子育てにまつわるお金の話

「今日はキャベツが高いね」のひと言が“お金の対価”を教えるヒントに

全米No.1バンカー・酒井レオが語る“子育てとお金”

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元バンク・オブ・アメリカ ヴァイスプレジデントの酒井レオさんの著書『全米No.1バンカーが教える 世界最新メソッドでお金に強い子どもを育てる方法』(アスコム)には、「お金の価値を知ることで、お金に振り回されない人生を送れる」と、書かれている。

本書の中では、「お小遣いは絶対にあげない」「子どもの部屋の掃除代、1カ月の食事代を支払わせる」など、具体的な子育て法が記載されているが、酒井さんはなぜこのような考えに至ったのだろうか。

子育て中の人だけでなく、これから子どもを育てたいと考えている人、すでに子どもが巣立っていった人にも伝えたい“子育て術”を、酒井さんに聞いた。

5歳で知った“レベルの高い人たち”の存在

酒井さんはアメリカ・ニューヨークで生まれ育った。両親が2人だけでアメリカに渡り、現地で事業を起こしていく中で、酒井さんが生まれたのだという。

「生まれた時にはアメリカにいたので、血のつながった親戚は親しかいなかったんです。両親は日本人のコミュニティではなく、ユダヤ人のコミュニティに入っていて、周りはみんな外国人。近所の人たちが僕のセカンドファミリーになったので、僕のルーツはさまざまな人種のブレンドですね」(酒井さん・以下同)

外国人に囲まれて育ったことで、幼くして気づかされたことが多分にあったそう。

「幼い頃に国連学校に通っていて、5~6歳にして自分のアホさを知らされました(苦笑)。その年齢の時点で、トップの階層の人たちは3カ国語を学んでいて、話せるんですよ。僕は英語しかしゃべれなかったので、『まずは英語と日本語を学びなさい』ってところから。単純に、すごい人たちがいっぱいいるんだなって思いましたね」

酒井さんの両親は、日本で生まれ育った生粋の日本人。しかし、アメリカでは現地の教育法を学び、息子に施したのだ。

「9歳以降は毎年、夏休みに白人の子に混ざってサマーキャンプに行って、8週間くらい親元を離れていました。それが当たり前だから、アメリカの子は自立するスピードが速いんじゃないですかね。今振り返ると、そのキャンプはすごくレベルの高いものだったんですよ。そこに行けたのは、親が白人の友達を作って、『あなたの子は、夏休みに何するの?』って情報収集してくれていたから。それなりに費用はかかったみたいですけど、親が僕の教育に投資してくれたんですよね」

「親の判断で、僕の人生はすごく変わったわけですから、感謝しています」と、酒井さんは語る。

「なんで牛肉は高いの?」が“お金”を知る第一歩

酒井さんいわく、「“お金に強い子ども”とは、お金の対価がわかっていること」。なぜ、お金の対価がわかっていると、いい方向に作用するのだろうか。

「お金の対価をわかっている人は、必要なものとそうじゃないものの判断ができるので、私生活もしっかりしていると思います。欲をコントロールできるというか、お金を賢く運用する方法がわかるはず。例えば、今の日本では、銀行に預けてもほとんど増えないから、投資を視野に入れた方がいいとか、価値や仕組みをわかっていないとできない判断ですよね」

「お金の価値や仕組み」とは、貨幣や証券、債券、不動産という具体的なものではなく、経済の流れのことだという。社会がどう動いているのか意識することが、お金の対価を知る第一歩。

「その方法としては、例えばスーパーに行った時、子どもに『最近、キャベツが高いよね』『なんで豚肉より牛肉の方が高いと思う?』と聞いて、一緒に考えてみる。難しい知識は必要ありませんし、大切なのは正解を求めることではなく、経済の仕組みを考えることなんです」

ほかにも、スポーツ選手の優勝賞金が競技によって異なる理由やオリンピックの1位のメダルが金の理由など、子どもが興味を抱きそうな分野の話をすると、会話が膨らみやすいだろう。

「お金を稼ぐこと、使うことを、家庭内で教えることも重要だと思います。例えば、パソコンを使う時は1回5円とかでもいい。子どもはその5円を手に入れる方法を探すと思うので、お小遣いではなく『玄関の掃除をしたら1回10円ね』と労働の対価として支払うと、子どもはお金をもらう大変さを実感していきます」

お金の対価を体感的に知ることで、「自立心が生まれる」「数学・計算が得意になる」「経営者目線が生まれる」「ムダ遣いをしなくなる」「お金に悩まない人間になれる」という将来が期待できるそう。

お小遣い制度を変更するなら“話し合いの場”を持って

すでに子どもにお小遣いを与えている家庭だと、急にお小遣いをゼロにするのは、難しいのではないだろうか。

「もちろん、急に変えると子どもも反発すると思うので、『次の4月からお小遣いをやめて、家事をしてくれたら支払うようにしようと思うんだけど』と、話し合いの場を持ちましょう。その時に、『アメリカではその方法が一般的だ』とか『憧れの東大に行くにはそうした方がいいと思う』とか、子どもが納得しやすそうな理由を沿えるとスムーズに話が進むと思います」

この時、「やってみようか?」と判断を子どもに委ねるのではなく、「やってみようと思っている」と大人の意見を伝えるべきとのこと。

「いずれ社会に出れば上司がいて、不条理な言い分を通されることもありますよね。親がその代わりを務めることで、社会人になってからも乗り越えられる強さが身に付くと思います。それに、親がちゃんと説得すれば、子どもは『こんなに向き合ってくれるんだ』って信頼してくれるはずです。もし、お小遣いを出す余裕がない場合は、『今年は厳しいから、わかってもらえるとうれしいな』と、正直に伝えた方がいいでしょう」

経済の流れを知る会話にしろ、お小遣いの交渉にしろ、子どもを子ども扱いせず、しっかり向き会うことが大切といえそうだ。

「子どもは非常に大人ですから、対等に付き合うことを心掛けてほしい。あと、親は人脈を増やして、情報を集めることも大事。理想とする人たちのコミュニティに入れば、理想に近づくための情報を得やすくなります。子どものためにも、ネットワークを広げていってほしいですね」

子どもの金銭感覚や考え方の基礎形成において、親は重要な役割を担っていると言える。将来、世界で活躍する人材に育ってほしいのであれば、お小遣い制度を見直すところから始めるのも1つの方法だ。
(有竹亮介/verb)

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