投資インスタグラマーに聞く「リアル投資体験」

“世界最速で日経新聞を解説する男”南祐貴さん

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多くの人にとって投資が縁遠いものではなくなったいま、SNSで投資のノウハウや実践録を公開する人が増えています。Instagramで日本経済新聞を解説する南祐貴さんもその一人。フォロワー数が1万5000人を超える「#世界最速で日経新聞を解説する男 @sekanichi」で、2018年から毎日欠かさず、朝刊を独自の切り口で端的にサマリーして午前2時にアップしています。なぜそのような活動をはじめたのか、ご本人に話を聞きました。

6年間日経新聞を読み続けたことが自分の価値だと気づいた

ーー南さんは22歳から日経新聞を購読されていたそうですね。きっかけを伺えますか?

私はいわゆる典型的な「社畜」で、自分を犠牲にした社会人生活を送っていました。終わりが見えないトンネルを進んでいるようで、それが苦しくて、ストレスも非常に多く本当に辛い毎日でした。そこで、社会人2年目に自分の生活を振り返り、「毎月振り込まれる給料に依存しているからこんな生活をしているのではないだろうか? お金がないなら作れば良いんだ! お金から解放されるためにお金のことを知ろう!」と決意したんです。そこから投資を学ぶようになり、株をやるなら日経新聞は必要だろうと思い購読をはじめました。

ーー読むだけでなく、なぜ解説をはじめようと思われたのでしょうか?

解説の公開をはじめたのはクラウドファンディングがきっかけです。6年間勤めた大手広告代理店を退職して、ゲストハウスを運営する会社を起業しました。ただ、工事費用が足りず……。それで、クラウドファンディングを計画したのですが、「支援されるためには、応援したくなる人にならなくてはいけない、そのためには価値のある情報を提供する人間にならなくてはいけない」と思ったんです。自分にできる価値はなにかをめちゃくちゃ考えました。その結果、「毎日必ず日経を読んでいること」が提供できる価値だと気づいたんです。

ーー価値、ですか?

たとえば、カバンに入っている日経がチラッと見えたときに、友達から「日経読んでるんだ。スゴイ」って言われることが何回かあって。皆、読むとためになるのは分かっているけど、読むのをためらっているのかなと。読みたくても後回しにしている人が多いのではないかと思ったんです。それなら日経を6年間読み続けた自分が、自分なりの視点で解説すればそれが価値になるはずだと。あとは、「世の中への怒り」がモチベーションですね。


ーー怒りとは?

お金まわりの詐欺があまりにも多くないですか? 喫茶店でも隣の席で、仮想通貨とか、投資の勧誘とか、あまりにも胡散臭い話が多すぎて。キミは人をだますために生まれたのか? 親はそんなことをさせるためにキミを産んだのか? って怒りを覚えるんですよ。だまされる人に対してもしかりで、リテラシーが低いことって、産んでくれた親に対して親不孝じゃないかと。それを変えたいんですよね。ある意味、そのためのツールとして日経新聞を利用させてもらっていると言ってもいいかもしれません。

日経新聞の購読は筋トレだ!

ーーいま購読されているのは日経新聞だけですか?

媒体としては、日経の本紙と電子版、日経MJ、ヴェリタス、日経産業新聞です。私が思うに、記者によって同じテーマでも、本紙とMJでは切り口が全然違うんですよ。いろんな記者の見方が分かるのはすごく視野が広がるので、日経系は全部に目を通しています。あと、日経新聞を読んで得た副次的効果として、知り合いの社長から感謝されるというのがありますね。というのも、午前2時に朝刊を読んだときにつながりがある社長の会社が取り上げられていると、FBのメッセンジャーとかで「掲載されていましたよ」って送るようにしているんです。恐らく私が誰よりも最初に知らせているので、すごく喜ばれます。これもひとつの価値提供かなと思っています。

ーー日経を読む上でのポイントを教えてもらいたいのですが。

自分事化することです。そうじゃないとモチベーションにつながらりませんからね。まずは、紙面で興味があることを探してみましょう。読むというより、まず見ることですね。見出しだけでもいいんです。細かい文字は読みとばしちゃう。

ーーおぉ、それでいいんですね。

というか、日経新聞1紙で新書1冊分くらいありますから、最初から全部理解しようなんて無理ですよ。筋トレにたとえると、筋トレの方法をいくらインプットしてもやらないと意味がありませんよね? まずはジムに行くこと、それと同じです。そして、毎日継続して読み続ける。

ーー日経新聞を読むこと、それはつまり筋トレなんですね。

はい、私は鍛えているので、見出しだけ見れば内容が分かるようになっています。また、読むべき記事の強弱をつけられるようになっているから、読むスピードはすごく速いですよ。あと、情報は鮮度なので、1週間分をまとめて読むのでは意味がありません。今日の日経に書いてある話をするだけで、情報感度が高い人だと思われ、ビジネスにおける信頼残高も積み上げられますよ。

日経新聞は「日本一有意義な月額4900円」だ!

ーー日経新聞を読み続けたことで、意識が変わったなと感じることはありますか?

「時間の投資」を意識するようになりましたね。日経新聞は、月額4900円なんです。ちょうど1回の飲み会代くらいです。くだらない飲み会に参加すると、お金だけではなく時間も損失してしまいますよね? なので「この飲み会は自分の人生にとって重要か?」と考えるようになる。ひいては人間関係の断捨離にもつながり、人生のすべてを見直すようになるわけです。だから私は「日本一有意義な月額4900円」だと感じますね。

ーー日経新聞以外の媒体では何がおすすめですか?

テレビ東京ビジネスオンデマンド、これですね。月550円で『ワールドビジネスサテライト』(WBS)や『カンブリア宮殿』、『ガイアの夜明け』をCM無しの2倍速再生で視聴できます。WBSは2倍速で23分くらいなので、朝ご飯を食べながら見ています。あとは、Paraviというアプリ(月額1017円)で、経済バラエティー「がっちりマンデー!!」もチェックしています。企業や経済のイロイロを優しく伝えてくれる番組なので、おすすめですね。

ーーそうした番組はどのような視点で観られているのでしょうか?

私は投資家でもあるので、成功する経営者の共通点を見ています。たとえば、孫正義さんがラーメン屋をはじめたとしても成功しそうですよね? つまり、事業の成功は人次第なんです。だからこそ、経営者がどのような道を歩んできて、苦悩があって、人に対してどういう接し方をして、どういうことを成し遂げたいのかに注目しています。とりわけ『カンブリア宮殿』や『ガイアの夜明け』は、そうしたことが顕著に分かりますね。

ーー投資は経営者を判断基準にしていると。

そうですね。また、投資の判断基準でいうと、売り場に足を運んで現場の声を聞くようにもしています。たとえば、化粧品の株を買うときは、「彼女にプレゼントを買おうとしている人」を装って潜入します。空港関連の株を検討していたときには、羽田空港まで行って清掃員に話を聞いたこともありますよ。

人間はモチベーションがすべてなので、現場の人が自社の商品やサービスを愛していて、誇りを持って仕事をしているかどうかはすごく大事だと思っています。まぁ人が好きだというのもあるんですけどね。


ーーすごく参考になります。他に投資に関心を持っている人にアドバイスはありますか?

つみたてNISAやiDeCoは国民全員やった方がいいですよ。月1000円でも、3000円でもいいので、とにかくはじめてみること。もし2%あがって、1020円になったらなんで20円あがったのかなと気にすることが大事です。そうすると、自然と政治や株価に興味を持つはず。その意識こそ、20円では買えない価値です。いま40歳や50歳で、投資をはじめるのはもう遅いと思う人もいるかもしれませんが、タイムマシンは存在しません。過去には戻れないので、やるなら今日やりましょう。

取材・文:末吉陽子(やじろべえ)

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