リタイア後のマネー事情

長年のノウハウやスキルが活かせる「シニア派遣」

50代60代の「熟戦力」が重宝される事例とは?

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人生100年時代における50代・60代は、まだまだ現役世代。しかし、活躍の場を見出せず、高いスキルを持て余している人も多そうだ。そうした中、最近は企業OBや中高年のホワイトカラーを“スペシャリスト”として、企業に派遣するサービスが活況を呈している。

長年のキャリアやスキルを備えたシニアだからこそできる仕事とは?「シニア・プロフェッショナル派遣」を手掛けるリクルートスタッフィングに訊く。

伸び率180%のシニア派遣サービス、その背景にあるものとは?

豊富な実務経験や高度な専門性を持つ50代・60代。そんな、「シニア・プロフェッショナル」における人材派遣サービスを展開しているリクルートスタッフィング。登録するシニアは、自身の経験やノウハウを活用して社会貢献をしたい、家族との時間や趣味などライフスタイルを重視しながら社会とつながりを持ちたいなど、さまざまな背景があるという。

こうしたサービスが誕生した背景には、社会の変化があるようだ。

「リクルートスタッフィングは『”らしさ”の数だけ働き方のある社会』というビジョンを掲げ、育児や介護などで制約をお持ちの方や、障がい者、外国人など、多様な働き方を推進しています。その一環として、2014年頃から本格的にシニア派遣の取り組みをはじめました。

日本では人手不足と少子高齢化が深刻になりつつあり、弊社としても企業の持続的な事業価値の向上に寄与していきたいという思いがあります。そこで、シニアの方々に対しては『幅広く働く選択肢』の提供を、企業側には『シニアの方々が培ってきた高いスキル』を活用してもらい、事業価値の向上につなげていきたいという考えから誕生しました」(リクルートスタッフィング担当者、以下同)

実際の就業者数や企業からの依頼は、サービスのローンチ以降、これまでに170~180%の推移で伸びているという。派遣登録者で多いのは60代で、法務や経理、財務、人事などのプロフェッショナル人材や、海外赴任経験が豊富な人材も登録しているのだそう。

「若手人材が不足しているからという消極的な理由だけでなく、シニアが長年培ってきた専門スキルはもちろんのこと、異業種でも活躍できる、いわゆる“ポータブルスキル”を身につけているところが評価されています」

【実例紹介】自分らしく働くシニアの実態を知る

では、具体的にどのようなシニアが活躍しているのだろう。

Aさん(63歳)
▼現役時代の仕事内容
電機メーカーでの開発、営業、海外法人立ち上げ等

▼定年後の仕事内容
海外展開相談窓口

▼定年後も働こうと思った理由
「再雇用先や元クライアント先で働く定年した先輩の姿を見ていて、かつての部下との距離の持ち方が難しいと感じ、『自分は定年したら違うことをしよう』とずっと思っていました。現役時代の仕事の経験から、海外進出する中小企業にアドバイスすることが生きがいだし、使命だと感じていました。でも、50代は責任のある仕事をしていて、したいことができませんでした。なので、60代からはプライベートも大切にしながら、仕事ができたらいいなと思いました」

▼「派遣」という雇用形態を選択した理由
「現役時代は、日本と時差がある海外で仕事をしていたので、24時間頭のどこかで仕事のことを考えていました。仕事が好きで、お客様のためにと思って働きすぎてしまうため、顧問となってコンサルティングをすると労働時間を顧みず働いてしまうのではないかと思ったんです。そのため、時間を区切って働くことのできる派遣という働き方を選択しました。オフィスの中でしかPCが使えない、17時には仕事を終わらせないといけないというメリハリのある働き方がいいなと。コンサルタントとして働いた方が今の仕事より収入は良い可能性もありますが、居心地も良く仕事内容の満足度が高い今の仕事が良いと思いました」

Yさん(64歳)
▼現役時代の仕事内容
金融機関での融資、営業。人事等 海外経験も8年程度あり

▼定年後の仕事内容
大学でのキャリアカウンセラー

▼定年後も働こうと思った理由
「60歳で完全隠居は早いと思っており、完全に仕事を辞める発想はありませんでした。次の仕事をどうしようかと考えた時に、今後の働き方は趣味や家族との生活を犠牲にすることなく、両立できるような働き方をしたいと考えました。私は金融機関でキャリアを積んできましたが、社会や人に直接貢献するという実感を持ちにくく、ずっとどこか物足りなさを感じていました。『このまま人生終わっていいのか、何も影響を残していない人生なのではないか』と感じ、最後は、自分自身が本当に満足できる仕事がしたいと思ったんです」

▼「派遣」という雇用形態を選択した理由
「現役の時に派遣先の立場で人材派遣を依頼した経験もあり、派遣という働き方が身近でした。万が一、派遣先が合わないときも、派遣会社に相談できます。また、登録すればメールで仕事案内がくるので仕事探しの負担が少なく、他の探し方に比べて案件の内容が幅広いと感じました。独立すると大変なことも多いですが、派遣であれば自分のしたいことを選択できるし、これまでのキャリアや経験から信頼もされて、指揮命令はあるものの仕事の中身に関しては、ある程度自分で動かしていくことができます。趣味や家庭と仕事の両立というわがままな働き方でも仕事を見つけられるのではないかと感じました」

シニア派遣の拡大には企業のマインドチェンジも必要

こうした事例からも、シニア世代にとって派遣という選択肢は理にかなっていることが窺える。とはいえ、こんな課題も。

「シニアの方に限ったことではないのですが、企業の固定観念や漠然とした不安という壁があり、受け入れにつながりにくいケースがあります。たとえば、週3日勤務のケースであれば、『週5日フルタイムでないと困る』というような漠然とした不安や固定観念がある企業では、高いスキルを持っていても受け入れが難しいこともあります。しかし、『優秀な人材を獲得できるのであればフルタイムにこだわらない』というマインドチェンジができる企業は、時短のハイスキル人材を取り入れて本当に良かったと、追加で数名の派遣スタッフの就業につながったことも。シニアが持つスキルを活かすにも、優秀な人材であれば年齢は問わないというような、企業側のマインドチェンジが必要でしょう」

今後、日本の少子高齢化や労働力人口不足はますます深刻化していく。そうした背景もあり、スキルを身につけたシニアのプレゼンスは高まりをみせている模様。50代60代になっても「らしく」働ける力を身につけることができたら、充実した老後生活を送れるだろう。

(末吉陽子/やじろべえ)

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