介護のために仕事を休んでも、給料が支払われる!?
介護が始まってからの“お金”に関する申請はどうしたらいい?
金銭的な負担が大きいイメージのある介護だが、「介護保険」を利用すれば、介護サービスの費用が自己負担1~3割に抑えられる。さらに、介護に関するさまざまな費用も支給されるという。
そもそも介護を必要とする人を国内全体でサポートするために始まった「介護保険制度」。原則、40歳以上の誰もが納める介護保険料などから、要支援者・要介護者に支援を行うものだが、具体的な利用の仕方はわからない人も多いだろう。そこで、ファイナンシャルプランナーの桑野恵子さんに、親の介護で利用できる助成制度と申請方法を聞いた。
住宅の改修や介護用具の購入も1~3割負担(※)に
まずチェックしておきたいものは、介護で必要となる住宅の改修や用具のレンタルをサポートしてくれる助成制度。
高齢者住宅改修費用助成制度
手すりやスロープの取り付け、引き戸等への扉の取り替え、洋式便器等への取り替えなど、介護のための住宅の改修を行う場合に、工事費用20万円(そのうち1~3割は自己負担)まで支給される制度。
「費用の1~3割は自己負担になるので、20万円分申請したら、14万~18万円支給されます。ちなみに、申請は1人につき生涯一度だけなので、何度も申請することはできません」(桑野さん・以下同)
申請は工事前に行わなければならず、支給申請書、住宅改修が必要な理由書、工事費見積書、完成予定図が必要となる。
特定福祉用具購入費の支給
腰掛便座や入浴補助用具、簡易浴槽など、自宅での介護の際に必要な用具を購入した場合に、その費用が支給される制度。同年度内の上限支給額は10万円(そのうち1~3割は自己負担)。
購入後の申請で、控除適用の申請書、福祉用具購入の領収書、その他自治体が求めるものが必要となる。
介護用具のレンタルサービス
車いすや介護ベッド、移動用リフト、歩行器など、高価な介護用具13種類を、1~3割負担で借りられるサービス。ケアマネージャーが作成するケアプランに準じて、レンタル事業者に依頼すれば、利用できる。
「用具のスペックなどにもよりますが、ものによっては月数百円から数千円くらいで借りられます。用具の設置やメンテナンスはレンタル事業者が行ってくれるので、家族の負担はかなり抑えられると思います」
※約8割の人は1割負担。「年金収入とそのほかの合計所得額」が280万円以上340万円未満の場合は2割負担、340万円以上ある場合(現役並み)は3割負担になる。また、滞納した場合の期間によっては負担額の変更などのペナルティもある。
月4万4400円を超えた介護費用は戻ってくる!?
想定外に介護費用がかさんでしまった場合も、フォローしてくれる制度がある。
高額介護サービス費支給制度
介護サービスを利用し、1カ月の自己負担額が上限額を超えた場合、超えた分の払い戻しを受けられる制度。上限額は世帯収入によって異なり、「現役並み所得者(課税所得145万円以上)」は4万4400円、「住民税非課税者」は2万4600円。
「上限を超えていた場合、介護サービス費の対象となるサービスを利用した3カ月後の上旬に、自治体から申請のお知らせが届きます。それを持参して、役所の保険年金課で手続きしましょう。一度申請すれば、その後は自動的に払い戻しされます」
高額医療・高額介護合算療養費制度
世帯内の介護費と医療費を合わせ、年間の自己負担額が上限額を超えた場合、超えた分の払い戻しが受けられる制度。上限額は世帯収入によって異なり、「課税所得145万円以上380万円未満で70歳以上の人がいる世帯」は67万円。「住民税非課税で70歳以上の人がいる世帯」は31万円。
「この制度では8月から翌年の7月までを1年間とするので、7月末日に加入している医療保険に申請する必要があります。国民健康保険及び後期高齢者医療制度に加入している場合は、役所の保険年金課での手続きになります」
在宅介護でも給料の7割弱が支給される制度も
介護を行う家族を、金銭面で支援する制度も存在する。在宅介護を行う場合は、ぜひ活用しよう。
介護休業給付金
2週間以上にわたり常時介護を必要とする家族を介護するために休業した場合、休業開始時の給料の最大67%が支給される制度。休業は、介護する家族1人につき93日を限度に、上限3回に分けて取得できる。
申請は、勤めている会社を通じてハローワークに行う。介護休業給付金支給申請書や雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書、賃金台帳、出勤簿など、さまざまな書類が必要となる。
家族介護慰労金
介護サービスを利用せず、自宅で1年以上にわたり、要介護4~5の家族を介護している場合に、自治体から助成金が支給される制度。支給額は、年額10万~12万円程度。条件は自治体によって異なるため、事前の確認が必要。
「在宅介護を選んだとしても、会社を辞めないことを前提に考えましょう。自分の人生は、親が亡くなった後も続きますから。自分も家族も守るため、使える制度は使うことが大切。自治体独自の制度もあるので、しっかり調べて、介護しながらも生活を維持していきましょう」
高齢化社会に伴い、介護に関連する制度はますます充実してきている。家族の将来を考え、今のうちから制度内容を確認しておけば、いざという時にすぐ行動できるだろう。
(有竹亮介/verb)
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桑野恵子
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー。FP事務所やさしいお金の相談室代表、コスモスペース取締役社長、一般社団法人女性FP相続サポート協会理事。ファイナンシャルプランナーとして、1人暮らしの高齢者の定期訪問、見守りサービス、任意後見と遺言、相続の手伝いなどを行う。