決済アプリやECサイトで金融商品が買えるようになる…かも?

「金融サービス仲介業」が僕らの生活に与えるメリット

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金融商品販売法の改正案が国会で成立し、「金融サービス仲介業」が創設される。金融機関に属さずに、銀行・証券・保険といったサービスや商品を仲介できる業態で、身近なところにも影響が出てくるようだ。

そこで、「金融サービス仲介業」の登場で考えられるメリットを、野村総合研究所 金融イノベーション研究部の竹端克利さんに聞いた。

法改正によってビジネスの幅が一気に広がる

「仲介業への参入を検討する企業にとってのメリットは、1回の登録で銀行・証券・保険など、すべての仲介ができるライセンスが取れるようになることでしょう」(竹端さん・以下同)

これまでは銀行・証券・保険という具合に、分野ごとにライセンスが存在したが、一本化されることにより、ライセンスの登録負担が軽減されるのだ。

「そして、金融機関に所属しなくてよくなることも、大きなメリットといえます。これまであった『所属制』を採らないことで、利用者保護のための責任を仲介業者が負うことになりますが、その分、複数の金融機関のサービスや商品を扱いやすくなります」

2つのメリットがあることで、ビジネスの形が大きく変わるという。単純に仲介して販売するだけでなく、家計簿アプリの履歴をもとに、おすすめの金融商品をアプリ内に表示し、購入につなげるといったこともできるかもしれないのだ。

「これまで『所属制』により金融機関が負っていた賠償責任が、改正後には仲介業者にかかってくるので、仲介業者にもそれなりの体力・資力が求められます。そのため、新規参入するのは個人事業主や小規模事業者ではなく、既に顧客基盤を持つ大きなプラットフォーマーではないかと考えられます」

竹端さん曰く、「家計簿アプリやクラウド会計ソフトといったフィンテック関連のサービスに限らず、決済アプリや比較サイト、ECサイトなども参入してくるかもしれない」とのこと。

多様な企業の参入で“金融”がより身近な存在に

竹端さんの予想通り、さまざまな企業が仲介業に乗り出し、普段使っている決済アプリやECサイトで金融商品を購入できるようになれば、投資や運用に対するハードルがかなり下がりそうだ。

「それこそ、ユーザーにとってのメリットだと考えられます。決済アプリやECサイトが参入し、いままでになかった親しみやすいインターフェイスで金融商品を並べることで、これまで金融と縁がなかった方が興味を抱く可能性が出てくるのです。金融サービスを扱う顔ぶれが変われば、裾野は広がりますよね」

これにより、株式や投資信託、保険など、種類の違う金融商品をワンストップで比較し、選択できるサービスが出てくるかもしれない。販売力の強さだけでなく、手数料が低いなどの本来の金融商品の“スペック”がより重要視されるだろう。ひいては、 ユーザーの資産形成にとってメリットがあるといえそうだ。

もちろん、前述したように、家計簿アプリやクラウド会計ソフトなど、家庭や企業の財務状況と紐づいたサービスが仲介業に参入することも考えられる。そうなれば、その家庭や企業にマッチしたサービス・商品が提供されるため、ある程度絞られた状態から検討していけるというメリットもある。

「各業界のルールがあるので、実際に参入できるかはわかりませんが、SNSやメディア、教育の分野も手を挙げたら、面白くなるでしょうね。日常的に見ているサイトやアプリで金融商品を買えたら、さらに手を伸ばしやすくなると思います」

法律が成立したばかりで細かい部分はこれから決まっていくようだが、「新たな金融サービス仲介業」がスタートしたら、お金との向き合い方も変わっていきそうだ。

2種類の「金融サービス仲介業」が並走

「当初私は、この制度改正はわかりやすい『フィンテック振興策』だと捉えていました。ところが、5月27日の衆議院の委員会質疑で、麻生太郎金融担当大臣は『90社超が参入に関心を示している』と答弁されています。もちろん、この約90社すべてが正式に参入を決定しているわけではないと思いますが、麻生大臣のこの答弁を見て、いわゆるフィンテックと呼ばれる企業だけでなく、もっともっと幅広いプレーヤーが関心を寄せているのかもしれない、と思いました」

ただ、「新たな金融サービス仲介業」が始まるからといって、現在の代理業や仲介業がなくなるわけではないそう。

「保険代理店など、銀行・証券・保険それぞれの分野で金融機関1社または数社に所属している代理業や仲介業も、これまで通り続いていきます」

懇意にしている保険代理店が、急に業態を変えるということはなさそう。いままでと同じように、保険代理店経由で保険を契約することもできる。

「新たな金融サービス仲介業」が本格始動するのは、もう少し先になりそうだが、生活に密着したところで変化があるはずだ。どの企業が参入し、どのサービスが変化していくか、楽しみに待つとしよう。
(有竹亮介/verb)

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