるからといって、油断は禁物とのこと。

「男性のおひとりさまは、外食や飲み会が多くなり、生活費が膨らみがちです。お酒の量が増えて、体を壊し、医療費がかさむことも考えられるので、注意しましょう」

計算上は、なんとかなりそうなおひとりさまの老後資金。だからといって油断はできない。現在の生活費や老後の生活プラン、支給予定の年金額などを把握して、自分に当てはめて計算をしておいた方がいいだろう。
(有竹亮介/verb)

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