ニーズやヒットの最先端がわかる場所
Makuakeが示す、コロナ後は「流行なき十人十色の時代」
コロナ禍で私たちの生活や習慣、価値観に大きな変化が生まれた。それにともない、これから世の中にはさまざまな新しい商品、サービスが出てくるだろう。
その兆しが如実に表れている場所が「Makuake(マクアケ)」だ。完成前の新商品や新サービス、新店舗が掲載され、ユーザーは“応援購入”として先行予約購入ができる。主な概要は以前紹介したが、直近は「ウィズコロナ」や「アフターコロナ」の世界を予感させる“新しいもの”が続々と登場している。
その動きを踏まえて、コロナ以降は、人々の好みや価値観がより多様化する「流行なき十人十色の時代になる」と語るのは、マクアケ代表取締役社長の中山亮太郎氏。この状況下で、一体どんな新商品が生まれているのか、そしてなぜ、人々の価値観はより多様化するのか。中山氏に尋ねてみた。
飲食店は、デリバリーに続く新しい“進化”へ
取材の冒頭で「まさに今、人々のニーズを捉え直し、新しいものを投入する時期に入っています」と切り出した中山氏。コロナ禍でライフスタイルは大きく転換し、今後数年間は「新商品のカンブリア紀になるのではないか」と、大胆に表現する。
実際、Makuakeのプロジェクトを見ると、アフターコロナの世界を象徴する新商品や新サービスが増えている。たとえば飲食店では、自社の人気商品の「通販」や「お取寄せサービス」をスタートしている。
「高級イタリアンとして知られるSALONEグループでは、人気のパスタソースを真空パックし、同店で使うパスタ麺と一緒に送るプロジェクトを始めています。これまでは来店しないと食べられなかった人気料理を通販で届ける『飲食店の通販化』が増えてきました」
そのほか、“予約3年待ち”と言われるレストランのシェフ・長谷川稔氏が手がけるチーズケーキも、注目を集めるお取寄せ商品のひとつ。飲食業界が“新しい届け方”に取り組んでいる事例だ。
「コロナ禍の中で、飲食店のテイクアウトやデリバリーが急増しましたが、すでにその次の通販へと進化を始めています。デリバリーに比べて、通販ならより広範囲に届けられますから。来店での提供をメインにしていたお店が、通販の可能性をどこまで見いだせるか。そのチャレンジの場としてMakuakeは役に立つはずです」
なお、こういった新たな試みにおいて、Makuakeはプロモーションの面でも効果を発揮するという。仮に大企業が大量生産する新商品は、コストをかけてマスメディアへの広告を打てるが、店舗レベルの新商品はそうはいかない。少ない予算の中、限られたPRを行うのが一般的だ。
その際、「我々のサイトには新しいものを求めるユーザーが集まるので、省コストかつ効率的に認知を取ることができます」と中山氏は説明する。
飲食店以外の動きでは、キッチン用品の応援購入額が伸びたという。自粛期間をきっかけに「家の中をより豊かにしたいというニーズが強くなっている」と中山氏。そのほか、マスク需要が伸びているのは周知の通りだが、あわせてマスクの除菌ケースが人気を集めているという。サイト内トータルで「2億円以上の応援購入額になりました」と付け加える。
こういった話を聞くと、Makuakeが人々のニーズや市場動向の最先端を表す場になりつつあるとも感じる。
「未来のトレンドを予測する場として、ヒットの兆しをつかむ場所として、サイトを見ていただくことも増えています。我々としても、どんなものがヒットするのか、データを定量・定性で溜めていき、事業の進化に還元していきたいですね」
デジタル滞在時間の増加によって、どんなニーズが生まれるのか
では、アフターコロナにおいて、人々のニーズやマーケットのトレンドはどう推移するのだろうか。中山氏は「流行なき十人十色の時代が来るのではないか」と言う。
「つまり、コロナによって趣味嗜好の多様化に拍車がかかり、各々のこだわりに深くマッチした多種多様な商品が売れていくのではないでしょうか。大流行が起きるより、個々人が自分の愛する一品を選ぶ傾向が強くなる。そんな意味で、流行なき十人十色の時代が来ると思うのです」
こう予測する背景として、リモートワークや家で過ごす割合が高まり、デジタル滞在時間が増加する点を挙げる。デジタル上では一人一人の属性や購買、行動履歴に基づいて最適な情報が『パーソナライズ』されるため、自分の趣味嗜好に合った接点を見つけやすい。それは、自らの興味や関心に対する肯定感につながる。
すると、十人十色の趣味嗜好が、それぞれの方向へ伸びていく。結果、昔のような大流行のヒット商品よりも、多種多様なものが売れると中山氏は考える。
「コロナ前から、SNSの台頭により趣味嗜好の多様化は起きていました。アフターコロナでは、さらにその動きが加速すると思います」
ただし、多様化する購買行動にも“共通点”は出てくるかもしれない。中山氏は「機能や価格よりも、商品の背景やストーリー重視の傾向が強くなるのではないか」と予測する。
「最近、Makuakeを訪れるユーザーのサイト滞在時間が延びており、皆さんが各プロジェクトの説明やストーリーをじっくり読んでいることがわかります。機能や価格の差別化が難しくなる中で、多様な個人のこだわりは、商品のストーリーや関わる人への共感に向かっているのでしょう。今後、人々の可処分所得の行き先を考える上で、共感はキーワードになると思います」
応援購入という言葉を使うのも、まさにストーリーや関わる人への“共感”をセットで買う行為と考えているからこそ。その価値観は、アフターコロナの中でより重要になるかもしれない。
多種多様な価値観が生まれ、それに合致した商品が求められていくー。この状況になればなるほど、たえず新しいものにチャレンジし、彩り豊かな“新しい”を生みだす場所が必要。流行なき十人十色の時代に、Makuakeはますます鮮やかな色を放っていく。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)
※記事の内容は2020年7月現在の情報です