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【杉村太蔵さん】投資は面白い大人になるためにすべし!投資先企業を選ぶときの基準にしたい本『競争戦略論』

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投資家としての一面も持つ各界のトップランナーに、投資への想いとオススメの本を訊く、こちらの企画。今回登場いただくのは、忖度なしの鋭いコメントで、最近ますます注目されるタレント、杉村太蔵さん。時給800円の清掃員から外資系証券マン、国会議員と異色の経歴を持つ杉村さんですが、なんと投資で資産1億円を築いた強者なのです。その経験をもとに語る投資の本質、そして投資スタイルに影響を与えた一冊を教えてもらいます。

投資の最大のリターンは“面白い大人”になれること

――杉村さんは、証券会社勤務の経験をお持ちとのこと。現在も、個人で投資を続けていらっしゃるそうですが、杉村さんなりの“投資の心構え”を教えていただけますか?

杉村:私が伝えたいことは、たったひとつ「金儲けのために投資をするな」、これに尽きます!

――それは、なぜでしょう?

杉村:投資の魅力は、利回り何%とか額面では表すことができないからです。そんなことはね、ものすごく小さなことなんですよ。投資ってものが何なのかがまったく分かってない。投資によって確実に得られるリターンがあるわけで、それが大事なんです。

――そのリターンとは?

杉村:「知識」です。投資をはじめると、社会や経済に関心を持ちます。それによってさまざまな知識が増えていきます。たとえば、いまコロナ禍ですが、航空会社の株でも買ってみてください。そうするとコロナが終息したら、国際情勢が気になるはずですよ。それにより、世の中や政治がどう動くのか学ぼうとしますよね。そうした知識を増やしていくと、“面白い大人”になる。このことこそ、投資がもたらす最大のリターンです。

――杉村さんが考える“面白い大人”とは、どのような人ですか?

杉村:逆の“つまらない大人”を考えてみましょう。金融や経済の話がまったくできない大人をどう思いますか? こんなつまらない大人はいないでしょ。じゃあ、たとえば飲み会で「日本電産の決算はすごかったですね」「ソフトバンクはこれからどうなるんでしょうね」とか、話せたらどうでしょう? 「なんだその話題は」と興味を持ってもらえますね。

――確かに話題の幅が広いと、いろいろな人に面白がってもらえそうです。

杉村:情報が頭に詰まっている人と、そうじゃない人は会話に差が出ますよ。情報が乏しい人は、自分の世界が狭いもんだから趣味や仕事とか、限られた話題しかしゃべらなくなる。そうすると、30代以降に人生の豊かさに差が出ちゃうと思いますね。

――なるほど。ただ、最近は老後不安から将来の資産形成のために、投資を検討する人も増えていると思うのですが、その考え方はどうでしょうか?

杉村:老後の生活費のために投資をはじめるのは、違和感があります。だって減るかもしれないんですよ? もちろん、長期運用に向いている投資法はあります。でも、いま35歳の人が65歳になったとき、リタイアのために保有資産を売却したいと思ったとしても、世界がリーマンショック級の不況に見舞われるかもしれませんよ?積み上げた資産を元に戻す頃には、80歳を過ぎてしまうかもしれません。

――その可能性はありますよね……。

杉村:いずれにしても、老後の生活資金のためだけに投資をするリスクについても、しっかり検討する必要があると思います。

――では、どのようなスタンスで投資をはじめるのがベストでしょうか?

杉村:そもそも投資家は企業の応援団。企業に頑張ってほしい、成長してほしいという想いが必要です。この企業が販売している商品が広まれば世の中がもっと良くなる、社会が良くなるはずだと思えるかどうかです。最近は、ESG投資なども注目されていますが、環境に配慮している取り組みをしている企業を応援する傾向も出てきています。そうした企業に共感し、応援したいと思い、かつお金に余裕があるなら投資をすればいいんですよ。

投資先企業を見極める視点を与えてくれた『競争戦略論I』

――では、杉村さんの投資スタイルに影響を与えた書籍をご紹介いただけますか?

杉村:ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授が書いた『競争戦略論I』です。この本に出会ったのは、僕が証券会社に勤めていた頃。どちらかというと、経営者向けの本ですが、とりわけ経営戦略の理論「5つの競争要因」は投資判断の基準にしています。

――「5つの競争要因」とは、どのようなものでしょうか?

杉村:これは、企業の競争の性質を決める要因を5つに分類した考え方です。その5つとは、「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「既存企業間の競合」「サプライヤーの交渉力」「買い手の交渉力」です。ポーター教授は、この競争要因が収益性を左右すると書いています。

――具体的に、この「5つの競争要因」をどう活用して投資判断をするんですか?

杉村:たとえば、Appleで考えてみましょう。「新規参入の脅威」は市場シェアを奪おうと追随する企業が多いので“脅威が迫っている”かもしれません。「代替品の脅威」は格安スマートフォンも増えているので、こちらも“脅威が迫っている”と考えられそうですね。となると、Appleはこれから先も業界で優位に立ち続けられるのだろうかと分析していくわけです。

――なるほど。そうした基準があると企業の情報を整理しやすそうです。

杉村:「サプライヤーの交渉力」「買い手の交渉力」は分析が難しいかもしれません。ただ、私は、「新規参入が難しく、代替品もなく、既存企業の中でも優位な経営状態かどうか」で業界や企業の先を読む視点を持つようにしています。『競争戦略論1』は投資の手法が綴られた本ではありませんが、投資をするうえで大切な視点を与えてくれる本だと思います。

――しかし、400ページを超える大著とあって、相応の読解力が必要ですよね。

杉村:これが読めないんだったら、投資はしない方がいいですよ。

――書かれている内容が理解できないようでは、投資には向いていないということですか?

杉村:この本を読むには知的好奇心と、ある程度の読解力が必要です。両方ともないようなら、投資には向かないと思いますね。というのも、たとえば株式投資をするためには、企業のHPは必ず見なくてはいけません。その際、どこを見るべきかというと、トップのメッセージや経営戦略です。今後のビジョンがいまいちよく分からないと思うなら、投資するべきではありません。ただ、読む方にも然るべき読解力が必要です。読んでも分からなかったら、どうしようもないですよ。

――確かに、「よく分からないものには投資しない方がいい」と言われますが、理解したうえで分からないのか、そもそも読み解けていないのかは別問題ですよね。

杉村:企業の中身が分からなくても、数字的な分析ができればいいって人もいるけど、そんなの個人投資家がやって成功するのは難しいですよ。そうではなく、きちんと経営戦略を読む。そのためのモチベーションになるのが知的好奇心であり、自分の頭で理解する能力が読解力ですから。

――知的好奇心はあっても、読解力に自信がない人はどうすれば?

杉村:読むことをやめないことです。HPをずっと見続ければ、変化も分かってきますから。あと、本をたくさん読めば投資に強くなるわけでもないと思いますが、売れている本を読むといいかもしれませんね。売れてるってことは、みんなそれなりに読んで感想を言って、広めてるってことですから。僕もビジネス書ランキングの上位は、とりあえず読んでます。投資本に絞らず、乱読した方がいいですね。

――なるほど。

杉村:あと、投資家に一番求められることって何だと思います?

――何でしょうか?

杉村:勇気ですよ。いくら本を読んで勉強しても、損するかもしれないものにお金を使うんですから、どんなに頭がよくても多少の勇気がないと投資家になれません。理論に照らし合わせて、「この会社は伸びる。この基準を照らし合わせると成長しそう」って思っても、本当に自分の100万円を投資しますか?ってなると、できない人が多いんです。

――そこで勇気が大切だと。

杉村:結局勝つ投資家は、勇気のあるヤツです。でも、そのときにこれだと思った株を買うことで、間違いなく自分の世界は広がる。たとえ失敗したとしても、必ず人生が豊かになる。だって面白い大人になれるから。それは、僕が保証しますよ!

(末吉陽子/やじろべえ)

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