在宅期間中の「定期代」は返却しなきゃダメ?

「テレワーク」にまつわるトラブル&サポート事例

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新型コロナウイルスの影響で、テレワーク(在宅勤務)に移行した企業は多い。スピーディーな対応を求められたため、企業と従業員の間でトラブルが生じているケースもあるようだ。

一方で、従業員のために手厚いサポートを用意する企業も出てきている。ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士の川部紀子さんに、テレワークにおけるトラブル&サポートの事例を聞いた。

テレワーク期間の「定期券代」は返却するもの!?

テレワークに関するトラブルといえば、定期券代の問題が話題になった。企業側から、「3月に支給した6カ月分の定期券代を、今後の給料から天引きするかもしれない」という通達があったというケースだ。

確かに、テレワークになれば定期券代は必要ない。その分を返却してほしいという企業側の気持ちはわからなくはないが、返さなければいけないのだろうか。

「結論としては、返却しないで大丈夫でしょう。企業が、就業規則や労働契約書に記載のあることや従業員との合意のうえで決めたことを『やっぱりやめる』と言うのは、非常にハードルが高いからです。『労働条件の不利益変更』という問題に当たる可能性があり、従業員の合意または就業規則の改定が必要になるでしょう。定期券代に関しても、後で取り消すことは非常に難しいのです」(川部さん・以下同)

ただ、先の事例にもあったように、強制的に給料から天引きされてしまうこともあるのでは?

「給料から勝手に天引きすることは、労働基準法に抵触します。給料には『全額払いの原則』があり、基本的に一度決めた額から勝手に減らすことはできません。例外として天引きできるものは、税金と社会保険料くらい。だから、既に支払っている定期券代を、給料から引くこともNGです」

テレワークで残業したら「残業代」は出るの?

テレワークの流れは今後も続いていくことが予想されるが、「これからは休憩、休日、時間外労働のトラブルも出てくるでしょう」と川部さんは話す。

「テレワークになったことで上司の監視の目が気になり、休憩が取りづらいと感じる方もいると思いますが、労働基準法で8時間の労働には1時間の休憩が義務づけられています。また、断続して取るのはダメで、1時間まとめて取らなければいけません。その間はPCの電源を切って、寝たり出かけたりしても問題ないんです。堂々と休憩を取りましょう」

さらに、テレワークであっても、残業は忘れずに申告すべきとのこと。

「在宅であっても、残業代が出ることは変わりありませんし、会社には始業・終業時刻を管理する義務があります。終業時間を過ぎても仕事が残っていた場合は、終わったタイミングで上司に『今終わりました』と一報入れましょう」

企業によっては、テレワーク用のPCのログアウトの時間が記録される仕組みを導入しているところもあるようだ。その場合は、申告しなくても企業側で対応してくれるだろう。

「現在は新型コロナウイルスの影響で、仕事量が減っている方が多いでしょうから、テレワークでのトラブルは少ないかもしれません。ただ、今後はテレワークを継続したまま、仕事量が増える可能性があるので、休憩や残業に関して注意していく必要があると思います」

従業員に「電気代・通信費」を支援する企業も

テレワークによるトラブルが懸念される一方、企業が従業員をサポートしている事例もある。例えば、インターネット上でエンタテインメントコンテンツを提供しているドワンゴでは、全社員を対象に「電気代・通信費等手当」を支給することを発表。ラバブルマーケティンググループは、テレワークに向けて全社員に補助金13万円を支給。

報道ベンチャーのJX通信社は、緊急事態宣言を受けて、ゴールデンウィーク中の休暇を営業日とし、その分の振替休日をコロナ感染収束後に取得できる「GW延期による特別休暇制度」を新設した。

「テレワークでも問題ないと気づいた業種、企業、働き手の方はたくさんいます。そのため、今後さらに手厚いサポートが出てくる可能性は高いといえるでしょう。働き手としても選択肢が増えますし、介護や子育てをしながら在宅でできる仕事がさらに多くなると考えられます」

働き手としてはありがたい限りだが、企業側の負担が増えるばかりなのではないだろうか。

「コロナ禍になる前から、働き方改革の一環で『働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)』という制度があるんです。事業者に対して、テレワークに必要な備品を揃える費用の一部を国が支給してくれるもので、この助成金があれば、従業員のサポートも行いやすくなるでしょう。勤めている企業でテレワークを進める予定があれば、企業側にしっかり活用してほしい制度といえるでしょう」

テレワークをスムーズに進めるには、企業側のサポートは必要不可欠。トラブルを回避するため、労働に関する知識を蓄えておくことも重要といえそうだ。
(有竹亮介/verb)

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