年金額の上昇率が抑えられるって本当!?

年金関連のニュースでよく出てくる「マクロ経済スライド」ってなに?

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年金に関する報道でよく耳にする「マクロ経済スライド」とは、一体どのような仕組みなのだろうか。将来の年金額に影響するとしたら、現役世代はその内容を知っておくべきだろう。

そこで、老後資金形成に詳しいファイナンシャルプランナー・福嶋淳裕さんに、「マクロ経済スライド」の内容と仕組みについて、教えてもらった。

「マクロ経済スライド」は将来世代のために年金の給付水準を調整する仕組み

「『マクロ経済スライド』は、2004年に年金制度の大幅な改革が行われた際に、導入された仕組みの一つ。健全な財政状態の年金制度を、長期にわたって維持できるようになることを目指すものです」(福嶋さん・以下同)

本来、賃金や物価が上昇すれば、年金額も連動して上昇する。しかし、「マクロ経済スライド」により、一定の間、賃金や物価が上昇しても年金額の上昇は抑制されることとなった。

「“日本経済の成長から生み出される果実を、すべて年金に反映するのではなく、将来世代の過重な負担の防止や給付水準の確保にその一部を充当する”という考え方に基づいて生まれた仕組みなのです」

つまり、少子高齢化によって見込まれる現役世代の負担が過度に重くならないよう、給付額を抑え、保険料の一部を積み立てて将来に備えるというわけだ。

「おおむね100年後に必要な額の積立金を保有しつつ、その100年間にわたって財政の均衡を保つことができる」と国が判断するまでは、年金額の上昇を調整することで、年金財政の緩やかな改善を目指していくという。

福嶋さんは、「年金額が抑えられる一方で、保険料は現在の水準に留まるだろう」と話す。

「厚生年金保険料の料率は、2004年9月までの13.58%から徐々に引き上げられ、2017年に法定上限の18.3%に達しました。今後、保険料率の引き上げによる負担の増加はないと考えていいでしょう」

年金額改定率は「公的年金被保険者数」「平均余命」で決まる!?

「マクロ経済スライド」では、どのように年金額を調整するのだろうか。常に年金額から一定額を差し引いていくという、単純な仕組みではなさそうだが。

「本来は賃金や物価の変動に連動して、年金額の改定率が決まります。『マクロ経済スライド』による調整期間中は、賃金と物価の変動がプラスになる場合に、本来の改定率からスライド調整率を差し引いて改定します。スライド調整率とは、公的年金被保険者の減少と平均余命の伸びに基づいて設定されるものです」

例として、年金額が昨年度から0.1%のプラスとなった2019年度の改定を見てみよう。

【厚生労働省 報道発表資料「平成31年度の年金額改定について」より抜粋】
年金額の改定は、物価変動率、名目手取り賃金変動率がともにプラスで、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合には、年金を受給し始める際の年金額(新規裁定年金)、受給中の年金額(既裁定年金)ともに名目手取り賃金変動率を用いることが法律により定められています。

平成31年度の年金額の改定は、年金額改定に用いる物価変動率(1.0%)が名目手取り賃金変動率(0.6%)よりも高いため、新規裁定年金・既裁定年金ともに名目手取り賃金変動率(0.6%)を用います。

さらに平成31年度は、名目手取り賃金変動率(0.6%)にマクロ経済スライドによる平成31年度のスライド調整率(▲0.2%)と平成30年度に繰り越されたマクロ経済スライドの未調整分(▲0.3%)が乗じられることになり、改定率は0.1%となります。(抜粋ここまで)

「年金額改定のルールでは、物価上昇率>賃金上昇率の場合、新たに年金を受け取り始める人の年金(新規裁定年金)も、すでに受け取り中の人の年金(既裁定年金)も、賃金上昇率を用いて改定します。2019年度の場合は、賃金上昇率0.6%がそのまま改定率となり、年金額は昨年度より0.6%増加するはずでした」

しかし、ここに「マクロ経済スライド」が影響してくるのだ。まずは本来の改定率0.6%からスライド調整率0.2%が差し引かれ、改定率は0.4%となる。

さらに2019年度は、これまで前年度よりも年金額を下げないことを優先してきた結果、調整しきれずに翌年度以降に繰り越された未調整分0.3%も差し引かれ、改定率は0.1%となったのだ。

「スライド調整率は、『公的年金被保険者数の減少率(直近の3年平均)』と『平均余命の伸びを勘案した一定率(固定で0.3%)』から算定されるため、被保険者数によって変動します。一律で決まっているわけではないのです」

今後いつまで続くか、明確には示されていない「マクロ経済スライド」。年金はなくなることはないにせよ、今後、額が大きく上昇することも期待できないかもしれない。自身で将来に向けて備えておいた方が賢明だろう。
(有竹亮介/verb)

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