住んでいなくても、維持管理だけで月数万円の出費が発生!?
両親が亡くなり実家が空き家に…そのままだとどうなる?
近年、社会問題として取り上げられることの多い「空き家」。核家族化が進む今、両親が亡くなった後に家を引き継ぐ子どもや孫がいないため、空き家が増えているのだ。
もし、自分の親が亡くなり、実家が空き家になった場合、どのように対応すればいいのだろうか。ファイナンシャルプランナーで不動産コンサルタントの橋本秋人さんに、空き家の実情と対処法について聞いた。
国内の住宅の7軒に1軒が空き家
「5年に一度行われる『住宅・土地統計調査』によると、2018年の国内の空き家の数は約849万戸。空き家率は約13.6%で、7軒に1軒が空き家だといえます」(橋本さん・以下同)
ただし、そのすべてが放置されている空き家ではないという。空き家は大きく4つに分類され、1つ目はマンションやアパートの空室などの「賃貸用住宅の空き家」。2つ目は、建売住宅や中古住宅など「売却用住宅の空き家」。3つ目は、セカンドハウスや別荘といった「二次的住宅の空き家」。そして、4つ目の「その他の空き家」に、誰も住まずに放置されている家などが含まれる。
「『その他の空き家』の増加率が高いため、問題となっているのです。2013年の調査では、空き家の総数は約820万戸だったので、5年間で29万戸増えています。一方、『その他の空き家』は2013年から2018年の5年間で、31万戸増えているのです」
増加している空き家の総数よりも「その他の空き家」の方が増加数が多いということは、「賃貸用住宅」「売却用住宅」「二次的住宅」の合計は減っているのに、「その他の空き家」ばかりが増えているということだ。
「そもそも空き家が増えている理由は、新築物件が多すぎるから。国土交通省の『建築着工統計調査報告書』によると、国内の2018年の新築着工数は約90万戸。人口が日本の2.5倍いるアメリカでは110万戸程度、イギリスに至っては十数万戸と、日本は突出して多いのです。国内の流通の割合も新築が約85%、中古が約15%。つまり、中古住宅が活用されず、新築ばかりが売れるため、空き家が増えていってしまうのです」
親の死後3年以内の売却で「税金ゼロ」!?
空き家の増加に危機感を覚えた政府は、住宅を売却した際に使える特別控除を設けたという。
「相続した住宅を売った際に利益が出たとしても、3000万円を超えなければ税金がゼロになる『空き家を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例』です。ただ、この特例は、親が亡くなってから3年後の年末までに売却しなければ、使えません」
橋本さんのもとに来る相談者の中には、相続したまま実家を放置していて、親が亡くなって3年9カ月経ってから売却した方がいた。その際には、700万円の税金が発生したという。
「あと1年早ければ、税金は発生しませんでした。いずれ売るのであれば、早めに動くに越したことはありません。もし、将来的に実家に住む人がいないのであれば、親が生きているうちから、そのまま所有するのか、はたまた売るのか、考えた方がいいでしょうね」
「迷惑空き家」認定で税負担アップ
では、売却せずに、空き家のまま所有し続けるとしたら、費用などは発生するのだろうか。
「空き家を所有する際には、維持費が発生します。固定資産税や都市計画税などの税金と、空き家の劣化を防ぐための維持管理費です」
雨漏りしないようにメンテナンスしたり、美観を保つため庭の草刈りをしたり、住宅性能を保つ維持管理が必要となる。空き家が歩いていける距離なら負担は少ないが、車や電車で赴く距離であれば、交通費も発生する。空き家であっても、水道や電気は契約したままで、光熱費がかかるケースも。すべてを合計すると、1年に数万円から数十万円はかかるとのこと。
「空き家が遠くにあったり、仕事で忙しかったりして、自分で維持管理できなければ、空き家管理代行サービスを利用する手もあります。月1回の見回りや全室の換気、清掃、防犯の確認など、さまざまなオプションがつけられます。費用は、利用者の7割くらいがひと月1000~1万円に収まっているようです。月1万円としても、年12万円なので、空き家までの交通費や自身で行う負担を考えると、割安かもしれません」
維持管理は必要かもしれないが、自分が所有しているのだから、空き家のまま放置しておいても別にいいのではないだろうか。
「2015年に『空家等対策の推進に関する特別措置法』(通称『空家特別措置法』)が施行され、老朽化した家やゴミ屋敷など、近隣に迷惑がかかると自治体が判断した『特定空家等』は、是正が求められることになりました。最初は所有者への助言・指導から始まり、勧告、命令という手順を踏んで、最終的には所有者に代わって自治体が空き家を解体する行政代執行が行われます。この際の解体費用は、所有者に請求されますよ」
さらに、「特定空家等」に指定されることで、税金も上がるという。そもそも住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準が6分の1に軽減されている。しかし、「特定空家等」になり、勧告の段階まで進むと、固定資産税の軽減が適用されなくなる。
空き家を所有するという選択をするのであれば、「特定空家等」に指定されないよう、維持管理は必須。その費用を把握した上で、所有するか売却するか、考えてみよう。
(有竹亮介/verb)
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橋本秋人
FPオフィス ノーサイド代表。ファイナンシャルプランナー、不動産コンサルタント。早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。また、自らも在職中より投資物件の購入や土地を購して新築を建てるなど、不動産投資を始め、早期退職を実現。現在はライフプラン、住宅取得、不動産活用、相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行う。