J-REITの中長期展望
新型コロナウイルスで急落したJ-REITは買いのチャンス?
提供元:光世証券
中国武漢を発端とする新型コロナウイルスの感染拡大の影響により世界中の株価が暴落し、それまで24000円付近だった日経平均は、3月19日に一時16500円を割り込みました。その後、都市封鎖(ロックダウン)や渡航制限などの感染拡大防止策により感染拡大ペースが鈍化し、主要国の大規模な金融緩和政策や経済対策が効を奏したのか、株価は反発をみせています。
しかし、感染拡大が収束したとはいえず、拡大の第2波、第3波に襲われる可能性も否定できません。また、米商務省が4月29日に発表した1~3月期GDP速報値は年率換算で前期比4.8%減、4~6月期は前期比40%減とリーマンショック以来の大幅な落ち込みが予想されています。日本においても、内閣府が5月18日に発表した1~3月期GDP速報値は年率換算で前期比3.4%減、4~6月期は前期比20%を超える落ち込みが予想されています。
株式市場はすでに反発局面にあるのか、それとも今後2番底を試すのかはわかりませんが、いずれにしても暴落前の株価水準からすると、現在割安になっている銘柄がたくさんあるのは事実です。特に、2月まで堅調に推移していたJ-REITの下落は際立っており、2200ptを超えていた東証REIT指数は3月19日に約半値となる1100pt付近まで暴落しました。もともと分配金利回りの高いJ-REITですが、この暴落により、多くのJ-REITの利回りが5%を超えています。そこで、今回はJ-REITに焦点を当てます。
不動産へ投資するには多額の資金が必要になりますが、その資金を準備するのは容易ではないため、少額から投資できるJ-REITという商品が東京証券取引所に上場されています。J-REITは、多くの投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設などの不動産を購入し、その賃料や売買益を投資家に分配する商品です。東京証券取引所には60以上のJ-REITが上場されていますが、各J-REITは、単一用途特化型と複数用途特化型に大きく分かれ、さらに単一用途特化型は、以下の6つに分けることができます。
・事務所特化型
・住居特化型
・商業施設特化型
・ホテル特化型
・物流施設特化型
・ヘルスケア施設特化型
複数用途特化型はその名のとおり、事務所と住居といった複数の用途を組み合わせたJ-REITです。単一用途特化型J-REITには下表のような銘柄があります。
表1. 単一用途特化型J-REIT
では、今年の2月まで堅調に推移していたこれらのJ-REITは今回のコロナショック前後において、どのように推移したのかみてみます。
図1. コロナショック前後のJ-REITチャート(2020年2月20日を100)
東証REIT指数が直近で高値をつけた2020年2月20日を100とし、各J-REITの終値をグラフ化したものが図1です。日経平均が安値をつけた3月19日までをみてみると、東証REIT指数、各J-REITが日経平均を大きくアンダーパフォームしたことがわかります。
ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)、日本リテールファンド投資法人(8953)に至っては、直近高値から半値以下まで下落しました。さらに、3月24日に東京オリンピック延期、4月7日には非常事態宣言が発表されたことで、ホテル需要の早期回復が見込めず、商業施設は休業を余儀なくされたため、この2つのJ-REITは5月末時点でも安値圏での推移が続いています。
一方、日本ロジスティクスファンド投資法人(8967)、アドバンス・レジデンス投資法人(3269)は、コロナショック前の水準まで回復しています。活動自粛によるEC(電子商取引)需要の増加が見込める物流、不況時での安定性が高い住居に特化しているJ-REITであることが原因だと考えられます。
新型コロナウイルスの感染拡大の収束はまだ見通せず、感染拡大の第2波、第3波も予想されるため、いずれのJ-REITも再度下落する可能性はあります。しかし、各国の中央銀行が金融緩和を拡大し金利の上昇を抑えているため、コロナショックが収束に向かえばREIT市場に資金が戻り始めるのではないでしょうか。目下の危機に耐えられるだけの財務力が必要ですが、中長期視点でみた場合、元々分配金利回りが高いJ-REITには割安感があると考えられます。
個々のJ-REIT以外にも東証REIT指数に連動するETF※もありますので、よりリスクを分散させた投資も可能です。
※東証REIT指数連動ETF
・NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信(1343)
・上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(1345)
・SMDAM 東証REIT指数上場投信 (1398)
・iシェアーズ・コア Jリート ETF(1476)
・ダイワ上場投信-東証REIT指数(1488)
・NZAM 上場投信 東証REIT指数(1595)
・MAXIS Jリート上場投信(1597)
(提供元:光世証券)