キャピタルゲインは望ましいもの

提供元:バンガード・インベストメンツ・ジャパン

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次のような光景を思い浮かべてみてください。

オリンピック史上初の出来事です。表彰式が始まったその時、金メダリストが表彰台から離れ、首を横に振りました。地元のニュース記者がその選手を追いかけ、突然立ち去った理由を尋ねたところ、選手はこう答えました。「税金のせいです!メダルを受け取ったら課税されてしまいます!」1

想像できますか?何年もの間、血と汗と涙を流してオリンピックに出場し、しかも表彰台にまで上ったのです。課税されるという理由だけで金メダルを辞退するのは、考えただけでも馬鹿げています。

それでも、この話は理解できないこともありません。私はファイナンシャル・アドバイザーをしていますが、税金を払わなくてすむようにキャピタルゲインの実現をあえて回避しようとする投資家の方々にお会いすることがよくあります。

投資は資産を増やすことが目的ですよね。キャピタルゲインをご自身の投資に対する「メダル」と考えてみてください。メダルを辞退する投資家の方々は少なくありませんが、それは税負担とそれを回避することのメリットを過大評価しているためです。しかも、長期投資を行っていれば、ポートフォリオのリバランス時にキャピタルゲインを獲得することは珍しくないため、リバランスを行わないリスクを著しく過小評価することにもなります。

投資戦略を台無しにしない

課税されたくないという理由でポートフォリオに基づいて行動しなければ、持続性のある堅実な投資戦略を台無しにしかねません。ここには2つの危険性があると考えられます。

・過度なリスクテイク

2005年初めに株式に60%、課税債券に40%投資するポートフォリオがあったとします。2006年は好調な市場リターンに気を良くしましたが、リバランス後のキャピタルゲインに課税される税金を支払う気になれませんでした。その後、多忙な生活を送り、世界金融危機に見舞われましたが、損失を直視することができず、損失覚悟で売却することもありませんでした。

これは、必ずしも過ちを犯さなかったということにはなりません。2006年以降にリバランスをしなかったため、弱気相場に入る直前にポートフォリオの株式比率は70%近くまで上昇しました。このポートフォリオは2007年12月31日から2009年3月31日までの間に31.18%の累積損失を抱えていたと考えられ、株式と債券の比率が60/40だった場合に比べて4.59ポイント悪化します。2

それだけではありません。弱気相場の間にリバランスしなかったことで、ポートフォリオの株式比率は2009年3月までに50%を下回ったと思われます。したがって、株価が回復基調に転じてもこのポートフォリオはすぐには回復しません。バンガードの調査によると、この誤った投資行動によって投資リターンが数ポイント低下したと考えられます。3

・集中投資ポートフォリオの構築

ポートフォリオのリバランスを行わなければ、高いパフォーマンスの個別銘柄に偏る可能性があります。この場合、その投資銘柄が不人気になれば、ポートフォリオはボラティリティの上昇や相対的なパフォーマンスの低下の可能性が高まります。

バンガードは最近、株式集中投資に関する優れた調査レポートを発表しました。このシナリオに当てはまる私のすべてのお客様にこのレポートを推奨し、行動計画の策定をサポートしています。4

意識改革

投資家の皆さまから、リバランスをしない理由をお聞きすることもあります。リバランスは煩わしいという方もいれば、株式市場は上昇が続くと考え、株式への配分を維持したいという方もいらっしゃいます。

しかし、リバランスは堅実な投資戦略に不可欠であると私たちは考えています。「進路を維持する」というバンガードのもう1つの投資哲学は、状況が悪化しても売却しないという受け身の意味ではないことを折に触れてお客様にお伝えしています。「進路を維持する」とは、投資目標を達成するための行動を取り続けるという意味です。

最終的には、リスクの最小化がリバランスの目的です。目標とする資産配分とリバランス戦略を継続しながらも、少なからぬリターンを依然として得ることができます。実際、キャピタルゲインを回避することに経済価値はほとんどないことを裏付けるデータがあります。マイケル・キッチェス氏のブログNerd’s Eye Viewによると、20%から30%のリターンを生む投資の場合、キャピタルゲインの回避によって1年間に得られる「価値」は、株式市場の1日のボラティリティ程度に過ぎません。5

バンガードは様々なリバランス戦略を調査しました。明らかに最適と言える戦略はないかもしれませんが、戦略は持たないより持つほうがいいと考えています。リバランス戦略のほとんどは、決まったサイクル、あるいは資産配分の変化をトリガーとして立てられています。

バンガード・パーソナル・アドバイザー・サービス*では、「時間としきい値」を組み合わせたものをリバランス戦略に用いています。四半期に一度ポートフォリオを見直し、資産配分が5ポイント以上乖離した場合にリバランスを行います。

*日本では提供していないサービスとなっております

このようにトリガーを組み合わせることで戦略は複雑になりますが、メリットもあります。この戦略を株式に60%、債券に40%投資するポートフォリオに用いた場合、ポートフォリオの平均売買回転率は約1.95%2、平均シャープレシオは約0.51となります。このことは、リバランスによりリスクが軽減されると同時にリバランスの頻度が低下することを示しています。

実行あるのみ

以上が、キャピタルゲインに課税される税金を支払うことになってもリバランスをお勧めする理由です。これまで熱心に投資に取り組み、資産を増やしてきたのですから、賞金は手に入れましょう。

 

1.2016年10月に米国下院に提出された法案H.R. 5946が成立し、適用免除が規定されるまで、オリンピックとパラリンピックのメダリストたちはメダルの評価額と米国オリンピック委員会から受け取った報奨金に課税されていた。この除外規定は、調整後総所得が100万米ドルを超えるメダリストには適用されない。
2.使用するインデックスの種類と期間を決定するにあたり、現在入手可能な情報に基づき、対象市場の特徴を適正に表していると考えるインデックスを選択。
米国株式市場のリターンは、1926年から1957年3月3日まではS&P 90インデックス、1957年3月4日から1974年まではS&P 500インデックス、1975年から2005年4月22日まではダウ・ジョーンズUSトータル・ストック・マーケット・インデックス(旧名称ダウ・ジョーンズ・ウィルシャー5000インデックス)、2005年4月23日から2013年6月2日まではMSCI USブロード・マーケット・インデックス、その後はCRSP USトータル・マーケット・インデックス。
米国債券市場のリターンは、1926年から1968年まではS&Pハイグレード・コーポレート・インデックス、1969年から1972年まではシティグループ・ハイグレード・インデックス、1973年から1975年まではリーマン・ブラザーズ・米国ロング・クレジットAAインデックス、1976年から2009年まではブルームバーグ・バークレイズ米国総合債券インデックス、その後はブルームバーグ・バークレイズ米国総合浮動調整インデックス。
米国短期金融商品は、1926年から1977年まではイボットソン米国30日財務省証券インデックス、その後はFTSE米短期国債インデックス3ヵ月米国債インデックス。
3.出所:バンガード、Getting back on track: A guide to smart rebalancing(英語)
4.出所:バンガード、Is dilution the solution? Considerations for a concentrated equity portfolio(英語)
5.出所:マイケル・キッチェス、Capital Gains Strategies For Highly Appreciated Investments After A Big Bull Market Run(英語)
注:上記外部サイトに表示される内容は、ザ・バンガード・グループ・インク、ならびにバンガード・インベストメンツ・ジャパンが管理するものではありません。

【筆者:バンガード カール・オゼック】

パーソナル・アドバイザー・サービスのシニア・ファイナンシャル・アドバイザー。富裕層顧客にファイナンシャル・プランニング・サービスを提供している。CFP®資格取得者。

 

 

(バンガード・インベストメンツ・ジャパン)

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