ミレニアル世代の共働き夫婦に向けて……
お金のシェアとプライバシーを両立。夫婦のお金管理・貯金アプリ「OsidOri」
「専業主婦」が一般的だったのは今や昔。近年は「共働き夫婦」が増えており、ある調査では全夫婦の3分の2以上が共働きだという(※)。では、そんな共働き夫婦は家族のお金をどう管理しているのか。おおむね、以下の3つのどれかに当てはまるはずだ。
※労働政策研究・研修機構「専業主婦世帯と共働き世帯」より
1.夫婦の収入を合算し、どちらか片方が管理。一定のお小遣いを相手に渡す
2.共通口座にお金を入れ合い、家族の支出はそこから出す
3.家賃は夫、食費は妻など、費用ごとに担当する
1は、いわゆる“お小遣い制”。専業主婦がメインの時代は多数派だったが、共働きが増えた今、特に30代以下の「ミレニアル世代」では、2や3のように夫婦が一定の決めごとの中で負担し合う“分担制”が多いようだ。
そんな共働き夫婦のお金の管理・貯金アプリとして登場したのが「OsidOri(オシドリ)」。クレジットカードや銀行口座の履歴を自動反映する点は既存の家計簿サービスと変わらないが、最大の違いは「家族のお金」と「個人のお金」を1つのアプリで管理できること。そして、家族の管理画面は夫婦でシェアできるが、個人の管理画面は自分しか見られない。つまり、シェアとプライバシーを両立できる。
具体的にどんなサービスなのか。運営するOsidOri社の中山知則氏に伺った。
自分の自由なお金と家族のお金、両方を管理できる
同社の調査によると、ミレニアル世代の共働き夫婦のうち、およそ5〜6割は「分担制を選んでいる」と中山氏。そして、この分担制のカギは「共有とプライバシーの両立」だと考えている。
「分担制のメリットの1つは、自由に1人で使えるお金があることですよね。そしてその使い道は、たとえ夫婦でも把握されるのを好まない人が多い。今の共働き夫婦は、家族のお金のシェアは大事だけど、自分のお金のプライバシーも大事という考え方です」
サービスを開発する際、同社では大規模なリサーチを実施した。たとえば、想定するターゲット層へのデプスインタビュー(長時間にわたるヒアリング)も100人以上に行ったという。
その中には、こんな夫婦のエピソードもあった。ある人が個人用クレジットカードで家族の出費を払い、後でパートナーに請求することとなった。そこで、支払った証明にカード明細を見せたのだが、他の支出明細まで知られたくないので、必要な箇所以外は“黒塗り”にしたという。
中山氏は「お小遣い制が主流だった時代にも“へそくり”が存在したように、昔から自由なお金を持ちたいニーズは強かった」と指摘する。そんな夫婦の心情に配慮したアプリだ。
実際、OsidOriは自分1人のお金を管理する画面と、夫婦で見られる家族のお金の画面がある。たとえば共有口座を持つ“2”のタイプの夫婦なら、共有口座の出入金や、それに紐づいたクレジットカードの履歴を家族のお金の画面に集約して、夫婦で閲覧できる。
一方、共有口座がない夫婦の場合も、個人画面のクレジットカードの取引履歴などから、特定の項目を家族の画面に移動させることも可能。操作は「移したい項目をスワイプするだけ」で、この技術は特許を取得しているとのこと。
冒頭の“3”のように、「食費は妻」と担当が決まっているなら、食費に関する項目をスワイプして移せばいい。これにより夫婦間で簡単に共有ができるため、領収書をとっておき月末に見せ合うような手間もかからない。
大金が動く家族のお金だからこそ、2人で共有する
もう1つ、アプリの特徴となるのが「家族貯金」の機能だ。
「アプリ内で夫婦一緒に貯金できる機能です。家族旅行や住宅購入の頭金など、貯金の目標を設定し、2人で貯めていくプロセスを楽しめます。夫婦の家計管理と、資産形成のひとつである貯金は強くつながっているので、その両方をアプリ内で行えることは当初の構想からありました。老後2,000万円問題もありますが、その第一歩のアクションにしていただきたいですね」
家計管理に貯金。OsidOriは、プライベートを守りつつ、夫婦のお金を共有化・可視化している。その考えの裏には、やはり事前リサーチで見えた夫婦の悩みがある。
「アンケートを取ると、『もっとお金の話をしたい』と考えている夫婦は約7割にのぼりました。また、共有口座を持つ夫婦も、口座に入金さえしたら、後の管理はどちらかに任せっきりのケースもあります。家族のお金は大金が動くので、一人で管理するには不安も多い。なかなかできていない家族のお金の管理を2人で行い、まずは貯金から資産形成につなげてもらうのが私たちの最初の目標です」
さらに今後は、可視化したお金を分析し「このように貯金したほうがいい」「この支出を抑えたほうがいい」といった、提案機能を付加することも視野に入れる。
オシドリ夫婦のOsidOriと名付けられたサービスは、お金の不安を解消し、夫婦の笑顔を増やしていく。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)
※記事の内容は2019年12月現在の情報です