リフォームのための助成制度が充実してきている?
知っておきたい将来の住まいのこと ~老後のリフォーム編~
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働き盛りの頃に購入し、ようやくローンを払い終えた家。愛着のある住まいに、老後もそのまま住み続けたいと考える人は多いはずだ。
しかし、家も時間が経てば老朽化し、不具合が生じることがある。特に戸建てにおいては、メンテナンスが必要。そこで、老後に考えるべき戸建てのリフォームについて、ファイナンシャルプランナーで不動産コンサルタントの橋本秋人さんに教えてもらった。
自宅のバリアフリーの度合い・耐震性をチェック
「戸建ての家を長持ちさせるために必要なメンテナンスは、屋根のふき替えや外壁の塗り替えなどの大規模修繕。これに関しては、老後に限った話ではなく、10~15年に一度くらいのペースでしたいところです。費用は、1回に200万~300万円かかると考えておきましょう」(橋本さん・以下同)
例えば、65歳でリタイアし、80歳まで自宅で過ごすとすれば、一度は大規模修繕が必要になる。その分の費用は、あらかじめ確保しておいた方がよさそうだ。
「段差が多かったり階段が急だったりする場合は、段差をなくす、手すりを付けるといったバリアフリー改修が必要です。1990年代後半以降に建てられた家は、ユニバーサルデザインを取り入れていることが多いので、バリアフリー改修はほんの少しで済む場合もあります」
ユニバーサルデザインとは、年齢に関係なく誰でも使いやすい設計のこと。子育てを想定して建てた家は段差が少ないことが多く、高齢者にとっても住みやすい家である可能性が高い。一方、昔ながらの日本家屋や親から引き継いだ家に住んでいる場合は、大規模なバリアフリー改修が必要になることが多いそう。必要な改修の内容は、リフォーム業者と一緒に考えていくといいとのこと。
「1981年(昭和56年)より前に建てられた家は、旧耐震基準が適用されているので、耐震性に不安が残る場合があります。心配であれば、耐震改修もしておいた方がいいでしょうね」
退職して時間に余裕ができたら、リフォーム業者や診断業者に依頼して、バリアフリーの度合いや耐震性をチェックしてもらうと、老後も安心して住み続けられそうだ
リフォームをすると所得税が控除される!?
改修を行う場合、大きな出費が発生することが予想できる。費用を抑えるテクニックはあるのだろうか。
「バリアフリー改修に関しては、介護保険から補助金を受け取れる制度があります。工事費20万円分を上限に、所得額に応じて7~9割が支給されるのです。つまり改修に20万円かかったら、14万~18万円が戻ってきます。ただし、要支援・要介護認定を受けた人のみが使える制度です」
自治体によっては、要支援・要介護認定を受けていなくても、バリアフリー改修に対して助成金を出してくれるところもあるという。必要な場合は、住んでいる自治体の制度を確認してみよう。
「家の断熱改修や家庭用蓄電システムの導入といった省エネリフォームをした際には、国から120万円まで(※)補助金が支給される制度があります。ほかにもバリアフリーや省エネなど、住宅の質を向上させるための改修に関しては、助成制度がたくさんある印象です」
※戸建ての場合。補助対象費用の3分の1以内に限られる
リフォームを行うことで、税金面でもメリットがあるという。
「バリアフリー、耐震、省エネ、これらの改修をした場合、工事費の10%が所得税から控除されます(最大20万円)。また、工事を完了した年の翌年度1年間に限り、固定資産税もバリアフリー、省エネ改修の場合は3分の1、耐震改修の場合は2分の1減額されます」
政府も民間も「中古住宅活用」を推進
自治体ごとにリフォームに関する助成制度があり、税金面でも優遇されるのは、「日本の住宅事情を変えよう」という国の意向が関係しているらしい。
「日本の中古住宅は汚い、寒い、弱いといった負のイメージが強く、流通量が少ないという実情があります。ただ、現在の空き家問題などを踏まえると、新築住宅を建てるより中古住宅の質を高めて、売り買いしやすくした方がいいと、国は判断したのです。そのため、リフォームに対するサポートが充実してきています」
大手ハウスメーカー10社が立ち上げた「優良ストック住宅推進協議会」では、リフォームして新築とほとんど変わらない質に仕上げた中古住宅を「スムストック」に認定し、評価を高める制度を始めている。民間にも、中古住宅活用の流れが来ているのだ。
「古い住宅でも、メンテナンスを行って質を維持しておけば、それなりの金額で売れる見込みがあります。しかし、放置していたら査定額は0円になってしまうかもしれない。将来的に売ることも視野に入れ、自宅はリフォームしながら、キレイに保っておく方がいいと思います」
ますます充実していくであろうリフォーム助成制度。せっかく制度があるならば、使わないともったいない。老後、快適に過ごすためにも、今のうちからリフォームを検討してみては?
(有竹亮介/verb)
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橋本秋人
FPオフィス ノーサイド代表。ファイナンシャルプランナー、不動産コンサルタント。早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。また、自らも在職中より投資物件の購入や土地を購入して新築の物件を建てるなど、不動産投資を始め、早期退職を実現。現在はライフプラン、住宅取得、不動産活用、相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行う。