教えて、お坊さん!“遺産”運用説法

不動産や株式以外にもある

次の世代により多く遺す、”遺産運用”の基本

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相続が世間にとって大きな関心ごとであるのは「資産を次の世代に譲りたい」という思いがあるからこそ。相続を次の世代への真心のようなものだと捉えれば、より多く遺してあげたいのが親心、祖父母心でしょう。ならば”運用”を考えるのは現代的な選択肢といえます。

では具体的に、どのような運用が考えられるのでしょうか。有効なものをご紹介しましょう。

評価額が低く抑えられる「不動産投資」

相続対策でよく用いられる投資がこれです。相続税の基準となる評価額が低く抑えられるのがメリットで、土地なら時価の8割程度、さらに家屋の場合は時価の4~6割程度となります。

また最近はワンルームマンション投資についてよく耳にしますが、団体信用生命保険をつけて購入するケースが大半です。これはローン返済者である相続人が亡くなったとしても、保険金でローン返済されるという制度です。そのため、遺族にローン返済した状態で物件を相続させることができるという点も見逃せません。

運用益が見込め、分割しやすい「株式投資」

これも評価額の観点でメリットがあります。相続開始日の最終価格、相続開始月の毎日の最終価格の平均額、相続開始月の前月の毎日の最終価格の平均額、相続開始月の先々月の毎日の最終価格の各平均額をくらべて、もっとも低い価格を評価額とすることができます。また株式という特性上、分割しやすいのもうれしいですよね。

ほかにも数々の投資商品がありますが、今の時代、基本的に70歳、75歳程度まで働く人も少なくありません。働いて得た収入の一部で「つみたてNISA」を行う人も増えています。これは、仮に65歳から10年間(健康寿命といわれる75歳程度まで)年間40万円(年利3%、複利)で運用した場合、10年後は472万円になるというもの。

仮に75歳から90歳までの15年間、運用しながら取り崩すとなれば、毎月3万2000円程度の収入が得られるということです。定年後の資産運用では、増やしながら取り崩すということも大切ですよ。

NISA口座は相続ができませんが、「ジュニアNISA」というものもあり、これを活用することで相続に役立つのです。詳しくご説明しましょう。

孫世代に”知恵”も遺せる「ジュニアNISA」

未成年者を対象とした少額投資非課税制度が「ジュニアNISA」で、お孫さん世代に相続するなら現実的な選択肢となり得ます。未成年を対象に、最長5年間、年間80万円分の非課税投資枠があり、そこから得られた収益などが非課税になるのです。

また贈与者が亡くなると、死亡3年以内の贈与は相続税の対象となりますが、そもそも孫は法定相続人ではないので、このルールも適用になりません。

そもそも贈与税は、1年間の贈与額が基礎控除額(110万円)の範囲内であれば、課税対象外となります。例えば、お孫さん3人に年間80万円×5年間を生前贈与すると、合計1,200万円の相続財産を減らすことができると共に、お孫さんへ資産を遺すことができるわけです。

また、ジュニアNISAの口座を管理・運営するのは、実質的には親権者である親世代になりますが、資産運用に詳しい祖父母世代が親や孫にアドバイスするのは問題ありません。ジュニアNISAを活用して生前贈与をする方法は、単にお金だけでなく、投資や経済に関する知恵や経験も祖父母世代から孫世代へと贈与できるいい機会になりそうですよね。

ただし、今後の税制改正で「ジュニアNISA」は廃止になる

なお、2020年度税制改正大綱で、ジュニアNISAは2023年末をもって廃止になる旨が盛り込まれました。これは「18歳までは原則として払い出しができない」というジュニアNISAの”弱点”が敬遠されて、口座数が伸び悩んでいたことが要因となっているようです。

一方で、この『18歳までの払い出し制限』が解除される旨も記載されています。この変更で、18歳に縛られずに、資金を引き出せるなど使い勝手の良い制度になる可能性もあります。

このような制度改正の動きもチェックし、効率的な”遺産運用”を考えていきたいものですね。

教育の現場でもしばしば引用される禅語です。「啐」とは雛が卵を破ろうと殻をつついてたてた音。「啄」とは親鳥がそれを助けるために外から卵をやぶろうとつつくこと。ふたつの行為があわさって、はじめてことが成せるという意味です。

これは逃すことのできない機会の大切さを表しています。相続も使いようによっては、次の世代と心を合わせることで人生の知恵を授ける格好のイベントになります。逃してしまっては取り返しの付かない機会なのかもしれませんよ。

(執筆:吉州正行、イラスト:石井あかね)

【Profile】

僧侶・吉州正行
埼玉県で寺院を運営する現役僧侶。数多くの葬儀を引き受けるなかで、相続の問題を数多く目の当たりにし、僧侶の視点から終活の資産運用について考えることを奨励する。団塊世代が高齢化する今後、相続問題が全国的に多発することを危惧する。

監修:頼藤太希
Money&You代表取締役/マネーコンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や月200万PV、160万UUの『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、マネーコンサルタントとして、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『SNS時代に自分の価値を最大化する方法』(河出書房新社)、『入門 仮想通貨のしくみ』 (日本実業出版社)、『人気FPが教える! 稼げるスマホ株投資』(スタンダーズ)ほか著作・共著・監修書多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャルプランナー(AFP)、日本アクチュアリー会研究会員。twitter→@yorifujitaiki

監修:高山一惠
Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー(CFP)
2005年に女性向けFPオフィス、株式会社エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後、株式会社Money&Youの取締役へ就任。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。著書は『税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)、『つみたてNISAでお金は勝手に増えていく!』(河出書房新社)、『パートナーに左右されない自分軸足マネープラン』(日本法令)など多数。twitter→@takayamakazue

用語解説

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