リタイア後のマネー事情

「年収」「勤めていた会社」によって保険の種類が変化

定年退職後の「健康保険」はどうやって選ぶ?

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“国民皆保険”の日本では、定年退職を迎え、会社員時代に加入していた健康保険から外れても、何かしらの公的医療保険に加入しなければならない。

定年後に加入できる公的医療保険は、以下の4種類が考えられる。

(1)家族の健康保険
(2)特例退職被保険者制度
(3)健康保険任意継続制度
(4)国民健康保険

ファイナンシャルプランナーの大沼恵美子さんに、それぞれの加入条件や制度内容について、聞いた。

年収180万円未満であれば「家族の健康保険」の扶養に

「『家族の健康保険』とは、本人が加入するわけではなく、会社員である配偶者や子どもなどの家族が加入している健康保険の扶養に入るという道です。ただし、4種類の中でもっとも加入が難しいといえます」(大沼さん・以下同)

家族の健康保険の被扶養者になれる条件は、60歳以上の場合は年収180万円未満。定年を迎えて退職していれば収入はゼロだと思ってしまうが、年金も年収に含まれる。

厚生労働省の「平成29年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、65歳以上男性の年金の平均月額は17万4535円。65歳以上女性の平均月額は10万8776円。

「年額に換算すると、男性は200万円を超えます。新卒から会社員を続けてきた男性は、平均額に達する可能性が高いので、扶養に入れない人が多いと思います。女性の年額は130万円程度となるため、扶養に入れる可能性は高いといえます」

条件は厳しいが、扶養に入ることができれば保険料を支払う必要はなく、健康保険の恩恵が受けられる。例えば、1カ月の医療費が2~3万円程度を超えた場合に返金する健康保険組合がある。医療費が抑えられるメリットもありそうだ。

会社員時代と変化なし「特例退職被保険者制度」

「特例退職被保険者制度」とは、老齢厚生年金の受給権者で健康保険組合に20年以上(健康保険組合によって期間は異なる)加入していた人が退職し、後期高齢者医療制度に加入するまでの間、会社員時代と同じ健康保険に加入できる制度。

「『特例退職被保険者制度』は、勤めていた会社が導入していれば、加入できます。ただし、導入事例は少なく、2012年度末の調査では61組合だけ。利用できる方は、ラッキーです」

保険料は、会社員時代の収入額によって決まるが、「国民健康保険」と比べれば低く抑えられるという。また、「人間ドック受診無料」「常備薬を無料配布」など、健康保険組合が独自に行っているサービスを、退職後も変わらずに受けられるというメリットもある。

「加入手続きは、退職後3カ月以内に行う必要があるので、制度を利用できる人は忘れないようにしましょう」

最長2年の期限付き「健康保険任意継続制度」

「『健康保険任意継続制度』は、退職した翌日から最長2年間、勤めていた会社の健康保険に継続加入できる制度です。加入している間は、会社員時代と同じ保障やサービスを、健康保険組合から受けることができます」

加入条件は、「健康保険の被保険者期間が継続して2カ月以上あること」「退職日の翌日から20日以内に申請手続きすること」と、それほど厳しくはない。

「会社員時代は会社と折半していた保険料が、100%自己負担になるという注意点があります。『退職時の報酬月額』または『健康保険組合の全被保険者の平均標準報酬月額』のどちらか低い方に保険料率をかけて算定され、保険料は原則2年間同じです」

全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、都道府県によって料率が異なる。平成31年4月以降の標準報酬月額30万円の人の場合、東京都の保険料は月額3万4890円。

「会社員時代と比べると保険料は高くなるかもしれませんが、健康保険組合が提供するサービスを受けられるところは、大きなメリットといえるでしょう」

自治体によって保険料率が変わる「国民健康保険」

「前述の3つに加入できない場合は、『国民健康保険』に加入することになります。各市町村と都道府県が共同で運営する制度です」

「国民健康保険」で注意するべき点は、前年の1月から12月にかけての所得が、保険料を算出する基準になること。つまり、退職後1年目の保険料は、退職年の年収が基準となるため、高額になる可能性が高いのだ。

「保険料は、自治体によって計算式や料率が異なります。夫の前年の給与所得が346万円、妻は専業主婦、固定資産税10万円の63歳夫婦と仮定した場合の国民健康保険料は、東京都練馬区で年額約48万円、千葉市で約46万円、福岡市で約53万円です」

練馬区の保険料額を12カ月で割ると、月額約4万円。「健康保険任意継続制度」と比べると、やや高い印象だ。ただし、前年の所得に影響するため、退職後2年目の保険料は低くなる可能性が高い。

「『国民健康保険』によって、医療費は3割以下の負担で済みますが、会社員時代に受けられた『人間ドック受診無償』などのサービスは受けられません。『特例退職被保険者制度』『健康保険任意継続制度』に加入できるのであれば、優先的に検討しましょう」

退職後の保険料や保障サービスを把握するためにも、定年を迎える前に、受給予定の年金額と勤めている会社の制度は、確認しておいた方がよさそうだ。

(有竹亮介/verb)

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