「下げ相場のときは細かなリバランスが必要」って本当?

非常事態に「インデックス投資家」がするべきこと

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日経平均株価やNYダウなど、特定の指数と同じ値動きで運用される投資信託「インデックスファンド」。市場全体に分散投資ができ、運用コストである信託報酬が安い商品も多いため、活用している人も多いだろう。

指数と連動するということは、現在のコロナ・ショックのように株価が下落した状況では、インデックスファンドは危険なのでは? 対策を打つべきか、経済評論家の山崎元さんに聞いた。

株価急落でも投資は“継続”した方がいい

「株価が大きく動いたとき、うまく調整する方法があるならいいのですが、基本的にできることはないと思います。自分にとって適切なリスクを取っていることが確認できていれば、株価が急落したからといって特別に対処する必要はありません」(山崎さん・以下同)

山崎さんがそう話す理由は、「株価が下がり続けることはなく、いずれ上げ相場になるから」とのこと。

「株価暴落の定義は『20%以上の下落』。例えば、アメリカの株価が20%下落したとしても、これまでの傾向から考えると、2年程度で回復するといえます。つまり、ここで投資をやめるより、そのままインデックスファンドへの投資を継続する方がいいというわけです」

インデックスファンドだからこそ“ほったらかし”が◎

株価が下がると不安が増し、ついつい投資商品の買い直しやリバランスを考えてしまうが、それこそが危険だという。

「非常時に対処したら改善すると思っている方がいたら、それは誤解。リーマン・ショックの数年後に投資家から聞いた話だと、『保有していた株を売ってしまった後、買い直すタイミングが得られなかった』という話が圧倒的に多かったのです」

売買するタイミングの見極めは、投資のプロでも困難なのだそう。株価が回復すれば、売却価格より高くなってしまうこともあるからだ。

「株を売買して、マーケットタイミングの賭けに意図的に成功する人は、ファンドマネージャーでもそうそういません。マーケットの先読みは、経験を積めばできるようになるわけではないので、誰がやってもうまくいかないことだと自分を納得させましょう」

さらに、山崎さんは「インデックスファンドで積立投資をしている人は、なおさら途中でやめない方がいい」と話す。

「老後のために所得の一部を貯めておこうと考えてiDeCoやつみたてNISAを使っているなら、マーケットの荒れに焦らず、継続した方が将来のためになる可能性はあります。株価は上がることもあれば、下がることもありますし、長期的に有利だと思っているのであれば、積み立ては続けた方がいい。将来に向けて備える必要性に変わりはないので、そのまま続けましょう」

「下げ相場のときは、細かなリバランスが必要」という説もあるが、実際はどうなのだろうか。

「例えば、資産Aと資産Bの比率が50:50だったものが、52:48になっても、長期的に見れば大きな影響はないでしょう。気になるのであれば、次に投資するときに少ない方に多く投資すればいいだけ。頻繁にバランスを取る必要はないし、そもそもインデックスファンドはバランスのいい商品なので、気にしなくて大丈夫。投資商品をいじると、対処して頑張った気持ちになりますが、必ずしも事態が改善するわけではないので、放っておくことも大切なのです」

ベストな行いは「じっとマーケットに居続けること」

「投資を行ううえでは、“合理的でへそ曲がりなマインドセット”を持つといい」というアドバイスもしてくれた。

「投資をしていれば、不安になることもあります。ただ、投資は不確実なものだからこそ、リターンも高いのです。合理的に投資を捉え、不安になるということはそれだけ可能性もあるんだと思えるくらいのへそ曲がりでいると、投資を続けやすくなると思いますよ」

また、現在のような非常事態だと、さまざまな情報が飛び交うが、疑ってみることも必要だという。

「金融マンや評論家が発信する投資術や投資商品に対して、『本当に儲かるなら、そんな簡単に教えてくれないよな』って、合理的な疑いを張り巡らせることも大切。情報に踊らされず、自分の感情をほったらかすことも、運用を続けるコツのひとつです」

投資しているファンドも自分自身も、ほったらかす勇気が必要なのだ。

「いますぐお金が必要だったり、精神的に耐えられなかったりしたら、投資をストップすることもひとつの方法です。ただ、投資はお金を経済に参加させて利益を得るものなので、大きな金額を長く参加させないとうまくいきません。最初にも言った通り、自分にとって適正なリスクを持って、じっとマーケットに居続けることが、投資家にできるベストな行い。そのうちいいこともあるさ、って思いながら続けることもひとつの手です」

株価が急落すると、不安に駆られて何かしなければと考えてしまうが、「行動を起こさない」という選択肢があることも覚えておこう。
(有竹亮介/verb)

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