シニア世代のマネー事情

まずは、親に財産の在り処を書き出してもらうところから

高齢の親が生きているうちに子どもがやっておくべきことは?

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親が高齢になれば、いずれは親の通院の補助や介護、亡くなった後の財産分与など、子どもとしてやらなければならないことがたくさんある。いざという時に困らないよう、親の生前にやっておくべきことはあるだろうか。

ファイナンシャルプランナーの大沼恵美子さんに、金銭面において、事前にやっておいた方がいいことを教えてもらった。

財産の在り処を「リスト」にしてまとめる

「親の死後、財産の在り処がわからないと、相続の手続きが行えません。親が使っている銀行や証券会社、キャッシュカードの暗証番号を、エンディングノートなどにリスト化しておくと安心です」(大沼さん・以下同)

■リスト化しておくといいもの
・利用している銀行、証券会社(ネット銀行、ネット証券含む)
・銀行、証券会社の口座番号
・キャッシュカードの暗証番号
・印鑑の保管場所
・不動産の権利書の保管場所
・契約している保険、保険証券番号、保険金の受取人
・クレジットカードの番号

「生きている間にまとめることを嫌がる方もいると思いますが、『一覧にしておくと、いざという時にわかりやすいよ』などのメリットを伝えて、書いてもらいましょう。ネット銀行やネット証券を使っている場合は、通帳などの現物の手掛かりがないので、まとめておかないと後々大変です」

「リスト化することで、保険の見直しにもなる」と、大沼さんは話す。複数の保険に契約していたが、同様の保障内容があることに気づき、不要な保険を解約。生活費や医療費の足しにできたというケースもあるようだ。

「まとめたエンディングノートの保管は、銀行の貸金庫がおすすめです。例えば、親名義で貸金庫を借り、親だけでなく子どもも開けられるように契約するなど、家族全員の目が届くようにしておけば、誰か1人が管理するよりも安心ですよね。普段は使わない口座の通帳やキャッシュカード、不動産の権利書なども一緒に入れておけば、相続の時にもまとめて取り出せて、便利です」

親の現在の収入も、把握しておくべきなのだとか。

「年金や給与でどれだけの収入があるかわかっていないと、高齢者施設などに入る際に、親自身が負担できる費用の範囲がわかりません。生命保険の保険金なども、あらかじめ確認しておきたいところです」

親に代わって保険金や財産を管理できる「制度」を利用

親が健康なうちに、利用を検討するべき制度もあるという。その1つが、生命保険の「指定代理請求制度」。

「『指定代理請求制度』は、被保険者である親が病気やケガで、保険金を請求する意思表示ができない場合に、あらかじめ指定された代理人が保険金を請求できる制度です。例えば、入院給付金や手術給付金、介護保険金などが請求できます」

保険会社によって、指定代理請求人になれる範囲は異なるが、「被保険者の戸籍上の配偶者」「生計を一にしている被保険者の3親等内の親族」などが認められるケースが多いようだ。

「もう1つは、『家族信託』。親が認知症などになり、自分で物事の判断ができなくなった場合に備えて、親の財産の管理や処分を指定した家族に委ねる仕組みです。親の治療代がまかなえない、親が施設に入って自宅が不要になったため売りたいという場合に、銀行口座からお金を引き出したり自宅を売却したりできます。似たような制度の『後見制度支援信託』を利用してもいいと思います」

親が認知症であることを金融機関が認定すると、家族ですら資産が引き出せなくなってしまう。そうならないためにも、「家族信託」や「後見制度支援信託」の利用は検討した方がいいだろう。

新制度を活用して「自筆証書遺言」を残す

「相続のため、遺言書を書いてもらうことも大切です。2020年7月10日から、法務局で自筆証書遺言を保管してもらえる制度が始まります。預ける際に、法律上の要件を満たしているか確認してもらえるので、遺言書が無効になる心配がなくなります」

証人が不要で、書き換えが簡単な自筆証書遺言は、紛失・改ざんされやすいといった問題がある。しかし、法務局に預かってもらえれば、その問題は解消されるというわけだ。

法務局では原本を物理的に預かるだけでなく、遺言書を画像データにして保管するため、自分が相続人になっている遺言書は、どこの法務局でも確認できるようになるそう。また、1人が遺言書を閲覧すると、すべての相続人に対して遺言書が保管されている旨が通知される仕組みもあるという。

「家族間のトラブルを防ぐ意味でも、遺言書は大切ですし、安心な制度は積極的に活用するべきだと思います。一度、親や兄弟と話す機会が設けられるといいですね」

必ず訪れる親の遺産の相続。財産の内容があいまいなままだと、親の死後に自分や兄弟が困ることになる。まずは、親に「まとめておかない?」と提案することから始めてみよう。

(有竹亮介/verb)

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