米中合意と肺炎騒動の狭間で
提供元:東洋証券
米中合意と肺炎騒動で揺れるマーケット
景気減速や企業業績の伸び悩みなど、相場環境が必ずしも良好とは言えない中国市場。上海総合指数は、2019年5月のトランプ米大統領の”ツイッター砲”(突然の追加関税の示唆)をきっかけとした大幅安以降、総じて軟調な展開が続いてきた。1日当たり売買代金が2000億元(約3兆2000億円)を下回る日も多かった。19年2月から3月にかけては5000億元(約8兆円)程度の日もあったが、それ以降は薄商いだ。ただ、ここに来て相場が動き始めている。
上海総合指数は19年12月初旬から20年1月中旬にかけて約1割上昇した。2,857pt(19/12/3安値)⇒3,127pt(20/1/14高値)まで9.5%上昇。一気に節目の3,000ptを上方ブレイクしてきた。
この背景にあったのは、米中貿易協議の「第1段階の合意」に対する期待感だ。合意に関しては昨年後半から様々な憶測や報道がなされ、その実現を怪しむ声もあったが、とにもかくにも20年1月15日に両国政府が合意文書に署名した。
18年から表面化してきた米中貿易摩擦(戦争)はここまで「イイとこなし」の状態。しかし、「やっと」というか「ついに」というか、少なくとも一歩前進への期待が意識され、株価もそれを反映したのだろう。MSCIが19年11月、中国A株の「新興国株指数」への組み入れ比率を15%から20%に上昇させた(19年内で3度目の引き上げ)ことも、外資の買いの呼び水になったと考えられる。
しかし、19年年末から不穏なニュースが浮上してきた。「謎の肺炎」――。19年12月30日に初めて話題になり、発生源とされる湖北省武漢が一躍注目された。今年1月7日になり、原因は新種のコロナウイルスであると特定され、同9日に最初の死者が出た。
習近平国家主席は20日夜、「国民の生命と健康が第一だ。断固としてウイルスのまん延を抑え込む」という重要指示を表明した。
さて、株式市場。新型肺炎に対する懸念が膨らみ、中国・香港市場共に売り込まれる場面が出てきた。中国A株市場では、中青旅HD(600138)、広州白雲国際機場(600004)、春秋航空(601021)など、旅行会社や航空会社などの下落が目立つ。香港市場でも中国国際航空(00753)を中心に航空関連株が値を下げている。
また、マカオカジノ株や映画関連株も安い。春節(旧正月)の書き入れ時を前に大きくつまづき、消費全体へのネガティブな影響も懸念される。一方、マスクや医薬関連株の一角は思惑で買われる場面も見られた。
ここで03年の新型肺炎SARS蔓延時の株価を見てみよう。当時は、前年の02年11月に広東省で最初の症例が報告され、03年3月にWHO(世界保健機関)が広東省・香港への渡航自粛勧告を出した。社会不安が高まり、ハンセン指数や台湾加権指数は同年4月にかけて右肩下がりで推移。概ね、年初から約10%程度下落した。
一方、上海総合指数はほとんど動かなかったが、外資の影響がほとんどない(QFIIは03年5月にスタート)など特有の事情もあり、あまり参考にはできないだろう。
03年のSARS禍の時は、春節(同年は2/1)後に感染が拡大した。今年は1月25日で、30日まで連休。そろそろUターンラッシュがピークを迎える。新型肺炎という変数を抱えながら、31日に中国株式市場が再開する。
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