現地運用担当者、David Xu(許 之彦)氏が語る!変化を遂げる中国A株市場の現状
提供元:三菱UFJ国際投信
世界第2位の株式市場、3,700社以上が上場
現在の中国A株市場(中国国内の投資家および一部の海外投資家向けの人民元建市場)は米国市場に次ぐ市場規模となっており、時価総額は約7.8兆米ドル、世界の株式市場全体の12%ほどを占める巨大な市場だ。(2019年10月時点)
そこで、今回、中国現地の大手資産運用会社である华安基金(HuaAn Fund Management Co., Ltd.)でETF等の運用を担当するDavid Xu(許 之彦)氏に、中国A株市場の現況について聞いた。
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上海、深圳両証券取引所のA株市場に上場する企業数は、2000年頃は1,000社ほどであったが、2010年頃には約2,000社と10年間で倍増した。現在は3,700社以上が上場している(図1)。
時価総額ベースでみた上場企業のセクター構成比(CSI300指数(中国の代表的な株価指数。上海および深圳証券取引所に上場されている全A株のうち、時価総額および流動性の高い300銘柄で構成)のデータに基づく。)は図2の通りで、金融が全体の約35%を占めている。
2009年と比較すると、金融が30%以上を占めていることは同様だが、その他のセクターには大きな変化が見られる。生活必需品、一般消費財、情報技術、ヘルスケアが上昇する一方、素材、資本財、エネルギーなどは低下した。中国では経済発展に伴い産業構造が変化しており、消費やテクノロジー関連産業などが今後の経済成長の重要な牽引役として注目されている。
図1 中国A株市場の上場企業数
図2 CSI300構成銘柄(ウエイトベース)
内需の拡大などを背景に今後も堅調な経済成長が期待される
米中貿易摩擦および中国経済の先行きに対する不透明感の高まりなどを背景に、中国A株市場のパフォーマンスは2019年4月末以降、やや軟調な展開となっている(図3)。たしかに、貿易摩擦激化による輸出へのマイナス影響は中国経済にとって懸念事項ではあるが、現在の中国では消費主導型経済への転換が進行中である。
現在の中国の人口は約14億人、このうち中産階級の人口は4億人以上と試算されている。都市化の進展などを背景に中産階級の人口は今後も増加が見込まれており、消費市場の拡大を背景に中国経済は今後も堅調な経済成長が期待できるという。
図3 足元の中国株式市場の推移
中国企業の業績動向については、米中貿易摩擦の影響などから2019年度の利益成長鈍化は避けられないが、2020年度以降は消費市場の拡大や技術革新、中国政府が推進する様々な産業政策による市場創出や企業競争力の強化などを背景に、10%前後の利益成長が見込まれている(図4)。
現在の中国A株の株価指標は、貿易摩擦による先行き不透明感などから割安感が目立っているが(図5)、中国経済の潜在成長性や企業の利益成長期待を考えれば、現在の中国A株市場は投資魅力が高い市場のひとつと言えるのではないだろうか。
図4 中国A株の純利益増減率
図5 中国A株のPER(株価収益率)
中国A株市場の投資家内訳の推移
中国A株の投資家内訳を表したのが図6である。中国国内の一般法人54.1%、個人投資家27.3%、機関投資家14.9%、海外機関投資家3.7%となっているが、一般法人を除くと、個人投資家59.5%、国内機関投資家32.4%、海外機関投資家8.2%となる。
中国A株市場の価格変動が大きいのは、短期志向の個人投資家が株式売買の大半を占めているからだと言われている。だが過去と比較すると、個人投資家の比率が低下する一方、国内機関投資家と海外機関投資家の比率が上昇傾向にあることに気が付く(図7)。
中国では少子高齢化が今後急速に進むとみられる一方、社会保障制度の整備など解決すべき課題も少なくない。このような中、資産運用に対するニーズは上昇傾向にあり、年金基金の流入期待など国内機関投資家は今後の比率上昇が期待されている。
図6 中国A株市場の投資家内訳
図7 中国A株市場の投資家内訳(除く一般法人)
海外機関投資家については、MSCIをはじめ、FTSEなどその他の一部主要株式指数が中国A株の組入比率の段階的な引き上げを実施。これに伴いこれら指数をベンチマークとしている世界の機関投資家からの資金流入が続いている。
国内年金基金の資金流入や海外機関投資家の中国A株市場への資産配分増加による資金流入期待は高く、中国A株市場は今後、機関投資家が主導する方向へむかうとみられている。そうなれば中国A株市場の価格変動の大きさはやがて解消されてゆくだろう。
改革が進む中国A株市場
中国A株市場では、2015年に株価が大きく下落した局面で多くの銘柄が売買停止になり、一時は上場銘柄の半数近くが取引停止の状態となった。長期間にわたって売買できなくなった銘柄も存在し、海外の投資家からの批判が高まったことは記憶に新しい。
これに対して、中国の規制当局は取引停止理由である「重大な資産再編」に伴う取引停止期間の短縮化を進め、2016年には最大で3ヵ月に制限、2018年11月にはさらに短縮する方針を発表。株式の取引停止期間を短縮化することで高い市場流動性を維持するとしている。取引停止理由に関する情報開示の強化も発表され、情報開示強化により透明性の向上を目指している。
企業ガバナンスの強化については、中国資本市場における投資者構造の特徴に焦点をあて、持株会社の株主や実質支配者等に対する拘束力を強化し、中小投資家の保護により重点を置くものとした。また、上場企業に対して環境保護、社会的責任などの分野における責任強化を求め、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する情報開示を要求した点は興味深い。
このほかにも中国A株市場の管理監督機能を強化するための関連制度の整備強化など中国A株市場改革は現在進行中である。また、資本市場や企業ガバナンスに関連する一連の改革を通じて、透明性の向上、長期資金の流入拡大などを通じた市場効率の向上によりインデックス運用発展の条件が整いつつあるという。中国A株市場改革の今後の行方を見守りたい。
(語り手:华安基金 マネージングディレクター兼ポートフォリオマネジャー David Xu(許 之彦)氏)
(聞き手:三菱UFJ国際投信)
【本資料で使用している指数について】
CSI300:上海および深圳に上場しているA株のうち、時価総額および流動性の高い300銘柄で構成された指数
SSE180:上海に上場しているA株のうち、時価総額および流動性の高い180銘柄で構成された指数
※指数のディスクレーマーについては下記をご参照ください。
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(提供元:三菱UFJ国際投信)