教えて、お坊さん!“遺産”運用説法

生命保険だって次の世代への”投資”になる。遺産を賢く遺す保険の活用方法

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相続でお金を遺す方法は数多くあります。より多く、欲をいえば分割しやすく、さらには故人の意向を反映させたい……というのが偽らざる本音ですよね。それができれば苦労はないと思われるでしょうが、実は多くの人が利用しているいい”運用”の方法があるのです。それが、保険です。

平成27年度の司法統計によると、相続問題でもめている家族の76%は、相続財産5000万円以下のご家族。現金はないけど、不動産があるという場合にもめるケースが多いようです。ならば、すぐに現金化できる資産を準備しておきたいところ。

相続が発生した場合、基礎控除や生命保険の非課税枠を超えた財産には相続税がかかります。その場合、相続税は10か月以内に原則現金で納めなくてはなりません。

それを過ぎると延滞金などが発生。相続税は連帯納付義務がありますから、相続人の誰かは支払わなくてはなりません。不動産や有価証券などはすぐにお金にしにくいですが、保険金であれば手続きをすることで数日後にはお金を準備することができ、各種費用の支払いや納税資金を準備できます。

では具体的に、どのような保険があるのかをご紹介しましょう。

非課税枠があり、もしものときの資金になる「生命保険」

現在は保険商品もバラエティ豊かで、高齢でも、持病があっても、さらには診査なしで加入できるものもありますので、心身ともに余裕があるうちに積極的に検討しておきたいところです。

死亡保険には、法定相続人1人あたり、500万円の非課税枠があります。また受取人を指定できるため、故人の相続の意向を反映できるという点も見逃せません。つまり、他の相続人と話し合う必要なくお金が受け取れるというわけです。加えて、相続放棄をしても保険金は受け取れます。さらに生前贈与の一環としても利用できるのです。

このようなことを踏まえると、相続人たちを受取人とした保険の加入は大いに”アリ”ということがおわかりいただけると思います。

保険料贈与プランで相続対策ができる「投資型年金保険」

投資型年金保険などの生命保険を活用するのも手です。これは被保険者が死亡した場合にはいつでも死亡保険金が受け取れるうえ、運用次第では、死亡保険金の金額が増える可能性もあります。

まず被相続人である子どもに贈与税が非課税の範囲で現金を贈与し、それを保険料として保険に加入します。いわゆる「保険料贈与プラン」と呼ばれているもので、契約者を子ども、被保険者を親、保険金の受取人を子どもにすると、親が亡くなった時に、子どもが保険金を受け取れるのです。

契約者は子どもなので、保険金は相続税の対象ではなく、子ども自身の一時所得となり、所得税、住民税の対象となります。これらの税は受け取った保険金から支払った保険料を差し引き、さらに50万円の特別控除を差し引いた金額の2分の1が課税対象になります。

たとえば総額2000万円の保険料を支払い3500万円の保険金を受け取ったとすると、725万円が所得税の対象となるので、3500万円まるごと相続税の対象となるよりは、税金の負担はだいぶ軽く済むわけです。

「一時払い終身保険」など、保険商品の種類は様々

契約時に一括で保険料を支払う一時払い終身保険には、保険料よりも解約返戻金や死亡保険金が増えるという商品もあります。

例えば100万円支払って110万円の死亡保険金が支払われたり、毎年定期支払い金をお小遣いのように受け取れるなどの利回りが期待できるのです。もちろん先述の死亡保険と同様の活用メリットがあり、相続税や葬儀費用を支払うための元手として期待できます。

人は死という運命から逃れられません。ならばこそ、死を意識して懸命に生きることこそが大切という意味の禅語です。

健康なときには死亡保険のようなものの加入を避けたい気持ちがあるかもしれませんが、やがて訪れる死を自分ごととして捉えれば、次世代に安定的に資産を継承できる可能性が高まるのです。

よりよく生きるためには、きちんと死に向き合うことが求められると思いませんか?

(執筆:吉州正行、イラスト:石井あかね)

【Profile】

僧侶・吉州正行
埼玉県で寺院を運営する現役僧侶。数多くの葬儀を引き受けるなかで、相続の問題を数多く目の当たりにし、僧侶の視点から終活の資産運用について考えることを奨励する。団塊世代が高齢化する今後、相続問題が全国的に多発することを危惧する。

監修:頼藤太希
Money&You代表取締役/マネーコンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や月200万PV、160万UUの『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、マネーコンサルタントとして、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『SNS時代に自分の価値を最大化する方法』(河出書房新社)、『入門 仮想通貨のしくみ』 (日本実業出版社)、『人気FPが教える! 稼げるスマホ株投資』(スタンダーズ)ほか著作・共著・監修書多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャルプランナー(AFP)、日本アクチュアリー会研究会員。twitter→@yorifujitaiki

監修:高山一惠
Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー(CFP)
2005年に女性向けFPオフィス、株式会社エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後、株式会社Money&Youの取締役へ就任。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。著書は『税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)、『つみたてNISAでお金は勝手に増えていく!』(河出書房新社)、『パートナーに左右されない自分軸足マネープラン』(日本法令)など多数。twitter→@takayamakazue

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