「障害者手帳」と「障害年金」はまったくの別物!?
知っておくと安心! 障害者のための支援
何不自由なく生活していたとしても、自分や家族が不慮の事故や災害などで障害を負ってしまうことがないとは言い切れない。そうなれば、日々の生活が一変してしまうだろう。医療費や介護費用などを含め、金銭的な負担が大きくなることも予想できる。
障害者のための支援は、どのようなものがあるのだろうか。ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士の川部紀子さんに、国や自治体が提供する支援と、そのために必要な「障害等級の認定」について聞いた。
「等級」「年齢」「障害の種類」で支援内容は異なる
「障害者向けの支援を受けるには、『障害等級の認定』が必要です。等級は1級から7級まであり、認定されると『障害者手帳』が交付されます」(川部さん・以下同)
自治体から発行される「障害者手帳」を持っていると、公的な支援はもちろん、民間のサービスも利用しやすくなるという。ただし、注意点があるそう。
「受けられる支援の内容は、障害等級、年齢、障害の種類や部位によって変わります。障害の種類とは、身体障害、知的障害、精神障害の3つです。それぞれどのような支援が受けられるか、住んでいる自治体に確認しましょう」
脚に障害がある人は「自動車税」が免除に
支援内容は人によって異なるとのことだが、具体的にはどのような支援が受けられるのだろうか。
「一概には言えませんが、『障害者手帳』を持っていれば、医療費が1~2割負担になることがほとんど。交通の支援には力を入れている自治体が多く、タクシーチケットや定期券を無償で受け取ることができます」
脚に障害を持つ人の場合、自分や家族の車は重要な交通手段になるため、自動車税が免除になることがあるそう。さらに、事前に申請していれば、路上駐車の許可も下りるのだとか。
同じく交通機関である飛行機や新幹線には、障害者割引が存在する。その要件は企業によって異なるため、確認が必要だ。
「民間のサービスでも、障害者に配慮したものがあります。例えば、生協やらでぃっしゅぼーやなど、食材の宅配サービスは、送料が無料になることが多いですね。知らずに送料を払い続けていた場合、一定期間の分を返金してくれた企業もあるようですよ」
また、ほとんどの映画館でも障害者割引が存在する。その内容は映画館によって異なり、障害者本人と介助者2人まで半額になる施設も。映画館以外の施設でも割引を実施していることがあるため、調べてみるといいだろう。
「障害年金」は独自の支給要件がある
一定の障害があると診断されれば「障害年金」が受け取れるようになるが、その申請も「障害者手帳」があればできるのだろうか。
「自治体が交付する『障害者手帳』と、国が支給する『障害年金』は別物です。『障害者手帳』の等級に即して年金が支給されるわけではなく、『障害年金』には独自の要件があります。イコールだと思わないことが大切です」
「障害年金」でまず確認すべきは、初診日。障害の原因となった病気やケガで、初めて医療機関を受診した日のことで、この初診日が国民年金または厚生年金保険の被保険者期間中であることが、支給要件の1つとなる。
そして、障害の状態によって支給額が変わる。「障害基礎年金」には1級、2級、「障害厚生年金」には1級、2級、3級、障害手当金という等級が存在し、障害の状態によって異なるのだ。
「もっとも大事な要件は、年金保険料を支払っていること。『障害年金』も、老後に支給される『老齢年金』と同じ年金なので、年金保険料未納の場合は支給されません」
支給要件は、「障害基礎年金」「障害厚生年金」ともに次のように定義されていて、どちらかを満たす必要がある。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
「年金は高齢者だけのものではなく、若い人でも『障害年金』を受け取る可能性はあります。未納だけは絶対に避けるべきです」
万が一障害を負ってしまっても、金銭面のサポートがあると多少は安心だ。ただし、年金保険料の納付だけは忘れずに。
(有竹亮介/verb)
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川部紀子
FP・社労士事務所川部商店代表、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。日本生命保険相互会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・プランニングに携わる。2004年、30歳の時に起業。個人レクチャー・講演の受講者は3万人を超えた。著書に『まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる! お金の貯め方・増やし方』など。