「特別定額給付金」以外にも生活を支える術はたくさんある!

「コロナ禍」に生活を維持するための個人向け支援制度をチェック

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新型コロナウイルス感染防止のため、外出自粛や休校が長く続いたことで、休業や離職を余儀なくされている人もいるだろう。そうなれば収入もなくなり、将来に対する不安は尽きないものだ…。

しかし、国や自治体による支援制度があることを忘れてはいけない。個人向けにどのような制度が備えられているのか、ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子さんに教えてもらった。

「特例貸付」は“実質給付”になる可能性あり

「支援の1つ目は、ニュースでも連日取り上げられている『特別定額給付金』。コロナウイルスの感染や休業、離職に関係なく、国民全員が1人10万円ずつもらえる給付金です」(川部さん・以下同)

特別定額給付金
基準日(2020年4月27日)に、住民基本台帳に記録されている人に対して、1人につき10万円支給される。申請方法は2つあり、1つは「郵送申請」。自治体から世帯主宛に申請書が届き、記入した書類を自治体に返送すると支給される。もう1つは「オンライン申請」。マイナンバーカードを所持していれば、マイナポータルから電子申請できる。申請期限は、郵便申請方式の申請受付開始日から3カ月以内。

「もれなく受け取れる給付金なので、忘れずに申請しましょう。『オンライン申請』に対応できていない自治体も多いようで、迅速さは期待できなさそうです。もし、1人10万円では生活費をカバーできなければ、社会福祉協議会が提供している『特例貸付』を活用しましょう」

特例貸付
休業や離職によって生活資金がまかなえない人向けの制度で、以下の2種類が実施されている。

・緊急小口資金
一時的に少額の費用が必要になった世帯向けに、無利子・保証人不要で借りられるもので、貸付上限額は原則10万円以内だが、新型コロナウイルスの影響での休業などにより収入の減少があった世帯は20万円以内になる。償還期限は2年以内。

・総合支援資金
生活再建までに時間を要する世帯向けに、無利子・保証人不要で、原則として最長3カ月連続で借りられるもの。貸付上限額は単身世帯で月15万円以内、2人以上の世帯で月20万円以内。償還期限は10年以内。

「コロナウイルスによる特例措置で、借りてから1年経ったときにも所得が低いまま(住民税非課税世帯に該当するレベル)だった場合、償還(返済)は免除され、実質給付になります。条件もそこまで厳しくないので、ピンチであれば都道府県の社会福祉協議会に問い合わせてみましょう」

スマホ料金や光熱費は支払いを待ってもらえる

「家賃やスマホの料金など、家計に大きく影響する固定費の支払いが滞りそうな場合も、支援・猶予してもらえる可能性があります」

住居確保給付金
離職・廃業から2年以内または休業によって収入が減り、離職等と同程度の状況にある人に、家賃相当額を支給する制度。支給額は自治体によって異なり、東京23区の目安は単身世帯で月5万3700円、2人世帯で月6万4000円、3人世帯で月6万9800円。原則3カ月間だが、状況に応じて3カ月延長(最長9カ月まで)することも可能。

ただし、支給要件には収入要件と資産要件があり、やや厳しい。収入要件は、例えば東京23区の場合、目安としてひと月の世帯収入合計額が単身世帯で13万8000円、2人世帯で19万4000円、3人世帯で24万1000円を超えないこと。資産要件は、世帯の預貯金合計額が単身世帯で50万4000円、2人世帯で78万円、3人世帯で100万円を超えないこと。加えて、誠実かつ熱心に求職活動を行うことも求められる。

「『住居確保給付金』はもともと離職・廃業後2年以内の人向けに存在していた制度ですが、現在の状況を踏まえて対象が拡大化し、休業によって収入が減少した人も使えるようになりました。条件は厳しいのですが、貸付ではなく給付なので、返済する必要はありません。申請が完了すると、自治体から大家さんに直接支払われるところが特徴です」

公共料金の支払い猶予
電気、ガス、水道、NHK、固定電話などの使用料の支払いが困難な場合、事業者に申し出ると、支払いの猶予や期限の延長といった対応をしてもらえる。場合によって、減額されることもあるそう。

「国が各事業者に支払い猶予の要請を出しているので、各社同じ条件で受け付けています。携帯電話の料金も、大手3キャリアでは支払期限の3カ月延長を実施しています。どの事業者も申し出を行わなければ、猶予や期限延長にはなりません。ホームページなどで申請方法を確認しましょう」

個人事業主は国民健康保険料減免の特例も

収入が減少している個人事業主は、国民健康保険や国民年金の保険料を減免してもらえるそう。

国民健康保険料免除の特例
「前年よりも収入が7割以下に落ち込む見込み」「合計所得金額(収入から経費と基礎控除額を差し引いた金額)が1000万円以下」「株式の配当などその他の所得が400万円以下」の3つの要件を満たす個人事業主は、国民健康保険料が一部免除される。

また、世帯主(主たる生計維持者)がコロナウイルスに感染し死亡、または重症となった場合は、対象となる保険料が全額免除になる。

国民年金保険料免除の特例
2020年2月以降に収入が減少し、所得が相当程度まで下がった場合、国民年金保険料の全部または一部が免除、猶予になる。

「年金保険料が払えないからといって放置してしまうと『未納』になり、年金受給に必要な加入期間に達しないおそれがあります。しかし、『免除』であれば、保険料を納めていない期間も加入期間としてカウントされるんです。保険料を捻出できなければ、必ず自治体の国民年金担当窓口で免除の申請を行いましょう」

公的制度を調べ、駆使することが重要

教えてもらった制度以外にも、コロナウイルスの影響を受けて新設、変更された制度があるとのこと。

「『令和2年度子育て世帯への臨時特別給付金』として、児童1人につき1万円が自治体から支給されます。児童手当の受給者はもれなく対象です。また、民間の話ですが、大手生命保険各社は、ホテルや自宅での療養も入院給付金の支払い対象とすることを決めました」

調べれば、自治体や業者ごとにさまざまな制度がありそうだ。収入が減った不安で焦ってしまうが、冷静に情報収集することが重要といえそうだ。

「生活が立ち行かなくなったとしても、自己破産や生活保護という救済策があります。絶対に生きていける仕組みがあるので、不安で疲弊してしまう前に、いろんな制度を知って、駆使してほしいですね。わからないことがあれば、自治体の担当窓口でもお金の専門家でもいいので、相談しましょう」

収入が減っていないとしても、制度内容や仕組みを把握しておいて損はないだろう。外出自粛で時間ができている今こそ、国や自治体の制度について知るチャンスかもしれない。
(有竹亮介/verb)

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