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親しみやすいデザインには秘密が…

クチコミで投資を楽しめるアプリ「ferci(フェルシー)」

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何かの商品を買おうとするとき、どんな情報を見るだろうか。商品の機能や価格はもちろん、最近は「クチコミ」を参考にするのも一般的となった。また、ネットのニュースを見ても、記事に紐づくユーザーのコメントを見る人は多いだろう。

クチコミが大切な情報源となる中で、投資アプリにもその機能を搭載したものが登場している。マネックス証券の「ferci(フェルシー)」だ。スマホ上で株式取引を行えるアプリだが、ユーザーは株の銘柄ごとにクチコミを投稿できる。他のユーザーは、その内容を見たり返信できたりする仕組みだ。

株式投資のクチコミは、ユーザーにどんなメリットをもたらすのか。アプリを開発したマネックス証券の万代惇史氏に話を聞いた。

他ユーザーのコメントを見て「情報の壁」を越える

ferciは、若年層向けのスマホ投資アプリとして開発された。マネックス証券は、株をはじめさまざまな取引ができるネット証券会社だが、「若い人は多くの行動をスマホ内で完結させる時代です。その中で、“スマホ世代”に最適化された取引チャネルを新しく作りたかった」と、万代氏は開発の背景を振り返る。

「スマホ世代への最適化」を象徴するのが“クチコミ機能”だ。ferciは、アプリ内で日本株を1株から少額で購入できるが、各銘柄にはユーザーがクチコミを投稿できるシステムが用意されている。そして、多くのウェブサイトやSNSと同様、クチコミへのいいね!・返信も可能。まさに若者が慣れ親しんでいるネット文化が構築されている。

「若い人にとって、クチコミや他の人のレビューを見てモノを買うのは当たり前になっていますよね。投資も、他の投資家やユーザーの情報発信を参考にする形があっていいと思います。今までは、金融機関などの“株を売る側”や専門家の情報発信がほとんどでしたが、投資を始める人にとって、その情報は難しくて分かりにくい。そんな『情報の壁』を越えるためのシステムです」

銘柄ごとにクチコミを一覧で見られるだけでなく、気に入ったユーザーをフォローすればその人のコメントは絶えずタイムラインに流れてくる。まさに「投資のSNS」で、初心者は“先輩投資家”の投稿を見ながら、徐々に知識をつけていける。「最近、ユーザー同士が議論するなど、盛り上がりはじめています」と万代氏は笑顔を見せる。

ferciのユーザーから好評なのは、銘柄の株価チャート(その銘柄の株価推移を示したグラフ)を画面上部に表示したまま、画面下部でクチコミを横スライドしながら見られる点。チャートの推移を振り返りつつ、他の人の反応をチェックできる仕様がウケている。

買いたい銘柄を見つけたら「4タップで購入できる手軽さも特徴」と万代氏。株の取引やお金の管理はマネックス証券の既存システムを使うので安全性は高い。またferciの口座は、マネックス証券の本体サービスで共通に使用できる。投資の入り口としてferciで学び、より本格的な投資を行うためにマネックス証券へ移行するのも容易だ。

親しみあるデザインの秘密は「MAYA段階」

この投資アプリには、クチコミ機能をはじめ、若者の文化やSNSの常識が反映されている印象がある。実際、アプリの構造やデザイン、UI /UXの設計をする際は「とにかく若年層に馴染みのある他のアプリを参考にした」という。つまり、あえて証券会社のサイトとして連想されるようなUI/UXではなく、他のアプリに近い作りにしたと言える。

なぜその考えに至ったのか。ポイントになるのは、万代氏が口にした「MAYA段階」という言葉だ。

MAYA段階とは、デザイナーのレイモンド・ローウィが提唱した考え方。人は、未知のものや新しいものが多すぎるとストレスを感じるが、すべて知っていると物足りない。未知と既知がバランスよく共存しているのがベストというものだ。

このバランスを意識したからこそ、アプリの構造はあえて若年層が利用しているフリマアプリやコスメクチコミアプリなどを参考にしたという。

「投資初心者にとって、投資そのものがすでに知らないもの、新しいものです。であれば、それ以外のアプリ操作や画面のビジュアルは馴染みのあるもの、知っているものであるべき。これまでの証券サービスは、UI/UXが独特なものが多かった印象です。ただでさえ投資が初めてなのに、アプリまで馴染みがないと、未知の比率が高すぎますよね。そう考えて、ferciのデザインやUI/UXはあえて他の人気アプリと近くしました」

万代氏は「たとえ株は分からなくても、若い人なら操作はなんとなく直感的に行える。そんなアプリを目指しています」と万代氏は語る。

そのほか、アプリ開発のチームには若いメンバーを揃え、ローンチまでに「とにかくたくさんの人に見てもらって、世の中の一般的なUI/UXに近いかを確認した」という。だからこそ、“金融”や“証券”につきまとう堅い雰囲気のないアプリができたのだろう。

マネックスグループでは、他にも新サービスをローンチしている。マネックスクリプトバンクが提供している「cheeese(チーズ)」というもので、記事を読んだりアンケートに答えたりするとビットコインがもらえるアプリ。こちらも万代氏が開発に関わった。2つのアプリに共通するのは、若者や投資初心者が馴染みやすい“柔らかさがあることだろう。

ちなみに、冒頭の写真はマネックス証券のプレスルームで撮ったもの。そこには、壁一面に大きな現代アート作品が飾られている。「ART IN THE OFFICE」というプロジェクトで、新進気鋭のアーティストをサポートするもの。毎年、選出された作品がここに展示される。未開拓の表現を追求する現代アートと、一歩先の「未来の金融」を目指すマネックス証券の姿勢が重なることから始まったという。

クチコミをはじめ、若者の文化を投資アプリに落とし込んだ「ferci」。そのサービスからは、一歩先の「未来の金融」を見据える姿勢が見えてくる。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2020年3月現在の情報です

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