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豊富なメニューのミールキットが人気

コロナ禍の食事に、安全と楽しさをもたらす「Oisix」

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コロナ禍で、家で食事を取るケースは増えてきたはず。そんな状況下で伸びているサービスがある。食品の定期宅配サービス「Oisix(オイシックス)」だ。

有機野菜などの安全・安心にこだわった食材や、その食材をもとにして簡単に主菜・副菜を作れるミールキットを毎週届けるもので、この時期に増えた“内食”のニーズに応える形となった。

「リモートワークや休校により、平日の昼食も家族そろって食べるケースが増えました。とはいえ、仕事をしながら家族全員の食事を作るのは簡単ではなく、かといって家族の食事を『適当に済ませたくない』という気持ちもあります。こういった背景から注文が増えたと言えます」

そう話すのは、サービスを運営するオイシックス・ラ・大地の西根渡氏。ただし、この人気は一過性ではなく、6月以降もOisixの人気は継続している。こうした状況から、西根氏は今後、家で食べる「内食」の概念が変化してきていると考える。

アフターコロナにおいて内食はどう変わり、Oisixはどんな存在となるのか。西根氏に聞いてみた。

人気のミールキットは「調理時間20分」にもヒミツが

Oisixの大きな特徴は2つ。食材の「安全性」と「宅配」である。まず安全性については、扱う食材に対し厳格な安全基準を設けている。ホームページにも内容は細かく載っており、使用を認めている食品添加物の一覧などを確認できる。

さらに、食材の生育・栽培方法についても、徹底した基準がある。国産農作物なら、無登録農薬は使用禁止。農薬使用の場合は、目的の明確化や残留性の少ない農薬の優先使用などが義務付けられている。

「これらの基準に添い、農家一軒一軒と直接契約して食材を調達。独自の調達ネットワークを開拓してきました。Oisixはお客さまも基本的に会員制であり、本当の意味で生産者と会員さまの顔が見える、両者のつながりを構築してきたのが特徴です」

同社はOisixのほか、「大地を守る会」や「らでぃっしゅぼーや」といった事業も行っている。ともに有機農産物の宅配事業であり、実はOisixより歴史が古い。これら3つの事業において、生産者とのつながりを培ってきた。「このネットワークは一朝一夕ではできないものです」と西根氏は語る。

さらに同社は、第三者の立場で中立に食材を監査する「食質監査委員会」も設置。食品の採用・不採用を決定する権限を持っている。

こうして食材の“安全性”を担保した上で、それを「宅配」するのがもうひとつの強みだ。

「安全な食材を取り扱う場所は増えていますが、それを広範囲に、この会員数の規模で宅配している企業は少ないと思います。特に食材の宅配は、温度管理や劣化対策など、技術的なハードルが高い。安心・安全を基本にするOisixだからこそ、その部分のノウハウを探求してきました」

食材の宅配サービスは、利益化が難しいビジネスでもある。食材1つの単価は低く、運送コストに見合う売上を出すのは簡単ではない。結果、1回につき2000円以上のお買い上げなど、「最低購買価格」を設けるケースも多い。

一方、Oisixは会員制であり、毎週宅配するサイクルができている。「売上と運送コストの収支計算がしやすく、安定した事業になっている」という。

数ある商品の中で、特にユーザーから人気が高いのがミールキットだ。主菜と副菜の献立1食分に対して、必要な食材と調理行程を書いたレシピがセットになっている。簡単な調理をすれば出来上がるもので、20分ほどで作れるという。

「主婦の方に悩みをヒアリングすると、料理を作る手間以上に、献立を考えるツラさを挙げられました。その課題も解決できるのがミールキットです。メニューは毎週20個以上用意しており、飽きずに注文できます」

加えて「20分の調理時間」もポイント。まったく手を加えない料理を出すとなると、家族への罪悪感を抱く人もいる。ほどよい調理時間があることで、その点が解消されるという。

休業中の飲食店サポートで始めた取り組みが、思わぬ反響

そんなOisixは、4月から5月にかけて注文が大きく伸びた。もともと、食への安全意識の高まりやECの隆盛で会員数は増えていたが、コロナ禍で急伸。また、ミールキットも以前は2人用が売れていたが、この期間は3人用の伸びが顕著に。リモートワークや休校で、家族そろって食事するケースが増えたことを示しているのだろう。

面白いのは、6月以降もユーザーの人気が高いこと。需要は“一時的”になっていない。この点から、西根氏はアフターコロナでも「内食」のニーズが続くと予想する。

「リモートワークを継続する企業は多く、今後、家で食事する時間は増えていくでしょう。一方、コロナによって人々の健康意識も上がり、食生活を正して基礎的な免疫を上げたいという心理も強くなっています。緊急事態宣言下のピークからは元に戻りつつあるものの、安全な食品を宅配するニーズは、ビフォアコロナと比べ、多少底上げされた状態が維持されていくのではないでしょうか」

さらに、人々のニーズは、ただ家で食べるだけでなく「内食をどう楽しむか」に進化していくと考える。その兆しを感じたのが、5月にスタートした「Oisixおうちレストラン」の反響だ。

「串カツ田中」や「塚田農場」など、人気店の食材をセットにして宅配するサービス。もともとは「同じ飲食業界の仲間として、休業中のお店を少しでもサポートしたかった」と、西根氏は経緯を話す。だが、始めると想定以上にユーザーからの引き合いがあった。

「自由に外食できない中で、お店のメニューを家で食べられる点がフィットしたのだと思います。自粛疲れもあったでしょう。そこから感じるのは、今まで外食にあった『特別感』を、今後、家で味わう流れも出てくるかもしれません。内食が増えるからこそ、形も多様化するはず。これからは、楽しめる内食、特別感のある内食を提案していきたいですね」

ハレの場の食事といえば外食だったのが、ハレの場の内食も増えるかもしれない。飲食店にとっても、店舗に呼び込むだけでなく、自分たちの食品を届けるというニーズが見えてきたと言えよう。

安全・安心の宅配に力を入れてきたOisix。さらに今後は、「楽しい内食」の可能性を模索していく。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2020年7月現在の情報です

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